刀根英彰顧問税理士、寺田誠社長

人気ブランドの時計やバッグ、ジュエリーの買い取り専門店を営み、三重県津市周辺で存在感を高めているブランドハット。寺田誠社長と刀根英彰顧問税理士に、丸山勝也桑名三重信用金庫丸の内支店長、同信用金庫の稲守宏哉氏を交え、月次決算をベースにした財務管理と、コンスタントな業績開示の効用を聞いた。

業界経験豊富な鑑定士による地域随一の高額査定が売り

多彩なブランド商品を買い取る

多彩なブランド商品を買い取る

──赤い壁面看板が目立つ店舗です。

寺田 お客さまが入りやすく、いすに腰かけてゆっくり話せるお店をコンセプトに置いています。売りは、名古屋や四日市などの都市部の買い取り専門店に匹敵する高額査定。競合他店に負けない買い取り価格であると自負しています。

──高額査定できる理由を教えてください。

寺田 適正な買い取り価格を提示するためには、真贋を見極める目利き力はもちろん、国内外の店頭販売およびオークション相場の動向を注視することが欠かせません。当店には、豊富な専門知識と査定経験を有する鑑定士が在籍しており、お客さまが持ち込まれた商品を原則預かることなく、その場で価格を提示しています。私も「ウオッチコーディネーター(CWC)」の資格を取得し、時計の専門知識習得に努めています。
 買い取り商品は店頭販売やEC、オークション等さまざまな販売ルートに分かれますが、最も高額で売却できる販路を適切に判断できるのも、高額査定の要因です。

──CWCとは、どのような資格ですか。

寺田 日本時計輸入協会が運営する資格制度で、おもに時計販売を手がける事業者を対象としているようです。筆記試験と実技研修をパスし、2020年に取得しました。お客さまと、腕時計ブランドの歴史や内部構造に関して突っ込んだ会話ができ、実務に役立っています。

──最近はインターネットやアプリによる中古品の個人間売買が盛んですが、どんな集客策を打たれていますか。

寺田 当店サイトのブログページで、最新の買い取り実績を発信しているほか、メインの顧客層である40代の方々をターゲットとした、インターネット広告を掲載しています。あわせて、特定のブランド商品を対象とする、期間限定の高額買い取りキャンペーンも実施しています。例年8月は買い取り商品点数が減少するため、キャンペーン内容を強化しており、今年は8月31日まで、全ブランド時計買い取り価格5%アップキャンペーンを実施中です。
 われわれが買い取り価格を提示した後、ネットオークション等への出品を試される来店客の方もいますが、最終的に多くの方々は当店で売却されます。

──創業されたのは14年です。

寺田 創業前は大阪に本社を構える同業他店に勤務していました。もともと三重県内には、大通りや国道沿いにブランド品に特化した買い取り店がなく、女性や若い方が気軽に入店できるお店を開業したいと考えていたんです。私自身、三重県出身のため、この近辺の土地勘もありました。お客さまが気軽に立ち寄れる、ブランド品を集めた小屋(hut)にしたいという思いからブランドハットと名付けました。

──これまで買い取られた珍しい商品は?

寺田 ジャガー・ルクルトの「アトモス」という置き時計は、希少といえるかもしれません。また、パテック フィリップの腕時計「ノーチラス」も取り扱う機会が少なく、買い取り価格も高額でした。

顧客の詳細な属性情報を広報や店舗設計に生かす

新設した商談用個室

新設した商談用個室

──顧問税理士の刀根英彰先生とは創業間もないころからのお付き合いをされているとか。

寺田 同年代の税理士の方を探していて、取引のある桑名三重信用金庫さんに相談したところ、刀根先生を紹介されました。顧問契約締結を機に会計システムを『FX2』に切り替え、販売管理、給与計算業務にもTKCシステムを活用しています。

刀根 当時利用されていた市販の会計ソフトからの移行と、『SX2(戦略販売・購買情報システム)』の併用をおすすめしました。ブランドハットさまにおける買い取り商品は、腕時計やハンドバッグ、金など毎月膨大な点数にのぼります。『SX2』では、そうした商品の情報を詳細に入力してもらっています。

──TKCシステムのどんな点に利用価値を感じられていますか。

寺田 何よりクリアな数字を基に、迅速に業績をつかめるようになりました。以前利用していた会計ソフトは、月次で数字を締めるという発想がなく、過去の数字も入力しなおすことができた。そのため、業績がつかみづらく、漠然としている印象があったんです。刀根先生と顧問契約を結んで以降、先生自ら巡回監査のため毎月来られるので、月次決算を意識し『FX2』での日々の仕訳入力が習慣になりました。月次巡回監査の際に、前月や前年同月と比較した業績の推移を確かめ、目標達成に向けた打ち手を検討しています。
 さらに、桑名三重信用金庫さんに「TKCモニタリング情報サービス」により月次試算表データを送信しており、スムーズな資金調達につながっていると感じています。

──注目されている経営指標は?

寺田 この商売は商品を仕入れてなんぼですから、『FX2』の《変動損益計算書》の仕入高に真っ先に目がいきます。それと、手元資金の推移ですね。創業当初から買い取り商品点数が想定を上回り、資金繰りに苦労しました。手元資金に余裕を持つためにも、金融機関との関係を緊密にしているほか、在庫商品を過剰に抱えず、オークション等で適宜販売して資金化するよう心がけています。

──『SX2』の活用用途を教えてください。

寺田 商品仕入れ時にお客さまの地域や性別、年齢といった属性情報を入力しており、《仕入月報》で顧客層を分析して、ターゲット層に響く店舗づくりや広告デザインの検討に役立てています。主要顧客層が40代の方々であることを鑑み、高級感のある店舗設計を心がけています。先だって、個室の買い取りスペースを設けたのもその一環です。

MISによる業績開示が「信用力」向上に寄与

書面添付実践の表敬状(左)と税務署から発行された調査省略通知書

書面添付実践の表敬状(左)と
税務署から発行された調査省略通知書

──刀根先生から、「MIS」による月次試算表データの送信を提案されたとき、どう感じましたか。

寺田 以前は金融機関に月次試算表を持参したり、融資担当の方に受け取りにきてもらったりしていました。「MIS」を利用すればそうした手間がなくなり、業績のタイムリーな公開を通して自社の信用力を高められると感じたので、逆にお願いしますという思いでした。

──金融機関サイドの「MIS」に対する評価をお聞かせください。

丸山 当金庫は、いわば大病院というよりも町医者のスタンスで、取引先さまとの日ごろの対話を重視しています。最新の業績をタイムラグなく確かめられ、きめ細かいソリューション営業に生かせるのが「MIS」の最大の利点です。

稲守 毎月2回ほどブランドハットさまの店舗を訪問していますが、月次試算表データをあらかじめ確認した上で、寺田社長と面会しています。数字に前月から顕著な変動があった場合、背景を質問できるので助かっています。

──書面添付(※)の表敬状を掲示されていますね。

寺田 3年前に税務署から税務調査に関する問い合わせがあり、月次試算表などの帳表を提示したところ、調査省略となる旨連絡がありました。月次決算による透明性の高い決算書が評価されたものととらえています。

──来年、創業10周年を迎えます。

寺田 販売部門を強化するなどして現在の営業エリアで顧客層をさらに開拓するか、あるいは2店舗目を出店して商圏を拡大するか、方向性を模索中です。手元資金を潤沢にして予算面で余裕ができてから、新たな展開をしかけたいです。

※「書面添付制度」とは

 税理士が申告書作成にあたり次のような項目について、添付書面に記載します。

  1. 関与先にどのような資料、帳簿類が備え付けてあり、どの帳簿類を基に計算し、整理し、申告書を作成したか。
  2. 今期大きく増減した科目の原因及び理由。
  3. 関与先からどのような税務に関する相談を受け、回答したか。
  4. 税理士として関与先の申告書内容について、どのような所見を持っているのか。

 書面添付をすると、調査対象となる前に、税理士に記載内容についての意見を求められることがあります。これを「意見聴取」と言います。この意見聴取で疑問点が全て解決できれば、調査省略となります。また、調査に移行したとしても、既に調査を行うテーマが分かっており短時間で終了するのが殆どであり、税理士・関与先ともに負担が軽減されます。

日本税理士会連合会「書面添付制度をご存じですか?」より引用

(取材協力・刀根英彰税理士事務所/本誌・小林淳一)

会社概要
名称 株式会社ブランドハット
業種 中古ブランド品買い取り
創業 2014年11月
所在地 三重県津市丸之内31-27
URL https://www.brandhut.jp
顧問税理士 刀根英彰税理士事務所
顧問税理士 刀根英彰
三重県松阪市挽木町385番地12
URL: https://tonekaikei.tkcnf.com

掲載:『戦略経営者』2023年9月号