高齢者を雇用するに当たり、職場環境を見直そうと思っています。そうした取り組みを支援するエイジフレンドリー補助金という制度があると聞きました。詳細を教えてください。(印刷業)

 少子高齢化が進むなか、働き手としての高齢者の存在は、ますます大きくなりつつあります。とはいえ、60歳定年制、65歳まで希望者全員継続雇用、70歳までの雇用確保努力義務を原則とする従来型企業は、この労働力不足・採用難の時代においても、企業内における高齢者従業員の位置づけが確立されていないところが大半です。そうした企業で、いきなり高齢者を雇用しても、その人の能力を十全に発揮してもらうことができず、下手をすると労災事故にもつながります。実際、身体機能が低下する高齢者の労働人口が増えるにつれ、労働災害の数も増加傾向にあります。

 エイジフレンドリー補助金はそうしたミスマッチを防ぐために、高齢者が安心して働き続ける職場環境を整備するために活用できる制度です。対象事業者の要件は次の3点です。

①60歳以上の「高年齢労働者」を「常時」1名以上雇用している。
(対策を実施する業務に高年齢労働者が就業していることも要件)

②労働保険に加入している。

③中小企業事業者である。

 これらの要件を満たした事業者が、以下の対策を実施した際に発生した費用が補助金の支給対象になります。

●職場で雇用されている高齢者の新型コロナウイルス感染予防に必要な費用。

●介護における「移乗介助および入浴介助」の際の身体的負担を軽減する機器。
介護施設などにおいて、リフトやスライディングシートを導入して抱え上げ作業を楽にする取り組みに適用されます。

●熱中症の初期症状等、体調の急変を把握できる小型携帯機器(ウェアラブルデバイス)を用いた健康管理システムの利用。

●飛沫(ひまつ)感染の防止対策(使い捨てマスク等の消耗品、ビニールカーテン等の仮設の設備は対象外)等。

●身体機能の低下を補うための設備・装置の導入に必要な費用。

●通路の段差解消(スロープの設置等)、階段への手すり設置。

●床や通路の滑り防止対策(防滑素材の採用、防滑靴の支給など)。

●熱中症リスクの高い事業場における、休憩施設の整備や送風機の設置等。
涼しい休憩場所の設置、通気性の良い服装を用意するなどの取り組みに適用されます。

●健康や体力状況等の把握に必要な費用。

●体力チェック。

●保健師やトレーナー等の指導による身体機能維持向上活動等。

●安全衛生教育の実施に必要な費用。
たとえば、高齢者における安全衛生に関する研修会を開く場合には、この制度が適用できます。

 上限額は100万円、補助率は2分の1。申請受付期間は今年の10月末。対策となる具体例や補助対象にならないものについては、「令和4年度エイジフレンドリー補助金Q&A」のサイトをご確認ください。また、申請については、エイジフレンドリー補助金事務センター(03-6381-7507)にお問い合わせください。

 高齢者に長く働き続けてもらうためには、安心して勤務できる環境を整えることが重要です。働き手の安全を守ると同時に、安定した労働力を確保するためにも、エイジフレンドリー補助金の活用をお勧めします。

掲載:『戦略経営者』2022年9月号