スマート行政DX推進を支援する

情報誌 「新風」(かぜ)

2026年1月号Vol.141

【ユーザー事例1】窓口業務改革でサービス・業務の質向上へ

かんたん窓口+スマート申請 > 栃木県足利市

行政経営部 デジタル戦略課副主幹 三田 卓 氏 / 行政管理課主任 増居健也 氏 / 生活環境部市民課主任 津久井良旭 氏

住所
栃木県足利市本城3丁目2145番地
電話
0284-20-2222
面積
177.76平方キロメートル
人口
136,839人(2025年11月1日現在)
栃木県足利市

推進は、大胆にして細心に!

──窓口改革の取り組み状況は。

増居 足利市では、2021年5月に早川尚秀市長が就任したのを契機として、全庁を挙げてDX推進へと大きく舵を切ってきました。
 将来にわたり〈市民の視点に立った質の高い行政サービスを提供する〉ために取り組んでいるのが、「デジタル技術を活用した窓口業務改革」です。22年度に「スマート申請システム」と「かんたん窓口システム」を導入し、〈行かなくてもいい窓口・書かない窓口・待たせない窓口・分かりやすい窓口〉を推進しています。
 これにより目指すのは、〈市役所に行かなくてもいい人〉を増やし、〈窓口では相談や手厚い支援が必要な方のためのサービス向上〉に注力することです。そのため、オンライン申請や書かない窓口を個別施策と捉えず、総合的な観点から業務改革を進めています。

──円滑な推進のための工夫は。

増居 一つは職員の納得感を得ることです。例えば、書かない窓口の対象手続きを選定する際に、データ分析による効果の可視化を行いました。具体的には、各課から集めた〈申請や届出の年間件数〉や〈受付・確認・審査・交付にかかる時間〉などのデータをクロス分析し、高い効果が期待できるものから取り組むよう働きかけたものです。

三田 これまでのやり方を変えるのはとても不安ですが、やってみなければ便利さも分かりません。そこで、書かない窓口の推進では記載台を一斉に撤去し、〈紙の申請書に記入する〉という既成概念の払拭に挑みました。 また、活用の定着には職員への配慮など〝細心〟さも欠かせません。例えば、導入準備では、デジタル戦略課と行政管理課が基本設定や申請フォームを作成し、各課に引き渡しました。DXや行政改革の推進担当者が率先してやってみせたことで、職員の行動変容を促す効果があったと感じています。
 また、DX研修等を通じて、職員に「業務改革することだけではなく、改革により業務の質を上げることが重要だ」との意識付けも図っています。例えば〈窓口で申請を受け付ける〉業務でも、書かない窓口であれば、①市民の滞在時間を短縮できる、②電子データで申請を受けることでメタデータ※が蓄積され、それを有効活用できる、など業務の質向上につながりますよね。

サービス向上へデータ分析活用

──市民や職員の反応はいかがですか。

津久井 市民の皆さんからは「便利になった」と評価していただく一方、職員にとっては市民への氏名等の聞き取りなどの業務負担が増しています。業務改革をさらに進めていくためにも、フロント/バックヤード連携の早期実現が期待されます。

──今後の展望を教えてください。

増居 政策立案の手法としてEBPM(証拠に基づく政策立案)が注目される中、足利市でもデータ分析を市民サービスの向上につなげる取り組みを進めています。
 一例が、窓口受付時間を75分短縮し、9時~16時30分に変更(25年8月から試行運用)したことです。かんたん窓口で時間帯別の来庁者数を抽出したところ、受付時間を短縮しても9割以上の来庁者をカバーできることが分かりました。この時間を、政策立案や業務改善等の市民サービス向上のための業務に活用することとしました。なお、短縮した時間については、活用方法の継続調査を全庁的に実施しており、その結果を効果の検証や改善点の把握に役立てたいと考えています。
 また、データ分析は課題発見のきっかけともなります。例えば、23年度実績で各種証明書の交付通数は合計約18万件あり、約9割(約15・5万件)はコンビニ交付やオンライン申請で取得できるものでしたが、約12万件が市役所の窓口で取得されていました。このことから、コンビニ交付等の利用を促進することで「行かなくてもいい=有人対応しなくてもいい窓口」の推進に大きく寄与することが判明しました。
 そこで、窓口受付時間の変更と合わせて「各種証明書のコンビニ交付手数料10円キャンペーン」を実施しています。これを広く認知してもらうため、自動車販売店や金融機関、不動産会社など、証明書の提出先へも足を運び、お客さんにコンビニ交付の利用を勧めてもらうよう働きかけています。

津久井 市民課でも積極的に案内しており、窓口での申請件数は減少しつつあると実感しています。この機に市民にコンビニ交付の利用が定着することを期待したいですね。また、スマート申請で交付申請できる証明書もあるので、今後はこれらについても理解促進を図りたいと考えています。

三田 システム標準化によって、今後フロントヤード改革が本格的に動き出すと期待しています。バックヤードとのデータ連携も大きく進展すると想定され、それと合わせて業務改革を行い業務の質の向上にも取り組みます。

増居 そのため、今年度からフロントヤード改革推進専門部会で、各課とともにオンライン化等の推進について具体的な検討も開始しました。われわれのようにDXを推進する側が考えることが、現場の最適解とは限らないため、このような現場との対話の場を設けることは非常に重要だと考えています。

三田 オンライン化されていない申請手続きについても、どうすれば実現できるのかを一緒に考えるなど積極的に介入し、現場が困ったらサポートする──DXの定着にはそうした地道な努力が必要です。市民の視点に立った質の高い行政サービスの提供へ、これからも現場とともにチャレンジし続けたいと考えています。

※主データに付随する、紙では得られにくい関連データ

左から、増居主任、津久井主任、三田副主幹

左から、増居主任、津久井主任、三田副主幹

導入システム