2024年4月号Vol.134
【ユーザー事例1】変化をチャンスに、サービス・業務を進化
かんたん窓口+スマート申請 > 山形県尾花沢市
総合政策課政策企画係 係長 伊藤潤一郎 氏 / 主任 阿部竜也 氏 /市民税務課 課長補佐 石山忠洋 氏 / 総務課情報統計係 係長 大類周平 氏
- 住所
- 山形県尾花沢市若葉町1丁目2番3号
- 電話
- 0237-22-1111
- 面積
- 372.53平方キロメートル
- 人口
- 13,957人(2024年2月1日現在)
──DXの推進状況を教えてください。
阿部 コロナ禍を経て、いまやデジタル技術の活用は社会全体で実証から実装の段階へと移り変わりました。そうした変化を受け、将来にわたって持続可能なまちづくりを進めることを目的として、2023年3月に『尾花沢市DX推進計画』を策定しました。これは『第7次尾花沢市総合振興計画』と『尾花沢市行財政改革プラン』をDXの側面から補完するものです。
推進計画では、その基本方針に「新しい時代の尾花沢らしい暮らしの確立」を掲げ、現在、①人・働き方DX、②暮らしやすさDX、③安全DX、④庁内DX──の四つの視点からさまざまな取り組みを進めています。
県内初、「移動市役所」を実施
──市民サービスの向上や業務の効率化の点では、どんなことに取り組まれているのでしょうか。
伊藤 市では、20年度に組織横断型の「スマート自治体推進プロジェクト」を立ち上げました。ここを母体として21年度に「押印省略」を検討し、22年度にはDX推進計画を策定し、各課が今後取り組むべき事項を整理しました。この成果を踏まえて、23年度は「3ない(書かない・待たない・行かない)窓口」に取り組んできました。
このうち〝書かない〟窓口を実現するため、23年3月に「かんたん窓口システム」を導入しました。現在、転入転居や出生届の申請手続きで、職員が聞き取りを行いながらタブレットで住民異動届を作成しています。これにより、市民の方が申請書へ記入することが不要になるだけではなく、職員にとっても対応時間の短縮につながっています。今後は、おくやみ関連の手続きへの利用拡大も計画しており、24年度末までのサービス開始を目指して準備を進めているところです。
大類 4月からは、「スマート申請システム」を活用してオンライン申請サービスをスタートする計画です。『デジタル社会の実現に向けた重点計画』で優先的にオンライン化すべきとされたもののほか、庁内で実施した活用希望調査の結果を踏まえながら各種手続きのオンライン化を進めます。ただ、サービスの実施にあたっては一定の〝ルール〟化も必要で、まずはスモールスタートとして、各課と議論を重ねながらより使いやすいサービスへと進化させていきたいと考えています。
石山 〝行かない〟ということでは、県内初の試みとして昨年12月に「移動市役所サービス」の実証にも取り組みました。これはマルチタスク車両へかんたん窓口システムを搭載して、市民がアクセスしやすい場所へ出向き、マイナンバーカードを活用した電子タクシー券の申請受付を行ったものです。
当初、利用者は100名程度と想定していたのですが、最終的に5地区の約40カ所で250名以上の方に利用いただきました。サービス時間は1カ所1~2時間程度でしたが、あるときには20名ほどが順番待ちとなる状況でした。手書き申請ではとても対応できませんが、書かない窓口であれば1人当たり数分程度で手続きが完了できます。このスピード感には、市民の皆さんにも〝便利さ〟を実感していただけたようです。
今回の実証を通して、オンライン申請と移動市役所の二つの接点により、多様な市民に〝行かない〟窓口サービスを提供できることを実感しました。
──電子タクシー券のサービス導入にあたり、どんな準備をされましたか。
石山 これまでタクシー券を利用されていた方(約1200名)へ郵送で案内するとともに、乗車時に精算を行うタクシー事業者向けに操作研修を実施しました。ドライバーには高齢な方も多く、端末操作に苦戦するケースもありましたが、電子タクシー券が普及・定着すれば、事業者にとっても精算処理の簡素化につながります。
ドライバーの〝クチコミ〟で評判が広まるという副次効果もあり、想定をはるかに上回る約700名が電子タクシー券を申請しました。これにより、市民の利便性向上はもちろん、マイナンバーカード活用への理解も深まったと考えています。
必然となった業務改革
──今後の計画を教えてください。
大類 まずは書かない窓口とオンライン申請のサービス拡充に努め、より一層の〈市民の利便性向上〉と〈業務の効率化〉を図りたいと考えています。
阿部 また、せっかく導入したシステムをフル活用してもらえるよう研修などを拡充します。さらにDX推進では職員の意識改革が重要です。そこで24年度からはスマート自治体推進プロジェクトだけではなく、さまざまな会議体と連携した推進体制とする考えです。これにより、職務や役職を問わず全ての職員がDXを身近に考える機会を増やしていきたいですね。
──一歩ずつ着実に進めていますね。
伊藤 社会の変化は〈従来の活動を見直す契機〉だと考えています。社会全体で、アナログ(紙)からデジタルを前提とするサービスに移行し、キャッシュレスなども進む中で、行政も「仕事のやり方を変える」ことは必然です。
とはいえ、市民との接点ではデジタル前提のサービスだけを考えることはできません。スマホ教室の開催などによりオンライン申請の利用を促進するだけでなく、移動市役所など〝多様〟な接点で市民のニーズに幅広く応えていくことが必要です。デジタルでサービスや仕事のあり方を変え、自分たちも楽になる──これを原動力として今後も地道に取り組みを続けたいと考えています。
掲載:『新風』2024年4月号