斎藤商事株式会社

埼玉県北部(鴻巣市、深谷市、熊谷市)をマーケットに乳製品宅配業を展開する斎藤商事。現在、7100世帯の顧客を持ち、業界的には縮小傾向が続いているもかかわらず、右肩上がりの成長を続けてきた。秘けつは積極的な営業展開と緻密な計数管理だ。根岸正一社長と越川利明顧問税理士、五島学監査担当に話を聞いた。

──乳製品宅配業として埼玉県北ではシェアトップだとか。

根岸正一社長

根岸正一社長

根岸 周知の通り業界は縮小傾向が続いており、埼玉県内でも20年前と比べると販売店は半減しています。そうしたなか、当社は、先代(現会長)の時代から積極的な営業を展開し、廃業した店を吸収するなどしながら成長してきました。現在は、鴻巣の本店のほかにも深谷、熊谷に支店を持ち、7100世帯に明治乳業の乳製品を中心に宅配しています。

──「積極的な営業」とは?

根岸 営業マンが足で一軒一軒勧誘して回る営業方法が主体ですが、コロナ禍の状況のなか電話営業にも力を入れてきていますし、あとはポスティングなどさまざまです。先代が営業力抜群で、それをわれわれも受け継いできました。社員同士でロールプレーイングを行うなど、適時コミュニケーションの仕方の研修会を開いたりもしています。

──乳製品というと?

根岸 牛乳はもちろんですが、今はヨーグルトの「R-1」が一番売れているようです。お客さまに高齢者の方が多いこともあって、タンパク質を補給できる「ロコケア」という商品も伸びてきています。

──乳製品以外の商品は?

乳製品以外にもさまざまな商品を提供

乳製品以外にもさまざまな商品を提供

根岸 総菜やレトルト食品、お菓子などの食材をはじめ、防災グッズなども販売しています。たとえば南高梅という高級梅干しは定番のヒット商品だし、いまの時期だとマスクや消毒液(次亜塩素酸水)などの引き合いも多くあります。高齢者の方々はアクティブに動けず、重い荷物なども運べませんから、われわれがそれを補う形で必要なものをお届けすることは、社会的な意義があると考えています。また、乳製品だけだと飽きがくるので、スポットでいろいろなものを提案することで、お客さまに楽しみを提供するという意味もあります。

──宅配以外の事業は?

根岸 幼稚園・保育園への乳製品の卸売りや企業への自販機設置業も行っています。前者は13校との取引があり、後者は9社に23台設置していますが専門業者との競合のなかで漸減傾向です。

──イベントなども積極的に開催されていますね。

根岸 当社は「地域の方々の健康維持に役立つ」が事業目的なので、イベントをはじめさまざまな取り組みを行っています。たとえば、骨密度測定会の定期開催や産業祭、企業説明会への参加、中高生や特別支援学校の生徒さんの職業訓練体験の受け入れ、などですね。

──地域住民のサポーターとしての役割も意識しておられるとか。

根岸 高齢の方の万一の場合に備えた「認知症サポーター講座」、あるいは「防災知識研修会」なども専門家を招いて定期的に開催。社員に地域のサポーターとしての意識を徹底させています。空き瓶の回収の際に、異変に気付いて救急車を呼んだりということも何度かありました。
 また、有料(宅配顧客月500円、それ以外1,000円)になるのですが、水回りや電気、ガスといった家のトラブルなど何かあった場合に24時間すぐにかけつけるサービスを専門業者と提携して展開しています。

骨密度測定会(左)、7100世帯に配布(中)、本社(左)

骨密度測定会(左)、7100世帯に配布(中)、本社(左)

独自の帳表を作成し具体的打ち手につなげる

──越川先生(税理士法人キャンバス所長)とのご関係は?

越川利明顧問税理士

越川利明顧問税理士

根岸 12年前、先代の時代から顧問をお願いしています。

越川 提携している社会保険労務士の方の紹介でした。先代からは、よりタイムリーに財務情報を知りたいという要望があったように記憶しています。

──会計サービスの内容は?

越川 『FX2』を導入して自計化し、巡回監査、月次決算。決算検討会、書面添付(※)、さらには『TKCモニタリング情報サービス(MIS)』、ヘルプデスクの『TKCシステムまいサポート』と、まさにTKC方式の会計をフル活用していただいています。

※書面添付制度(税理士法第33条の2)
 申告書作成のプロセスにおいて計算、整理、相談に応じた事項を明らかにした書面を申告書に添付し、税務の専門家である税理士が、その申告が誠実に行われていることを示す制度

──越川先生から見て斎藤商事さんの印象はいかがでしょう。

越川 まず、業績が「ずっと」良いというのが第一印象です。先代の時代から埼玉県北部でナンバーワンになろうという意欲をひしひしと感じていました。当事務所が開催している経営支援セミナーに先代、根岸社長ともに来ていただくなど、経営に対する姿勢が真面目で堅実。社員のモチベーションアップにも熱心で、たとえば、営業、配達の各部門成績優秀者や永年勤続者への表彰式なども会場を借りて行われたりしています。数年前に私も呼んでいただいたのですが、社員による大喜利などの余興も企画され、とてもユニークな催しでした。根岸社長は、大学まで野球部に所属していたこともあり、フットワークの良さとチームワークを活かしていくという経営姿勢をお持ちだと感じています。

──根岸社長が毎月の試算表を見られる際に、とくに注視される勘定科目はありますか。

根岸 売上高と利益、仕入れ原価などの基本的な数字はもちろんですが、先代から言われてきたのは会社の基礎体力を示す「自己資本比率」です。いまは40%前後をキープしており、比較的高いと自負しています。また、最近は少し改善されましたが、人の採用に苦労しているので人材募集のためのコストも気になります。

──五島さんは毎月、巡回監査で根岸社長と会話されておられるとか。

五島学監査担当

五島学監査担当

五島 はい。根岸社長は自社の数字についてきちっと把握されていて、監査時にはいろいろと質問されるので、こちらも気が抜けません。細かな経費についての質問も多く、たとえば、今後、人を採用するにあたって予算的に何人まで大丈夫なのかなど、経営に直結する具体的な疑問を聞いてこられます。

根岸 会計と関係ないことまで質問してしまうので、五島さんにはいつも申し訳ないと思っています(笑)。とにかく、毎月正確な数字を見ることができるというのがキャンバスさんにお願いしている最大のメリットです。先代によると、以前は、年次決算ではじめて具体的数字が分かるという状態だったようですからね。現在は、月次巡回監査の際に、さまざまな業績データを基に、五島さんのアドバイスを受けています。さらに、毎年の決算期には、キャンバスさんの事務所にお邪魔して、決算検討会を行うなど、とても細やかな対応をしていただいています。

五島 「マネジメントレポート(MR)設計ツール」というFXシリーズの機能を利用して社長や専務の要望に応じてアレンジした独自の帳表を作成しているのも特徴かもしれません。店舗ごとの売上高や利益、経費の予実対比はもちろん、たとえば車両リース代など、社長や専務が注視したい費目をピンポイントで抽出するようなことも行っています。

──TKCモニタリング情報サービス(MIS)の効果はいかがですか。

根岸 このサービスの提供が始まった当初から利用させていただいています。これまでは、金融機関の方がこられる日に合わせて、分厚い決算書を用意しておかなければなりませんでしたが、これらの手間がゼロになりました。また、借り入れの際にも、以前よりもスムーズに決裁していただけるようになったと思います。

越川 最近は、年次決算書のほかに月次試算表を毎月金融機関に提出するサービスも導入しました。「ゼロゼロ融資」などのコロナ対応融資の必要性などから、金融機関は企業への定期的なモニタリングがいままで以上に必要になってきています。そのため、金融機関からMISの月次試算表提供サービスへの期待が高まっている現状があり、当事務所でも促進に力を入れているところです。

──今後の目標は?

根岸 「地域に貢献する企業」という存在意義をより追求し、地域の方々とのつながりを深めるイベントや生活全般に役立つ情報発信などに注力していきます。それと、今年度からアスリートの大学生を新卒で採用して、活動をサポートする取り組みを始めています。すでにトランポリンと陸上の選手と契約しており、今年4月より入社予定です。これが当社の文化になっていけば、知名度の向上も期待できると考えています。

(本誌・高根文隆)

会社概要
名称 斎藤商事株式会社
創業 1954年3月
所在地 埼玉県鴻巣市吹上本町5-6-5
売上高 3億7,800万円
従業員数 80名(パート含む)
URL https://www.saitousyouji-kk.co.jp/
顧問税理士 税理士法人キャンバス
所長 越川利明
埼玉県上尾市上町1-1-15
URL: https://www.koshikawakaikei.com/

掲載:『戦略経営者』2021年2月号