同業他社でGAP認証を取得した商品を仕入れている例が増えてきました。制度の概要やメリットなどについて教えてください。(食品加工業)

 日本では、食品産業全体で食中毒が恒常的に発生しており、農産物における残留農薬基準違反は、認知されたものだけで年間30件以上発生しています。こうした食中毒事故や、残留農薬基準違反のリスクを低減するために有用な取り組みとして注目され、世界的に普及してきたのが、GAP(Good Agricultural Practices)です。

 GAPでは具体的に、農産物に由来するリスクを低減し限りなくゼロに近づけるため、食中毒を起こさないための衛生的な農産物の管理、残留農薬基準違反を起こさないための計画的な使用、それに付随する水、土、農機具などの関連資材の適切な選択と使用などをチェックリストに基づいて的確に実施します。これを第三者が審査を行って確認する「認証制度」として運用することで、食品事業者や消費者の信頼を得る仕組みです。

 また、このような食品安全のリスク低減に加え、農作業事故を低減するための労働安全、環境への負荷を減らすための環境保全、近年注目が高まる人権の尊重、畜産における家畜衛生やアニマルウェルフェア(動物福祉)の要素を付加して、広く持続可能性に貢献する内容としているものも多く存在します。

 JGAPやASIAGAP、GLOBALG.A.P.(グローバルGAP)は、これらの食品安全、環境保全、労働安全、人権の尊重、家畜衛生やアニマルウェルフェアの取り組みを含む認証制度で、持続可能な農業の実現やSDGsの推進に大きく貢献するものです。農林水産省もGAPの推進を重要な政策課題としており、2025年の大阪・関西万博では調達基準に採用されています。

人権配慮リスク低減も

 第三者認証のGAPとして日本で最も普及しているのは、日本GAP協会が運営するJGAPおよびASIAGAPです。ASIAGAPは国際的な食品事業者の団体(GFSI)が要求する内容をJGAPに付加したものです。両者を合わせ約7,000の認証農場があります。

 次に普及しているのは、ドイツに本部があるグローバルGAPで、日本では750ほどの認証農場があります。グローバルGAPは主にEU域内およびEUに輸出を行う海外の産地、北米で普及しています。他に、都道府県が運営するGAPもありますが、内容・水準はまちまちで、信頼性は個別に確認する必要があります。

 GAP認証を取得している農産物であれば、食中毒や残留農薬基準違反のリスクを限りなく低く抑えることができます。また、上記3者のGAP認証であれば環境や人権にも配慮したものとなっているため、SDGsなど持続可能性への貢献や人権配慮に関するリスクを低減することも可能となります。

 GAP認証農産物は、日本GAP協会(JGAP、ASIAGAP)やGAP普及推進機構(グローバルGAP)のウェブサイトからの検索で探すことができます。ただ認証農場数の増加に伴ってGAP認証農産物を扱う事業者も増加しているため、まずは取引のある卸業者に確認することをお勧めします。

掲載:『戦略経営者』2025年3月号