2023年1月号Vol.129
【トレンドビュー】地方税共通納税システムにおける納付手段の拡大
地方税共同機構 システム部開発グループ 井口幸一
地方税共通納税システムは、全ての地方団体の地方税について、電子納付サービスを一括して提供するシステムで、2019年10月に稼働しました。
23年4月からは、取扱対象税目に4税目(固定資産税、都市計画税、自動車税種別割及び軽自動車税種別割)が追加されるほか、地方団体の事情に応じ、4税目以外の全ての税目を取り扱うことも可能となります。これら4税目は、企業だけでなく、広く一般個人も納税者であるため、クレジットカードやスマートフォン決済アプリ等による納付も可能となります。本稿では、納付手段の全体像、特に4月から利用可能となるクレジットカードやスマートフォン決済アプリによる納付手続き等についてその概要を紹介します。
1.納付手段の全体像
現在の地方税共通納税システムは、地方税共同機構が開発し納税者向けに提供するPCdeskやeLTAXに対応した市販の税務・会計ソフトウエア(PCdesk等)を利用することで、主に申告税目について、電子申告と連動した電子納付が可能です。利用可能な納付手段は、マルチペイメントネットワーク(MPN)のダイレクト方式、情報リンク方式、オンライン方式ですが、4月から新たにクレジットカードによる納付が追加されます。
また、新たに開発を進めている「地方税お支払サイト」では、地方税統一QRコード(QRコード)の読み取り等による電子納付が可能となります。利用可能な納付手段は、PCdesk等と同様で、クレジットカードによる納付にも対応します。
さらに、地方税お支払サイトでの納付だけでなく、QRコードに対応したスマートフォン決済アプリや金融機関窓口での納付も可能となります。これらスマートフォン決済アプリや金融機関との契約は当機構において行い、全国の納税者に一律の納付手段として提供されます。特に金融機関窓口での納付については、各地方団体が指定する指定金融機関等だけでなく、QRコードに対応した全国の金融機関で納付が可能となります。
2.クレジットカードでの納付手続き
クレジットカードでの納付は、PCdesk等または地方税お支払サイトでクレジットカード納付を選択し、クレジットカード決済事業者の専用サイトに遷移してカード番号等を入力することで手続きが完了します。
一度の納付上限額は999万9,999円で、5大ブランド(JCBカード、VISAカード、マスターカード、アメリカン・エキスプレス・カード、ダイナースクラブカード)のクレジットカードに対応します。
また、PCdesk等のまとめ納付機能は一つの税目を複数の地方団体へ一括で納付するものですが、地方税お支払サイトのまとめ納付機能は、複数税目を複数の地方団体へ一括で納付する機能として開発しており、税目を問わずまとめて納付することが可能です。
3.スマートフォン決済アプリでの納付手続き
スマートフォン決済アプリでの納付は、スマホからアプリを直接起動し、納付書に印刷されたQRコードをカメラで読み取り、決済を実行することで手続きが完了します。地方税お支払サイトに遷移することはなく、アプリの画面操作のみで手続きが完結します。
一度の納付上限額や決済の方法(チャージ残高を利用した決済、クレジットカード、後払い方式など)はアプリによって異なります。
なお、PCdesk等や地方税お支払サイトのようなまとめ納付機能はなく、納付書1枚ごとにQRコードを読み取り、手続きを行います。
4.地方団体における対応
23年4月の運用開始に向け、納付書へのQRコード等の印刷のほか、地方団体向けの新システムである共通納税インターフェースシステムを利用した納付書情報のアップロードに対応する必要があります。なお、新システムでは二重納付防止のための機能を備えており、アップロードした納付書情報のステータスを納付不可に更新することで二重納付を防ぎます。
さらに4税目以外の税目に対応する場合は、QRコードや納付書情報に設定する税目・料金番号の仕様に基づき、対応する税目の番号を設定する必要がありますが、その他の特別な対応は不要です。
その他、地方団体向けに公開している各種仕様書等のドキュメントも確認いただき、23年4月の運用開始に向けた準備をお願いします。
掲載:『新風』2023年1月号