2022年1月号Vol.125
【ユーザー事例1】市民一人ひとりにやさしい「デジタル窓口」へ
スマート申請システム・かんたん窓口システム > 茨城県つくば市
市民窓口課 課長 中川伸一 氏 / 課長補佐 鯉河きよ江 氏 / 係長 野澤富美子 氏 / 主任 中島央樹 氏 / 主事 上村雄太 氏 / 情報政策課兼スマートシティ戦略室 係長 家中賢作 氏 / 情報政策課主任 木村未和 氏
- 住所
- 茨城県つくば市研究学園1丁目1番地1
- 電話
- 029-883-1111
- 面積
- 283.72平方キロメートル
- 人口
- 247,105人(2021年11月1日現在)
──つくば市では、窓口のデジタル化を加速させていると伺いました。
中川 市区町村にとって、いまやデジタル化推進は不可逆な時代の要請といえます。市でも『第2期つくば市戦略プラン』を策定し、さまざまな取り組みを進めているところです。その中で市民窓口課の重要テーマが、〈書かない・待たない・行かないデジタル窓口〉の実現です。これにより「住民の利便性」を向上するとともに業務の効率化を図り、限られたリソースでも「住民に寄り添ったサービス」を提供できるようにしたいと考えています。
2021年2月に住民票の写しの交付請求ができるオンラインサービスを開始し、9月からは戸籍証明書にも対応しました。コロナ禍ということもありますが、現在1割程度がオンライン申請に切り替わっています。
また、10月には「TASKクラウド スマート申請システム」を活用した「つくば市オンライン申請システム」を公開し、引っ越しに関する届出(転入届・転居届・転出届)の事前登録ができるサービスもスタートしました。
「書かない窓口」で
引っ越し手続き
──具体的に、どんなサービスですか。
写真左から、木村主任、鯉河課長補佐、家中係長、上村主事、中川課長、中島主任
中島 引っ越しに関する届出について、スマートフォン等から「つくば市オンライン申請システム」(スマート申請システム)にアクセスし、住所や氏名など必要な情報を入力するとQRコードが発行されます。これを市役所の窓口でタブレット(かんたん窓口システム)にかざすと、届出書が作成され、電子サインをすれば手続きが完了する──というものです。この時に、就学手続きなど転入に伴って必要となる各種申請書類も同時に作成することができます。まさに“書かない窓口”ですね。これにより窓口の混雑緩和や待ち時間の縮減が期待されます。
サービスを開始してまだ1カ月程度ですが、すでに80件(全体の約7%)が書かない窓口を利用されており、転入転居が集中する3、4月に向けて利用率の増加を見込んでいます。
──導入の効果はいかがでしょうか。
野澤 書かない窓口という点では、職員からも「入力作業が楽になった」「便利になった」という声が聞かれます。ただ、紙とデジタルが混在する“過渡期”にあるため、業務量という観点で見ると従来とさほど変わっていません。本格的な効果を実感できるのは、もう少し先のことかなと考えています。
上村 高齢者などタブレットやスマートフォンに慣れていない方の場合、入力にも時間がかかり、職員がある程度支援する必要があります。この点、システム側でもっとカバーできるといいなと感じています。
鯉河 一方で、子育て世代など若い方はデジタルに慣れていますので、事前に調べて「こんなサービスがあるならば使ってみよう」ということが多いようですね。証明書の発行では、コンビニ交付サービスの利用が全体の15%を占めるまでとなりました。同様に、オンライン申請の利用も徐々に浸透すると考えています。
木村 やはり、どう利用率を上げていくかが今後の焦点ですね。それにはデジタル窓口のPRが必要ですが、多くの市民に理解を深めてもらうためにどんな方法が効果的か悩んでいます。
市民が実感できる
サービスを模索
──市では、多様な事業者とシステムを駆使してサービスを拡充しています。
家中 つくば市は大学や研究機関などが数多く集まる“科学のまち”です。
しかし、そうした先端技術研究の成果が市民に還元されておらず、その恩恵を実感できるようにしたい──という思いがあります。そのため〈行政手続きのデジタル化〉は、『つくば市情報化推進計画』に加え、現在計画中の『つくばスーパーサイエンスシティ構想』でも重要テーマに位置付けられており、これまでも多くの実証事業にトライしてきました。
デジタル窓口も、そうした市民が実感できる社会実装の一つとして誕生しました。他の部署でも同様のニーズはあると思いますが、組織をまたいだ取り組みとなると調整に時間がかかるため、まずは利用者が多い市民窓口課からスモールスタートしました。
──今後の展望を教えてください。
家中 今後は、福祉や税分野の手続きへの拡大も想定しています。ただ、デジタル窓口の取り組みは緒に就いたばかりでクリアすべき課題も多いです。
一例が行政と市民の双方向利用です。市民からのオンライン申請を受け付けることはできても、行政から市民にお知らせをプッシュ通知しようとすると多様な受け取り方への対応が必要です。また、UIなど使いやすさの点でもまだ改善の余地があります。これらの一つの解決策として、市では簡単な操作で申請でき、通知も受け取れるアプリ開発も構想しています。スマート申請システムやかんたん窓口システムなどとも連携させて、先端的サービスの実装を積極的に進めていきたいと考えています。
中川 転入転居が集中する時期には、バスで大人数が市役所に乗り付けてくるケースもあります。この点、スマート申請システムには予約機能があるので、来庁予約を積極的にPRすることなども検討したいですね。デジタル窓口では、まだまだ試行錯誤が続きます。TKCにはシステムの運用支援とともに、他団体での実践事例の紹介など、これからも高付加価値のサポートを期待しています。
掲載:『新風』2022年1月号