2023年1月号Vol.129
【レポート】自治体DX推進計画ガバメントクラウド先行事業で
全国初! システム本稼働
ガバメントクラウド先行事業において、埼玉県美里町と川島町の基幹業務システムが稼働を開始した。これまでの取り組みをレポートする。
デジタル庁は、昨年度から「ガバメントクラウド先行事業」を実施しています。これは全国の市区町村が標準準拠システムを安心して利用できるよう、一部団体が先行してガバメントクラウド上に基幹業務システムを移行し、動作などを検証するものです。
本事業には全国から52件の応募があり、うち8グループが採択されました。その一つがTKCの基幹業務システムを利用する埼玉県美里町と川島町です。
TKCはアプリケーション開発事業者として2町の取り組みを支援し、2022年10月31日に全国に先駆けて美里町のシステムがガバメントクラウド上で稼働を開始。12月12日には川島町でも本稼働し、現時点までともに問題なく実務で利用いただいています。
これは全国初の試みであることに加えて中小規模団体のモデルとしても注目され、11月1日・2日に開催された「地方自治情報化推進フェア」では、TKC以外のシステムを利用する団体からも多くの質問が寄せられました。
最適・安全な
移行モデル確立を目指す
TKCでは、全てのお客さまのシステムを最適・安全にガバメントクラウドへ移行することを目指しています。そこで作業手順の標準化などを図り、最適で安全な移行モデルを確立するため、21年11月に組織横断による「先行事業対応プロジェクト」を組織しました。活動目標は以下の二つです。
第一が先行事業で求められる検証目的の達成で、デジタル庁から①標準非機能要件の検証、②標準準拠システムの移行方法、③投資対効果の検証──の三つの検証項目が示されています。
第二がTKC独自の検証項目により、ガバメントクラウドへの移行でさらに高い効果を生み出すことです。そのため、①先行団体で得た知見の全国展開、②LGWAN回線の検証、③自治体クラウド特有の検証──の三つの独自検証に取り組みます。
以下に、これまでの取り組みをご紹介します。
1.スケジュール
検証開始からシステム本稼働までの期間は約半年と短期間で、またプロジェクトの関係者も多いことから毎月Web会議で定例会を実施し、進捗確認や課題協議を行っています。
図2に検証項目と期間の詳細を示しました。この中でデジタル庁とTKC独自の検証もそれぞれ実施しています。
なお、先行事業で求められる検証の結果については、デジタル庁が公表している中間報告をご確認ください。
2.独自検証の報告
①先行団体で得た知見の全国展開
美里町の移行で確立したツールやドキュメントを、他団体の移行に活用するための妥当性を検証しました。これは同一のパッケージシステムを〝全国共同利用型〟で提供している強みを生かしたもので、先行事業でも当グループだけが実施しています。
その結果、2例目となる川島町では検証の一部を省略、これにより準備期間を短縮できました。同様のプロセスを経ることで、他団体でもお客さまの作業負担を最小化しつつ、最適・安全なシステム移行が可能になると想定されます。また、これらの成果は全国の自治体クラウド参加団体にも参考になると考えます。
②LGWAN回線の検証
ガバメントクラウドとつなぐ回線費用がお客さまの負担増となることから、LGWANの活用について検証しました。その結果、活用には、①システムの速度向上、②LGWAN帯域の増強、などの対応が必要と判断しています。
回線費用の増加については先行事業に参加する全グループに共通する課題で、国も解決方法の検討を開始しています。当社では、国の動向なども踏まえながら最適な回線を選択し提案する予定です。
③自治体クラウド特有の検証
美里町と川島町は、県内21町村で構成される「埼玉県町村情報システム共同化推進協議会」に参加し、ネットワークも共同調達をしています。検証の結果、協議会が実施している共同調達と同じ仕組みを使うことで、ガバメントクラウドでも回線コストを削減できることを確認しました。
◇ ◇ ◇
なお、ガバメントクラウドに移行する標準準拠システムについては現在、仕様書を分析しながら開発を進めているところです。
いま、自治体はかつてないほど大きな転換期を迎えています。この変化の大波を乗り越え、お客さまが「真の自治体DX」を実現できるよう、TKCはこれからもさまざまな形で継続してご支援してまいります。
掲載:『新風』2023年1月号