03 成果

税理士・保証協会との強固な連携が切り拓く、
地域企業の伴走支援と予兆管理の最前線

沼津信用金庫・野木徹雄常勤理事との対談
『TKC会報』2025年8月号

目次

    地域経済を取り巻く環境が変化する中、地域金融機関には取引先企業の「予兆管理」と早期の経営改善に向けた伴走支援がこれまで以上に求められています。
    本記事では、沼津信用金庫の野木徹雄常勤理事(資金運用部・融資部・融資管理支援部担当)と、TKC全国会中小企業支援委員会の木村治司副委員長の対談をご紹介します。
    「税理士連携中小企業支援保証制度」とそれに連動した新融資商品の開発を通じ、同金庫がいかにして資金繰り支援から複合的な経営支援へとつなげているのか、その舞台裏に迫ります。

    1.制度創設の背景:「顔の見える関係」が実を結ぶ

    沼津信用金庫と税理士との連携の歴史は、約30年前に遡ります。
    当時、同金庫の若手職員に対して若手税理士が税金に関する勉強会(沼信塾)の講師を務め、その取りまとめ役を担っていたのが、現在の紅野正裕会長でした。
    紅野会長は当時から次のように語り、金融機関と税理士の協働の重要性を説いていました。

    「税理士と金融機関はしっかりと連携して地元中小企業支援を行わないといけない。
     決算報告などには金庫の職員を同席させたい」

    また、紅野会長は、企業から直接保証の申し込みができない従来の仕組みについて、金融機関が代理で行うことで経営者の思いが直接伝わっていないという課題感を持っていました。
    こうした背景のもと、昨年、東海税理士会と静岡県信用保証協会との間で調印が行われ、「税理士連携中小企業支援保証制度」が実現することとなりました。

    2.3者連携がもたらす「複合的な事業者支援」

    この新たな制度の意義について、野木常勤理事は次のように述べています。

    「今まで当庫が関係を重要視していた税理士、保証協会、当庫の3者がまさに連携し、資金繰り支援に留まらない、経営支援や実態把握、予兆管理にまでつながる、事業者を複合的に支援する取り組みであり、仕組みであると理解しております。」

    金融庁のアンケート調査によると、「事業者が相談先に選ぶ先」として、金融機関よりも税理士を挙げる回答が最も多いという結果が出ています。
    野木理事は、この結果を踏まえ、次のように評価しています。

    「資金繰り支援の窓口を複線化する利便性や、モニタリングの深度を図る上でも有効であると理解しております。当然、それぞれの役割、強みによるシナジー効果も期待しております。」

    3.信頼性の高い決算書をベースにした新融資商品の展開

    沼津信用金庫では、この保証制度の開始に合わせ、いち早く対応した新たな融資商品(中小企業支援融資 特別金利キャンペーン)を発表しました。
    この商品には、以下の特徴的な金利優遇(ディスカウント)条件が設定されています。

    • 税理士が適正性を確認した決算書(税理士法第33条の2による書面)が作成されている場合
    • 顧問税理士等が認定経営革新等支援機関である場合

    この設計の背景には、昨今の融資審査の厳格化と、税理士との信頼関係があります。

    「近時、粉飾決算による信用リスクの増大が業界内でトレンドワードになる出来事が起こり、審査も厳格化している中、税理士の先生方が書面添付している決算書についての信頼性を重視し、またこの『税理士法第33条の2による書面』を地域金融機関としても事業者に推奨したく、取り入れました。」

    さらに、税理士からの紹介を前提とすることで、金融機関としての営業体制にも変化をもたらすとしています。

    「渉外活動のスタイルを見直す、パラダイムシフトにつながることも期待して設計しております。金庫目線ですが、営業コスト減少分を金利に反映し、当庫の貸出適用金利を大幅に下回る、近時金利上昇局面において、事業者にもメリットを享受できる低金利商品と致しました。」

    4.予兆管理の共有と、連携の「文化」としての定着へ

    今後の伴走支援を見据え、沼津信用金庫では事業者の実態把握から適時適切な経営支援を実施するため、税理士と連携した「予兆管理」の強化を目指しています。
    今後の展開について、野木理事は次のように展望を語ります。

    「事業者を把握する上でも勉強会や目線合わせは必要と考えます。まずは情報交換から始め、深く共有していきたいと考えています。」

    「今後、TKC会員の先生方との信頼関係を支店長や責任者レベルから、若手職員まで、金庫職員全体へ波及していくことを期待し、紅野会長の思いも踏まえて当庫の文化にしていきたいと考えています。」

    地域企業の持続的な成長に向けて、金融機関と税理士が専門的知見を共有しながら伴走支援に取り組む。
    沼津信用金庫の取り組みは、現場の支援力を高め、これからの地域金融力を強化するための一つのモデルケースと言えそうです。

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