2023年7月号Vol.131
【レポート】内部事務DX化バックオフィス業務の効率化へ
デジタルインボイスQ&A
インボイス制度を機に、内部事務のDX推進の観点から注目される「デジタルインボイス」。
だが、よく分からないことも多い。そこで、この新潮流を解説する。
Q1 デジタルインボイスとは
10月1日から、複数税率に対応した消費税の仕入税額控除の方式として「インボイス制度」(適格請求書等保存方式)がスタートします。
自治体においても公共施設の利用料や上下水道料金などの課税取引が該当し、制度開始後は買い手である取引先から求められたときには「適格請求書」(インボイス)の発行が必要となります。
インボイスは紙の発行に加えて、電子データ(以下、電子インボイス)による提供も可能です。これに伴い、紙と電子インボイスが混在する、あるいはそれぞれに合わせた保管管理が必要など、業務が煩雑化することも想定されます。この課題を解決するため、日本では官民連携で商取引全体のDXを推進する動きも登場しています。
具体的には、国際的な標準仕様「Peppol(ペポル)」をベースとした日本版ペポルの普及・定着を図り、〈事業者のバックオフィス業務のデジタル完結〉を目指すものです。
この日本版ペポルに準拠した電子インボイスのことを、「デジタルインボイス」と呼びます。
Q2 ペポルとは
ペポルとは、請求書などの電子文書をネットワーク上でやりとりするための「文書仕様」「運用ルール」「ネットワーク」の標準仕様で、ベルギーに本部を置く国際的な非営利組織によって管理されています。現在、欧州各国のほか、オーストラリアやニュージーランド、シンガポールなど世界30カ国以上で利用が進んでいます。日本でもデジタル庁がこれをベースとした日本のデジタルインボイスの標準仕様(JP PINT)を策定しています。
ペポルのネットワークの仕組みを図に示しました。ポイントとなるのは「4コーナーモデル」と呼ばれる概念です。
送り手(C1)は、自らのアクセスポイント(C2)を通じてペポルネットワークに接続し、デジタルインボイスを発行すると、受け手のアクセスポイント(C3)を経由して受け手(C4)にデータが届く──という仕組みです。
流れは電子メールを送受信する仕組みと似ており、ペポルネットワークに参加する全てのユーザーとデジタルインボイスをやりとりすることができます。
*詳細は、「デジタルインボイス推進協議会」のホームページを参照
Q3 デジタルインボイス導入のメリットは
1.バックオフィス業務の効率化
デジタルインボイスには適格請求書発行事業者の登録番号や取引先の名称、品名、単価、数量、取引金額など必要な情報がセットされています。そのため、受け手側では人の手を介することなく財務会計システム等にデータを連携することが容易となり、会計処理などのバックオフィス業務を効率化できます。
また、デジタルインボイスの送信時にデータ検証が必ず行われる仕組みとなっており、インボイスの記載事項がセットされているデータのみがやりとりされるためデータの正確性も担保されます。
2.保存するデータ容量は最小限
デジタルインボイスは、構造化されたデータ(XML形式)のため、PDFなどイメージファイルで作成された電子インボイスに比べて、データサイズが格段に小さいという特長があります。これにより、送り手・受け手ともにデータの保管が容易となります。
3.送受信間の調整事項の削減
ペポルでは、同じ運用ルールの下で標準仕様に準拠した電子インボイスをやりとりするため、個々の取引先との調整事項が大幅に削減できることが期待されます。
Q4 デジタルインボイスを利用するには
1.アクセスポイントを決める
デジタルインボイスの送受信には、ペポルのアクセスポイントを経由する必要があります。アクセスポイントは、デジタル庁等の認定を受けた「ペホルサービスプロバイダー」が提供しており、日本ではTKCを含め29社(2023年5月24日時点)が認定されています。
2.対応システムの導入
デジタルインボイスの送受信には、ペポルに対応したシステムが必要です。現在、民間企業向けに各社が財務会計システムや請求書発行サービスなどのペポル対応を進めています。
3.送受信の相手先管理
ペポルネットワークでの送受信で、相手先を識別するIDは法人番号や適格請求書発行事業者の登録番号となり、これをアドレスとして相手先とやりとりを行います。そのため、データを送受信する際には、事前に相手先のIDを確認し、システムに登録しておく必要があります。
Q5 TKCの対応は
TKCは「デジタルインボイス推進協議会」の幹事法人であるとともに、昨年8月にペポルサービスプロバイダーに認定されました。また、受け取った電子インボイスから仕訳データを生成する特許(特許第6950107号)を取得するなど、対応システムの機能強化にも取り組んでいます。
地方公共団体のお客さま向けには、次世代版「公会計システム」で対応します。
デジタルインボイスで目指すのは、デジタル完結によるバックオフィス業務の効率化です。そのため財務会計システムを核として、お客さまの業務フローに合わせた電子決裁、電子請求書サービス連携といった一体的な取り組みにより、内部事務のDX推進をご支援します。
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なお、今夏に全国14都市で開催する「TASKクラウドフェア」でも、デジタルインボイスに関する最新情報などを提供します。ぜひ、ご活用ください。
掲載:『新風』2023年7月号