2022年7月号Vol.127
【特集】全庁を挙げて
サービス改革に挑む環境を整備
総務部 デジタル戦略課 デジタル政策係
石﨑 努 係長 / 光安 楓 主査 / 野澤理恵 主査 / 廣沢拓也 主事
- 住所
- 栃木県真岡市荒町5191番地
- 電話
- 0285-82-1111
- 面積
- 167.34平方キロメートル
- 人口
- 77,736人(2022年6月1日現在)
──DXの推進状況を教えてください。
石﨑 DX推進では、全庁的な組織体制を整備するとともに、職員一人ひとりがビジョンとミッションを理解・共有することが不可欠です。
そこで、真岡市では政策や戦略など方向性を決める本部会議(メンバーは市長や副市長、幹部職員)の下、事業の推進・調整を行う連絡会議、係長を中心に各部署の推進リーダーとなるDX推進員を配備。加えて、職員からDX協力員(現在8名が参加)を募り、デジタル戦略課だけでなく行政改革や情報政策など各部署が連携しながらDXを進めていく体制を整備しています。
また、ミッションやビジョンの理解・共有ということでは職員研修のほか、DX推進員・協力員を対象としたワークショップも開催しています。ワークショップでは、昨年、『真岡市総合計画』の五つの重点プロジェクトについて分析し、課題解決のための「真岡市プラットフォーム」をデザインしました。コロナ禍での活動は大変でしたが、ウェブ会議やオンラインツールを駆使して全4回、毎回半日程度かけてじっくりと議論を行いました。
書かない窓口で
手続き時間を大幅短縮
写真左から石﨑係長、光安主査、野澤主査、廣沢主事
石﨑 さらに真岡市では、国が『自治体DX推進計画』を示す前から、デジタル技術を活用した市民サービス向上と業務効率化に取り組んできました。
その一つが、2020年9月からサービスを開始した「書かなくてよい窓口」です。これは「かんたん窓口システム」を導入して実現しました。市民課からは「転入転居の手続きが、これまでの5分の1程度の時間で完了できるようになった」と聞いており、市民サービスの向上に役立っています。
廣沢 また、AI・RPAなども積極的に活用しています。AIでは、昨年からAI-OCRを導入しました。特に申請書を大量に取り扱う部署では使用頻度が高く、業務プロセスの抜本的な変化が期待されています。そこで今年度は、より多くの課で活用してもらえるよう操作研修に注力しようと考えています。さらにRPAでは、住基システムへの入力作業などの一部に活用しています。運用保守などの点でまだ課題があるため、まずはスモールスタートして導入効果が見込まれる分野を模索しているところです。
──DX推進の課題は何でしょうか。
野澤 最大の課題は、やはり「職員が自分事として捉え、主体的に改革を実行できる環境づくり」だと思います。私自身も4月にデジタル戦略課に配属されるまでは「自分とは関係ない」という意識がありました。研修などにより、DX推進のビジョンやミッションへの理解は少しずつ浸透してきたと感じていますが、職員によって意識の乖離があるのも事実で、継続的な取り組みが必要だと考えています。
光安 意識改革は大きなテーマです。そこで引き続きDX研修に注力し、昨年度受講できなかった職員をカバーするとともに、より実践的な内容にも踏み込んでいきます。
さらに、業務改革を主体的に行いたいと希望する職員でプロジェクトチームを結成しました。ここでは業務改革の手法やなぜ非効率になっているかの考え方を学び、ツールを活用しながら実際の業務フローを描き直すことを行っています。この取り組みを全庁で共有し、近い将来、個々の職場で自然に広がっていくことを目指しています。
やり方ではなく
考え方を変える
──今後の計画を教えてください。
石﨑 最重要テーマは「3ない市役所」の実現です。そのため〈書かせない窓口〉に続き、〈来させない〉〈待たせない〉窓口を構築し、市民にとってより利用しやすい環境整備を進めます。これらはシステムを導入して終わりではなく、常に市民起点で現状を見直し一歩先行く行政サービスの提供を目指します。その点では、「スマート申請システム」と「かんたん窓口システム」の連携効果に大いに期待しています。
とはいえ、デジタル技術はDXの手段に過ぎません。社会情勢の変化が激しい中で、市民のニーズも変わり続けています。将来予測が困難な時代となったいま、これまでの〈目的を達成するためにどんな手段があるのか〉という思考法だけでは迅速な対応は難しいでしょう。そのため〈新しい手法・ツールを、サービスのどこに活用すれば変革を起こすことができるか〉という視点で考え、トライ&エラーをしていくことも必要と感じています。手段としてデジタル技術を積極的に活用するとともに、外部の知見も採り入れながら全庁を挙げてサービスや業務の改善を重ね、全ての人に優しい「ハイフレックス市役所」を目指します。
掲載:『新風』2022年7月号