先日、大手飲食チェーンの広告がおとり広告であると指摘された事案を報道で知りました。そもそもおとり広告とはどのようなものを指すのか、詳細を教えてください。(飲食業)
商品・サービスが実際には購入できないにもかかわらず、購入できるかのような表示をすると「おとり広告」として一定の制限を受けます(平成5年公正取引委員会告示第17号)。今年6月9日には、回転ずしチェーンが、おとり広告を行ったとして、消費者庁から措置命令を受けたことが報道されました。
ただ、店頭商品の売れ行きが想定を上回り、欠品が生じることは間々あり、どのような内容がおとり広告に該当するか、気になる経営者は少なくないはずです。消費者庁による「おとり広告に関する表示」等の運用基準に記載されている事例をもとに解説します。
①取引の準備がない商品・サービスの表示をすること
通常は店頭に並んでいる商品が店頭に陳列されていない場合や、商品の引き渡し期間が通常よりも長くかかる場合等が含まれます。
②実際に提供できる数量が大きく制限されているのに、その点が明らかでない表示をすること
広告掲載商品等の準備数が、実際の販売数量の半分にも満たない場合が該当します。また、内容は具体的に記載されている必要があり、販売数に限定があるだけの表示では足りません。
③提供できる期間、量に限定があるのに、その点が明らかでない表示をすること
実際の販売期間と、顧客1人あたりの販売量が明確に記載されている必要があります。また、限定があるとの表示だけでは足りません。
④取引できないか、取引するつもりがない商品・サービスの表示をすること
広告掲載商品を顧客に見せないといった取引の事実上の拒否や、顧客が推奨商品の購入意思がないと表明しているのに、購入を重ねて推奨する場合が含まれます。
そのほか、ポスター等に「売り切れ御免」とか「なくなり次第キャンペーン終了」と記載するだけでは足りず、具体的な裏付け表示がないと運用基準を満たさない点に注意してください。複数店舗で商品・サービスを提供する場合には、店舗ごとの販売数量が明記されている必要もあります。
景品表示法に注意
これらの注意事項以外にも、広告、ビラ等の表示が景品表示法に抵触する場合もあります。代表例は以下のとおりです。
①実際の商品よりも著しく優良であると示されている場合
販売商品がキズ物、ハンパ物であるにもかかわらず、その旨の表示がない。新商品と表示されているのに実際は中古商品である、特売専用商品で通常の商品と異なるのに、その旨の表示がない。
②実際の商品よりも著しく有利であると誤認される場合
広告に「全店3割引」、「全商品3割引」といった表示があるのに、割高で販売されている、通常価格と変わらないのに安く販売しているように表示されている、加工・包装手数料等の追加費用が表示されていない。
これらは、消費者庁による措置命令の対象となります。景品表示法違反の場合は、公正取引委員会、消費者庁、都道府県知事が連携して、外部からの情報提供等を元に調査を行い、弁明の機会が与えられた上で、措置命令の対象となることがあります。悪質な場合には、課徴金納付が命じられることもあります。
行き過ぎた内容がマイナスの結果を招かないよう、くれぐれも注意しましょう。