税務官公署出身会員に聞く
最善のアドバイスを行うために半年でTKCの生涯研修100時間受講
古府日出夫会員(東・東京会足立支部)
古府日出夫会員
税務署、国税局に42年間勤務し、京橋税務署を最後に退官した古府日出夫会員は、昨年開業し8月にTKCに入会した。積極的に研修に参加し、「お客様への最善のアドバイス」を行うため日々知識を深め実行に移している。
消費税導入時、1日3回の説明会を行う
──退官前のご経歴を教えてください。
古府 東京国税局の普通科28期の採用です。昭和43年4月に北海道岩見沢市から上京して、当時新宿にあった税務大学校で研修を受け、昭和44年5月に荒川税務署の徴収部門に赴任しました。以来、徴収部門5年、総務課3年、法人税部門で34年担当しました。
法人税部門では退職する直前まで法人税調査を担当し、国際調査情報官4年、調査部主査5年、調査筆頭部門の統括官7年、そして平成22年3月に京橋税務署の法人税特別国税調査官を最後に退官しました。その他に、源泉所得税及び法人税の指導を担当した経験もあります。
特に印象深い出来事は、昭和63年から平成元年に、消費税導入に向けて、税理士会、法人会、各種業種団体を対象に消費税の説明会の講師を午前、午後、夜の部と1日3回、週3日行ったことです。その際、消費税導入のアピールについては、できるだけ分かりやすい説明を心がけました。単に「これから消費税がかかります」という案内だけではなく、例えば「商品のケーキにのせるいちごを大きくしたり、1つから2つにしてみては?」というように、消費税導入をきっかけに、新たな付加価値を加えるなどの提案を交えながらお話ししました。
巡回監査を知りTKC入会を決意
──退官後、税理士として開業した経緯を教えてください。
古府 税務職員の経験を生かして、起業される皆さんと事業の支援者という立場で仕事をしたいと思いました。
船橋税務署時代の先輩の佐藤光一会員(東・東京会)から事務所見学に誘われたこと、本科の同班で一期先輩の秋山伸会員(中国会)から入会のお誘いの電話を受けていたことから、TKCの研修会に参加するようになりました。
──研修会への参加などを経て、TKCに入会した決め手は何でしょうか。
古府 巡回監査は取引の事実が真正であることを原始証憑等により確認していくわけですから、税務調査(社内調査)と何ら変わらないと思いました。違いといえば、取引先等まで確認に行くこと(反面調査)がないことくらい。そういったことからTKC入会を決意しました。
退官前まで、適正・公平な課税の実現を目指して調査を行ってきましたが、調査先の税理士さんの中には、理論より納税額の交渉専門という方もいらっしゃいました。納税額の交渉より何年も関与している関与先にきちんと指導できないものかともどかしく感じたことがありました。
しかし、巡回監査に基づき経営指導を行うことは、私が最も得意とする分野を活かすことができると考え方が変わりました。
西新井駅から徒歩5分ほどに位置する古府税理士事務所の外観と看板
ブルガリア料理店の会社設立を支援
──現在の関与先の状況や、古府先生が特に力を入れていることについて教えてください。
古府 ブルガリア料理店の会社設立にあたり顧問契約の依頼があり、雇用契約書、事業計画表の作成や保健所関係、労災保険、雇用保険の手続きなどの相談に応じました。ブルガリア人の経営者には、最初に今後の計画も含めて確認した上で関与を決めました。その際、「20年ほど日本で働いてお金を貯めた後、ブルガリアに帰って自分の家を建てたい。いずれは店舗を増やしたい」という話も聞けたので、これからがとても楽しみです。
私自身1年目はまず、お客様に最善のアドバイスができるよう知識を深めるようにしています。ほぼ毎日研修に参加した月もありました。「鉄は熱いうちに打て」の気持ちで積極的に取り組み、TKCの生涯研修は約半年で100時間、税理士会の認定研修は45時間受講しています。これまで経験の少なかった資産税については、TKC全国会資産対策研究会に参加して知識を深めています。他にも研修に参加してみて「これは職員向けかな」と思うような時にも、いずれは必要になる知識があるかもしれないと思って、何でも前向きに積極的に取り組んでいます。
──TKC会員との交流はありますか。
古府 和田政雄会員(東・東京会)が会長を務める、新潟県出身税理士の「越路会計人会」という集まりから講演の依頼を受けて、今年の1月28日に「調査事例から見た企業点検」と題した講演会を行いました。現役時代の事例を交えてお話ししたところ、「また講演してください」という反響もいただきました。
──今後の事務所経営についてお聞かせください。
古府 今後は、巡回監査をしっかり行って関与先を着実に増やし、FX2などのシステムも導入していきたいと思っています。
TKCの先輩会員は皆さんオープンです。知恵とノウハウをいつでも聞くことができますし、先輩会員の事務所見学会なども大変参考になっています。
(構成/TKC出版 益子美咲)
(会報『TKC』平成23年5月号より転載)