2022年4月号Vol.126

【レポート】実証実験の結果報告電子決裁、電子請求書サービス
その影響と今後の取り組み

財務会計事務でも急速に進むDX化。そこで電子請求書サービスとの連携、
その後の電子決裁について、実証実験結果をレポートする。

 2023年10月1日から導入が予定される「消費税の適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス制度)」と合わせ、請求書の〝完全デジタル化〟に向けたデータ仕様統一の検討が進んでいます。
 民間事業者間では、昨今のDXの流れを受けて請求書のデジタル化・電子化の動きが加速しており、今後、地方公共団体においても電子請求書への対応が必要となることが想定されます。
 TKCは会計システム提供事業者として、先述のデータ仕様統一の協議に参加。また、市区町村での電子請求書の普及を見据えた研究に先行して取り組み、その一環として「TASKクラウド公会計システム」と、多くの民間事業者が利用する電子請求書サービスとの連携にも着手しました。
 21年夏には、電子請求書や電子決裁に関する〈実務面での負担軽減効果〉を検証するため、公会計システムを利用されるお客さまの協力を得て実証実験も行いました。
 そこで、今号では実証実験で得られた知見などをご紹介します。

処理はどう変わる?

 電子請求書サービスとの連携で実務はどう変わるのでしょうか。処理の流れは次のとおりです。
1. 自治体と取り引きする事業者は、電子請求書サービスを利用して請求書を電子データとして発行
2. 自治体は、電子請求書サービスを利用して請求書(電子データ)を受け取る。受け取った請求書は、TASKクラウド公会計システムに自動連携(API連携)される
3. 自動連携された請求書をもとに各担当課が伝票を入力する。その際、請求書の内容は伝票へ自動転記され、また請求書イメージが伝票へ自動添付される
4. 担当課で起案した伝票を、電子決裁機能により承認、決裁する

 また、期待されるメリットは主に三つ挙げられます。まず、請求書が紙から電子データに置き換わることで郵送や保管コストの削減、紛失リスクの防止などが見込まれます。次に、伝票入力時には該当する電子請求書を指定するだけで摘要や金額、債権者等が自動転記されることから作業負担が軽減されます。最後が、請求書の受け取りから決裁完了まで一連の処理を電子的に完結することで、財務会計事務のDX推進が図られます。

 こうした効果を検証するため、お客さまの協力を得て以下のとおり実証実験を行いました。
【検証期間】
 2021年8月3日~13日
【検証体制】
 庁内2課、庁外施設、会計課の計4課
【検証対象】
 伝票起案者による請求書受領、支出命令書作成、回覧から承認決裁者による内容チェック、回覧を経て会計課による内容チェック、回覧、原本のファイリングまで、一連の工程を対象(庁外施設から本庁へ送付する工程も含む)。

 加えて、検証後には協力いただいた職員の皆さんへヒアリング調査を行い、1件当たりの申請にかかる作業時間を算出しました。そして、年間6万通の請求書、23課9施設、260名の職員数──の条件で削減効果を試算したのが図表2です。試算の結果、年間で2万7,438時間(費用換算で約5,524万円)の削減効果が見込めることが分かりました。

図表1 電子請求書サービス連携のイメージ
図表2 電子請求書サービス実証実験の定量的な効果

システムの強化拡充へ

 実証実験では効果を検証するとともに、それに向けたシステムの機能強化・拡充に関する研究も行いました。
 今回、明らかとなった改善点は以下のとおりです。
1. 予算科目の自動転記
・請求書の情報だけでは予算科目を特定できない
・処理の流れの変更(請求書を選択して伝票入力)に伴い、類似伝票の複写等による入力省略ができない
 これらについては、請求書データに含まれる債権者や請求内容の情報を活用して、あらかじめ過去の類似伝票を絞り込んで候補を表示し予算科目の選択を補助する機能──の搭載により負担軽減を図る予定です。
2. 請求書の支払い期限の確認
・支払い期限間近になって伝票の入力を始めるような処理遅れを抑制するため、請求書の期限を確認したい
 支払い期限の迫った急ぎの伝票が回ってくることで、会計担当者が処理に追われる──という例は他団体でも起こり得ることです。そこで、あらかじめ会計担当者が請求書の支払い期限を確認できる機能を搭載する予定です。

◇   ◇   ◇

 実証実験によって、他にもさまざまな知見を得ることができました。ご協力いただいた職員の皆さまにはあらためて御礼申し上げます。TKCでは、これらの成果を今後の機能強化・拡充に生かし、皆さまに安心してご利用いただけるシステムとしてまいります。
 インボイス制度の導入は、市区町村の財務会計事務にも今後大きく影響することが想定されます。そうした〝変化〟に対応するため、TKCでは電子決裁や電子請求書サービス連携を皮切りとして、財務会計事務のDX推進へ積極的に取り組み、業務効率化・生産性向上をご支援します。
 これからの「TASKクラウド公会計システム」の進化にご期待ください。

*インボイス(適格請求書)とは、売手が買手へ正確な適用税率や消費税額等を伝えるため、現行の区分記載請求書に登録番号、適用税率、消費税額等の記載が追加された書類(請求書、納品書、領収書、レシート等)やデータのこと

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