物流コストの増加など当社を取り巻く環境は楽観できませんが、今夏も賞与を支給したいと考えています。中小企業の相場はどれくらいになるでしょうか。(機械部品製造業)
今夏の賞与は前年を上回るものとなりそうです。
第1の要因は、2017年度下期の企業業績が堅調であったことです。
財務省の「法人企業統計調査」によると、2017年10月~2018年3月の全産業(資本金1000万円以上、金融業・保険業を除く)の売上高は、前期比+2.3%と増加でした。製造業では輸出が堅調であったほか、非製造業ではインバウンド需要が下支え役となり、ともに増収となりました。
一方、経常利益は、同▲1.6%と小幅減益となりましたが、水準としては、過去最高圏内を維持しました。製造業では、資源価格上昇による変動費の増加や円高による海外からの受取の減少などを受けて減益となったものの、利益率は高水準を維持しました。また非製造業は、+2.4%と四半期連続の増益でした。
正規雇用者の増加も要因
第2に、2017年度に、正規雇用者が前年比+54万人増と、非正規雇用者の同+37万人増を上回って増えたことも賞与の押し上げに作用するでしょう。
賞与の代表的な指標である厚生労働省「毎月勤労統計」の賞与額は、支給のなかった常用雇用者も含めた平均額としています。このため、賞与支給のある正規雇用者が増えると、平均額が押し上げられます。
しかも、2017年度の正規雇用者数の増加は、前年比+10万人となった製造業を筆頭に、情報通信業や金融業など、もともと賞与水準が高い業種でとくに多かったため、平均賞与額を押し上げる効果が膨らむとみられます。
そして第3の要因として、従業員への還元を、固定的な費用となる月例給よりも、業績に応じて柔軟に支給額を変えやすい賞与を中心に実施しようとする傾向が根強いことも指摘できます。
政府の賃金引き上げ要請や労働側の賃金要求では、安定的な収入となる月例給の引き上げが重視されています。経営側でもこれに応える姿勢が徐々に広がっているものの、2018年度の春闘賃上げ率は、昨年をやや上回る程度にとどまりました。月例給与の引き上げ幅が抑えられた分、賞与での還元が大きくなると思われます。
以上から、今夏の賞与(厚生労働省、従業員規模5人以上ベース)は、全体では前年比+2.2%と、前年の同+0.4%を大きく上回る見通しです。
中小で強い賞与上昇圧力
以上は、全体的な動きですが、中小企業に注目してみると、今夏の賞与の伸び率は、平均よりも高めとなる見込みです。
これは、中小企業で大企業以上に人手不足感が強く、賃上げ圧力が強くなっているためです。
さらに、従業員への還元を月例給与より賞与に頼る傾向も、大企業以上に強くなっています。業績が改善している一方で、円高や物流費の増大など、経営環境の先行き不透明感が強いなか、2018年の春闘賃上げ率は大企業を下回る例が多くなっています。
以上から、今夏の中小企業の賞与の伸び率は、前年比+2.5~3%程度と、近年としては高めの伸びになると予想されます。