新型コロナウイルスについて知人から受け取った情報が後からデマだと分かりました。ほかの人に拡散してしまったので後悔しています。デマを見極めるコツを教えてください。(ビルメンテナンス業)

 SNSを通じて拡散したデマでは、2016年4月に発生した熊本地震の時に流布された「動物園からライオンが逃げた」というものがよく知られています。最近でも新型コロナウイルスに関して、「コロナウイルスは熱に弱く、26~27度のお湯を飲めば予防になる」などといった医療や健康に関する不確かな情報が、いつの間にかあたかも正しいもののようにして出回りました。

 さらに非常事態宣言が出される直前の時期に、「東京が4月1日にロックダウンされるらしい」という伝聞形式のチェーンメールのような情報も出回りました。

 これらに共通するのは、ラインなどクローズド(特定の仲間内でのみ情報やメッセージを共有できるタイプ)のSNS空間で発信された情報が、フェイスブックやツイッター、インスタグラムなどのSNSを通じて一気に拡散したこと。「ライオンが逃げた」といった、確信犯的な「オオカミ少年タイプ」のデマはだいぶ少なくなりましたが、「お湯を飲めばコロナウイルス予防になる」などといった、発信している本人には悪気がないものがデマとして拡大する事例が目立っています。世の中が不安に満ちているときに、不確かな情報を正しいと信じた人が発信し、それを見た人が「誰かに教えなきゃ」と正義感でさらに拡散させるケースが増えています。

 さらに最近では、デマの情報拡散スピードが段違いに早くなっているのも特徴です。以前はSNSに投稿されてから1カ月後ぐらいに広まるケースが大半でしたが、最近は1日や2日、早いものでは数時間であっという間に日本中に広まっていることも珍しくありません。テレビや新聞、インターネットではなくSNSをメインの情報入手手段とする人々が大幅に増えたことが原因でしょう。

 デマに惑わされないためには、次の5つが重要です。

①人づての話は勇気をもって疑う。
②常に政府機関・自治体などの公式情報を確認する。
③本当に事実確認されているか、科学的検証がされているかを冷静に見るようにする。
④少しでも疑念をもったり、自分で判断できない情報はシェア(リツイート等)しない。
⑤情報をシェアすることは、たとえそれが善意であっても、自らが情報の拡散に加担していることを認識する。

 悪意が含まれているものも含め、正しい情報かデマかを見極めるのには、実は高度なスキルと高い情報リテラシーが必要です。本来であれば②や③のいわゆる「裏を取る」プロセスができればよいのですが、これはなかなか一般ユーザーの方にできることではありません。まずは、自分で確証を持てない情報については、情報の拡散に加担しないことをぜひ心掛けてください。そして、そのような情報を安易にシェアしないことが大事です。

 真偽の判断はとりあえずせず、そのままにして待つ姿勢も求められます。時間が経過するといろんな情報が入ってくるので、どこかのタイミングで誰かがデマと気付きます。疑わしいネットニュースの真偽についてメディアが検証する「ファクトチェック・イニシアティブ」(FIJ)といった公的団体のホームページをチェックするのもよいでしょう。

掲載:『戦略経営者』2020年7月号