大口取引先から、これまで120日サイトの約束手形で支払いを受けていましたが、知り合いから法律違反の可能性があると聞きました。詳細を教えてください。 (自動車部品製造業)
下請代金の支払いとして120日サイトの手形を交付した場合、「下請法」の適用対象となる取引では、「下請法」違反となるおそれがあり、指導の対象となります。
下請代金支払遅延等防止法(下請法)は、下請取引において、発注者である親事業者とその下請事業者との間の取引を公正なものとし、下請事業者の利益を保護するために定められています。下請取引では、親事業者の方が、下請事業者よりも優位な立場になりがちです。そのため、親事業者の都合によって、下請代金の支払いが遅れたり、代金を不当に引き下げられたりするなどして、下請事業者が不利な扱いを受けてしまう場合が少なくありません。そこで、下請法では、下請事業者が不当に取り扱われないよう、親事業者に対して「四つの義務」と「11の禁止事項」を定めています。
電子記録債権にも適用
この下請法の11の禁止事項の一つに「割引困難な手形の交付」があります。これは、下請代金を手形で支払う際に、一般の金融機関で割引を受けることが困難な手形の交付を禁止しているものです。公正取引委員会では、従来、繊維業は90日、その他の業種は120日を超える長期の手形を交付した場合、この「割引困難な手形」に該当するおそれがあるとして指導することとしてきました。
今般、公取委は、改めて業界の商慣行、金融情勢等を総合的に勘案して、業種を問わず、60日を超える長期の手形等を交付した場合、この「割引困難な手形」に該当するおそれがあるとして、その親事業者を指導する方針を公表しました。2024年11月1日以降、親事業者が下請代金の支払手段として、手形期間が60日を超える長期の手形を交付した場合、その親事業者に対して指導が行われます。
また、一括決済方式(ファクタリング等)または電子記録債権が下請代金の支払手段として用いられる場合も同様に、サイトが60日を超えるものを下請代金の支払手段として用いた場合には、その親事業者に対して指導が行われることとなります。
下請事業者は長期サイトの手形等で下請代金を支払われることで、資金繰りに苦慮することとなり、借入金額の増加といった資金調達コストの負担が増したり、サイトが長くなるにしたがって、手形の不渡りリスクが高まったりすると考えられます。今回、手形期間が60日を超える手形を交付することで指導の対象となるのは下請法の適用対象となる取引に限られますが、事業者の資金繰りの観点から、下請法の適用対象外の取引を含めたサプライチェーン全体での手形サイトの短縮化や支払手段の現金化の取り組みも不可欠であると考えられます。
公取委では、親事業者からの不当なしわ寄せを受けたと感じたときに相談できる下請相談窓口を設けています。さらに、「独占禁止法相談ネットワーク」として、全国約2,200カ所の商工会議所および商工会に相談窓口を設置しています。これらの窓口を積極的にご利用ください。