税務官公署出身会員に聞く
事務所の経営基盤を安定させ関与先への責任を果たしていきたい
西野税理士事務所 西野克幸会員(北海道会札幌東支部)
西野克幸会員
定年退職直前で税理士に転身し、TKCシステムへの信頼感から入会を決めたという西野克幸会員。長年にわたる税務調査の経験を巡回監査で活かし、関与先の自計化にも取り組んでいる。
「自由に仕事をしたい」と税理士に転身
──ご経歴をお聞かせください。
西野 生まれは北海道深川市近郊の雨竜町で、期別は普通科32期です。19歳で最初の赴任地の東京に行き、渋谷、青梅など都内の税務署で徴収業務に携わっていました。27歳の時に北海道に戻ってきてからは法人課税部門で税務調査の仕事が中心となり、道内の各署で、統括官、特別調査情報官、特別国税調査官などを務め、定年退職2年前の平成24年7月、58歳の時に退官しました。
──定年退職まで待たなかったのは?
西野 単身赴任の連続なので若い頃よりも身体的にも精神的にも大変になってきましたし、何より、早く組織のしがらみを離れて自由に仕事をしてみたいという思いが大きかったからです。
──不安はありませんでしたか。
西野 関与先ゼロからになるのでまったく無かったと言えば嘘になりますが、税理士業務への期待はそれ以上でした。
幸い、開業してすぐに「廃業する税務署OBの税理士がいるので、その関与先を引き継がないか」という話をいただきました。その後、多少の増減はありましたが、現在のお客さまは約20件。職員は1人で、私の三男が働いています。
システムの信頼感が決め手となり入会
──TKCについては退官前から知っていたのですか。
西野 税務署に『TKC会報』が届いていたので、独立を意識しはじめた頃からよく読んでいました。やはりどのシステムが良いのかという情報収集は大事だと思って、他社システムについても、税務調査の時に立ちあった税理士にさりげなく使い勝手を聞いていました(笑)。
入会の決め手になったのは、システム開発の根底にある思想です。つまり、すべてのプログラムがユーザーである会員の声を吸い上げ、システム委員会で十分に検討された上で作られていること。
また、どんなに複雑な税制改正があっても、エラーがなく安心して使えるのはTKCだけという信頼を感じました。
──システム面以外で、入会して良かったと感じたことはありますか。
西野 北海道内のいくつかの会員事務所を見学させていただき、ペーパーレス化など非常に参考になりました。
またProFITやメール配信等による情報提供の多さには驚いています。研修も充実しており、特に職員研修は事務所内で行うのは限界がありますので、非常に助かっていますね。巡回監査士制度も、職員の力量を「見える化」できる良い仕組みだと思います。
巡回監査で誤りを未然に防ぐことを意識
──事務所の得意分野はありますか。
西野 長年調査に携わってきた法人税法、消費税法などです。また税務調査で誤りを見つける目を鍛えてきたので、巡回監査の際には、会計処理は適切か、本当にその仕訳の事実があったのかという観点で見るようにしています。
ただ、仕訳が間違っていないか、数字が合っているかを確認するのはもちろん大事ですが、それよりもしっかり社長と話をして、大きな誤りが起こらないようにすることの方が重要です。
例えば、新しく倉庫を建てる予定の関与先があったとします。仮に1億円かかるとしたら消費税は800万円。もし簡易課税の適用事業者であれば、本則課税に戻した方が多くの還付金を受けられるので、期限内に簡易課税選択不適用届けを提出しないといけません。
日頃から社長と話をしていれば「最近、業績が良いですね」「そうなんです。それで今度倉庫を建てようと思っていて」「それはいつですか?」と聞いて、対応を指示することができます。逆に気付かないままだったら、損害賠償請求を受ける可能性もある。つまりお客さまを守ることは事務所を守ることにもつながるわけであり、これが巡回監査の意義であると私は理解しています。
「数字の読める社長」を育てたい
──自計化についてはどのように考えておられますか。
西野 自社の業績を「分かったつもり」になっている社長は多いので、自計化してタイムリーに業績を把握することは大事ですし、規模が大きくなったら部門別管理も必要。最終的には「数字が読める社長」になってもらうことが目標です。
──TKCシステムの利用状況は。
西野 ちょうど開業した平成24年にe21まいスターが提供開始されたので、これを見逃す手はないと思い推進を始めました。引き継がせていただいた会社はすべて記帳代行でしたので、お客さまの状況を勘案しながら移行を進めています。
ある年商約6000万円の自動車修理・部品販売会社では、顧客の数が多く伝票の記入等に手間がかかっていたので「会計システムを導入して、自社で業績を見られるようにしましょう」と提案したところ、社長が元プログラマーということもありスムーズに導入できました。
──最後に、事務所の課題、目標をお聞かせください。
西野 当面の課題は、お客さまを増やして事務所の経営基盤を安定させること。そのために、まず関与先30件を目標に拡大に取り組みます。社長に宣伝マンになってもらいご紹介いただくのが一番効率的なので、そのためにももっと満足度を上げていきたいですね。
さらに先のことを考えると、私もいずれはお客さまと職員を引き継いでもらうことになります。税務署OBだけでなくTKCの仲間もできたので、そうした仲間の協力も得ながら、例えば事務所の合併など、お客さまにとってベストな方法で責任を果たしていきたいと思います。
(TKC出版 村井剛大)
(会報『TKC』平成28年10月号より転載)