2023年4月号Vol.130

【トレンドビュー】地方税手続きの電子化、今後の展望

地方税共同機構 理事長 加藤 隆

 ここ数年の行政手続きの電子化・オンライン化の動きは、これまでのように「できるところから順にそれぞれの団体の都合で」ではなく、全団体が一斉に動くことが求められています。
 本稿は、地方税務分野の電子化が今後どのように進み、最終的に何を実現していくべきなのかについて論じます。

新たな段階へ

 2023年、「地方税の電子化」は新たな時代を迎えました。
 1月には軽自動車関係手続きの電子化がスタートし、都道府県の自動車税と合わせて、電子申告・継続車検時の電子的納税確認が全国で利用可能になりました。
 4月からは「地方税お支払サイト」が稼働しています。共通納税システムの取り扱い対象が賦課税目に拡がるとともに、クレジットカード払いやスマートフォン決済アプリを利用した納税が可能となり、地方税のキャッシュレス納税が全国共通で利用できるようになりました。
 今後の電子化について、4月時点で稼働目標時期が示されているものは図表1のとおりです。

図表1 今後の電子化スケジュール(目標) 

これら電子化の主たる目的は、納税者等の利便性の向上です。また、大量・一斉処理の業務が大半の税務分野では効率的に課税・徴収業務を行う必要があり、こうした税務業務の改善に資することも重要な目的です。
 そのためには、既存の業務の進め方、帳票類なども見直しが不可欠です。特に納税者等から強く指摘されている、地方団体ごとの書類や手続きの違いなどをできるだけ標準的なものに統一していくことが求められます。

今後、実現すべき機能

1.申告、申請、届出

 可能な限り全ての手続きについて電子的に対応することを目指します。紙による手続きを前提とした事務は見直し、記載すべき事項も最低限必要なものに限定、添付すべき書類もできるだけ省略して最小限とします。適正な課税等に必要な情報であっても、常に申告等の都度提出させる必要があるのか検証が求められます。特に、行政機関が保有している情報を証明書等で提出させることは廃止の方向に持っていくべきでしょう。

2.納付等

 共通納税システムや「お支払サイト」を、より使いやすい便利なものにしていくことが重要です。利用者や地方団体から要望があるクレジットの継続払い(クレジット会社に対する請求の仕組みを新たに構築することが必要ですが)、一人別の地方税の自動集約機能は、早期実現に向けて検討を進めることが期待されます。
 窓口収納、証紙徴収、口座振替、コンビニ収納を含め、地方団体の公金については、全て機構が提供する共通納税システムによる収納に統一することで、現在団体ごとに行っている収納代行契約を不要とすることも事務の合理化に資するものです。将来的には「地方税統一QRコード」を活用することで、納付書そのものを廃止できるようにします。図表2に共通納税システムの進化、考えられる活用例を示します。
 また、収納を行う金融機関やコンビニエンスストア側の理解と協力が不可欠ですが、納期限後の収納の際にはシステムの自動計算機能により延滞金を含めたワンストップ収納を実現するとともに、収納情報の即時伝送を可能にすべきです。口座振替のための登録申請についても、押印不要とすることで郵送ではなく電子申請を可能とし、処理時間の短縮が実現できます。共通納税システムの送金機能を使うことで、団体間の収納金精算等の業務にも活用できます。

図表2 共通納税システムの進化、考えられる活用例

3.通知、証明

 納税者等に対する通知の電子化が国において検討されています。納税告知や処分通知等の情報を電子的に送信することは技術的に可能ですが、どこにどのように送付するかが大きな課題です。電子署名に代わるツールとしては、24年から開始する特別徴収税額通知の電子交付で用いるQRコードによる真正性の証明方法が応用できます。
 納税証明についても、国税で実現している方法を活用するなど、比較的早い時期に電子交付の仕組みを作ることは可能でしょう。もっとも、官公庁等に対して、そもそも納税証明書の提出や提示を不要とする行政間の連携が必要ではないでしょうか。登録自動車や軽自動車の継続検査ではすでに実用化されています。

4.その他

 不動産取得税の課税に必要な市町村の価格決定情報、住宅取得等に関する申告、障がい者減免の情報管理、軽油の免税販売の管理、徴収嘱託手続きなども電子化になじむものです。

「夢」の実現に向けて

 これからの数年間で地方税務分野の手続き電子化はさらに加速します。地方税共同機構は、地方団体の実務を踏まえつつ、納税者等、地方団体のいずれの利用者にとっても使いやすいシステムの開発、運用に努めていきます。
 電子申告・電子納税が普及し、所得課税における年末調整に代わる仕組みの導入、還付の自動化などの実現のめどが立てば、いよいよ地方団体の念願である「個人住民税の現年課税」について具体的な検討が進められる段階になるでしょう。

※役職は寄稿時点のものです

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