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コロナ禍を追い風に活況を呈しているアウトドア市場。試行錯誤、創意工夫を繰り返しながらヒット商品を生み出した中小企業も少なくない。大手がしのぎを削るなか、果敢にもアウトドア市場に飛び込んだ中小企業の奮闘を追う。
新型コロナの感染拡大によりさまざまな業界が不況に陥った。とりわけ深刻だったのは外食産業である。時短営業や人数制限の影響で思うように売り上げが上がらず、利益率の高いメニューを開発したり、テイクアウトに活路を求めたりする動きが目立った。
こうした悪戦苦闘の末にV字回復を成し遂げた店もある一方で、閉店を余儀なくされた店も多い。「テナント募集中」の張り紙を見るたびに、喪失感を覚えた人も少なくないはずだ。
アウトドア市場が拡大中
他方、コロナ禍を追い風に活況を呈している業界もある。その一つがアウトドア業界だ。なかでもキャンプは、いわゆる"密"を避けられるレジャーとして人気が上昇している。
一般社団法人オートキャンプ協会が昨年実施した調査によると、2021年の1年間で1回以上キャンプをした人は750万人にのぼり、前年の610万人から23%増と大きく回復した。しかし、19年は860万人、18年は850万人に達していることから、コロナ前の水準にはおよんでいないのが現状である。
その一方で、1人あたりの年間平均キャンプ回数は4.9回と20年(4.6回)、19年(4.4回)とコロナ禍でも堅調に推移。さらに全国のキャンプ場の平均稼働率も20.4%とこちらも20年(16.3%)、19年(17.5%)と比べて上昇している。
アウトドア市場も成長の真っただ中にある。矢野経済研究所が昨年11月に公表したデータ(『戦略経営者』2023年5月号 P33図表)によれば、21年度の国内アウトドア用品・施設・レンタル市場規模は前年度比109.6%の3,262億1,000万円にのぼる。市場を押し上げた要因として、矢野経済研究所はアウトドア初心者によるキャンプ用品の購買が進んだこと、年に複数回キャンプ施設を訪れる層が増加していることが挙げられると分析。実際に、スノーピークやロゴスなど大手アウトドアブランドはコロナ禍でも軒並み好業績を記録している。
この流れに乗り遅れまいと異業種からの参入も相次いでいる。例えば、作業服大手のワークマンは18年に「ワークマンプラス」というブランドを立ち上げ、オリジナルのアウトドアグッズを販売。これまでに累計270万点、約40億円を売り上げるなどスマッシュヒットを記録している。
また、家電大手のビックカメラも20年にアウトドア用品の販売事業を立ち上げ、ビックカメラ立川店(東京都)の1フロアに専門店をオープン。キャンプギア、ウェアなどの必需品に加え、ポータブル電源やLEDランタンなど家電量販店の強みを生かした多彩なラインアップが好評だという。
中小企業の進出も相次ぐ
アウトドア市場への進出は何も大手に限った話ではない。中小企業でもアウトドアグッズの開発・販売等の取り組みが加速している。
例えば、精密板金やレーザー加工をなりわいとする寿産業(神奈川県)では、精緻な金属加工技術と最新鋭の製造設備を武器にポータブル型薪ストーブ「BLISS」を21年にリリース。コンパクトかつ大容量なつくりに加え、オーロラ状に燃え盛る炎の美しさが好評を博している。
内装工事業の古崎(福井県)は長年培ってきた木工技術を生かし、木のインテリアが特徴的なトレーラーハウスを製作。キャンプブームを弾みにアウトドアファンからの受注を相次いで獲得しているという。このほか、自社の技術を生かしてさまざまな製品を開発した事例をケーススタディーで取り上げている。詳しくは次ページ以降を一読いただきたい。
矢野経済研究所によると、今後もアウトドア関連市場は拡大の一途をたどることが予想されるという。競争相手は多いものの、消費者のニーズや市場の変化をうまくつかむことができれば、ヒットする製品やサービスを創出することができるだろう。
アウトドア市場の周辺には多くのビジネスチャンスが眠っていそうである。
(本誌・中井修平)