04 サイクル

「答えはお客さまの中にある」

——埼玉りそな銀行が目指す、税理士連携と信頼性の高い財務データを軸にした伴走型支援
『TKC会報』2026年9月号

目次

    埼玉りそな銀行の井口淳也執行役員(法人部担当)とTKC関東信越会埼玉3支部の代表らが、金融庁の「地域金融力強化プラン」を踏まえた地域企業支援のあり方を徹底討論。
    不確実性が高まる時代において、金融機関が真の伴走支援を実現するための鍵は「客観性の確保」と税理士との連携による「予兆管理」にあります。

    地域から選ばれ続ける金融機関を目指す同行の取り組みと、現場のヒントをお届けします。

    埼玉りそな銀行とTKC関東信越会の出席者
    埼玉りそな銀行井口淳也執行役員(右から3番目)を囲んで。左に石岡正行顧問、島村仁支部長、阿相樹マネージャー。
    右に富澤雅治支部長、萩原武馬支部長。

    1.バンカーとしての原点——「答えはお客さまの中に必ずある」

    井口淳也執行役員

    埼玉りそな銀行の井口淳也執行役員は、旧あさひ銀行に入行後、資金運用セクションで米国債トレーダーとして「想定外を想定する力」を培いました。
    その後のバンカーとしての大きな転換点となったのが、平成15年の「りそなショック」です。
    経営危機の中で行員を支えてくれたのは地域のお客さまだったという原体験から、「何があってもお客さまへの恩返し、事業発展のご支援を第一に考える」という強固な信念が生まれました。

    「行員はついお客さまの前で多くを語りがちですが、『答えはお客さまの中に必ずある』と考えています。 限られた面談の中で、経営者ご自身が新たな気づきを得られるような対話を心掛けています」

    税理士とも同じ目線で向き合うことで、企業支援の質はさらに高まると語ります。

    2.「電子開示サービス(MIS)」は銀行業務に不可欠なインフラ

    埼玉りそな銀行とTKC関東信越会埼玉3支部は、長年にわたり地域企業支援で強固な信頼関係を築いてきました。全国に先駆けて実施された「経営者保証免除」の取扱いもその象徴的な取り組みです。

    税理士が毎月の現場訪問で適正に処理した決算・月次データが「TKCモニタリング情報サービス(MIS)」を通じて迅速かつ正確に同行へ届く仕組みは、すでに2,700件を超える実績を持ちます。

    「月次・決算データを迅速かつ正確にお届けいただけるMISは、与信判断にとどまらず、地域企業・金融機関・税理士をつなぐ重要な情報基盤です。銀行業務になくてはならないインフラとして定着しています」

    同行では、この信頼性の高い財務データを土台とし、企業価値の向上や地域課題の解決という次のステップへ踏み出しています。

    3.「地域金融力強化プラン」とDX支援——金融機関と税理士の適切な役割分担

    金融庁が公表した「地域金融力強化プラン」では、地域企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進や金融機関による経理業務受託などが示されています。これに対し井口執行役員は、金融機関と税理士が互いの専門性を発揮した「役割分担」こそが重要であると指摘します。

    「金融機関は融資や経営支援を担う立場として、客観性を確保しながら、信頼性の高い財務情報を活用して企業支援を行うことが重要です」

    両者の望ましい連携関係は、以下の役割分担によって成り立ちます。

    税理士の役割(会計・税務の専門家)

    • 毎月の現場訪問(三現主義)に基づく適正な財務情報の作成
    • 正確な財務データに裏付けられた経営助言・モニタリング

    金融機関の役割(資金供給・伴走支援)

    • 信頼性の高い財務データを基にした円滑な資金供給
    • 業務効率化や生産性向上に貢献するデジタルツール・決済DXの導入支援
    • 事業承継・M&A・経営改善などのハンズオン支援
    • 不動産担保や経営者保証に過度に依存しない「企業価値担保権」などを活用した事業性評価融資

    このように、金融機関が無理に記帳や経理受託まで抱え込むのではなく、客観的な立場を保ちつつ、専門家が作成した財務データを利活用することが支援の質の向上につながります。

    4.「予兆管理」の強化で、伴走支援の実効性を高める

    制度面では、「モニタリング強化型特別保証制度」への対応においても税理士との連携が欠かせません。

    企業が深刻な経営課題に直面してから対応するのと、事前に察知するのとでは、金融機関が提供できる支援の選択肢が大きく変わります。

    「経営者の1番近くで本音や小さな変化に気づくことができるのは税理士の先生方です。私たちが税理士の皆さまに1番期待するのは『予兆管理(業績変化やリスクの早期察知)』です」

    主要国の政策変化や地政学リスクが高まる現在、「想定外を想定」し、日頃から企業の財務状況を把握している税理士と連携して早期発見・早期対応(予兆管理)を行うことが、実効性の高い伴走支援の実現に不可欠です。

    5.三位一体で地域企業の持続的成長を支える

    埼玉りそな銀行は、「地域から最も必要とされ、選ばれ続ける道徳銀行へ」を目指しています。

    「私は経営者を尊敬しています。そして、その経営者を支え続けている税理士の先生方にも同じように敬意を持っています。今後も連携を一層深め、地域企業の持続的な成長と地域経済の発展に貢献してまいります」

    正確な財務データという「共通の土台」の上で、経営者・金融機関・税理士が三位一体となって対話を深めることこそが、地域金融力を高める確かな歩みとなります。

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