最近「ハラル認証」や「ハラルビジネス」などといった言葉を耳にします。詳しく教えて下さい。(食料品製造)
ハラル(またはハラール、英語ではHALAL)という言葉を、最近新聞やテレビで見たり聞いたりする機会も多いかと思います。ハラルとはイスラム法(シャリア)の中で「許されたもの、こと」のことをいいます。ハラルの反対はハラム(ノンハラル)で、豚を食べたり、アルコールを飲むことを禁止する例がもっとも有名でしょう。また死肉や血などもダメで、鶏、牛、羊など他の肉もイスラム処理していない肉は食べてはいけません。ハラル/ハラムの区別は何も食べ物だけでなく、医薬品、生活用品、化粧品、小売り、金融などさまざまな業界に関連する項目も含みます。また「時間を守る」「人のお金を盗まない」など生活全般のルールを含む幅広い概念でもあります。
ハラル/ハラムを守ることを何より大切にしているイスラム教徒に対しては、ハラルとされた製品・サービスしか提供できません。そのハラルを証明し、彼らにとって安全・安心を保証するのがハラル認証制度です。今から約40年前にマレーシアからスタートして世界各国に広った制度ですが、実は国や宗教法人、株式会社などさまざまなな法人格が管理しており、ISOやHACCPのような世界統一基準ではありません。ハラル認証があれば世界中で販売が許可されたり輸出が可能になるという訳ではなく、どこの国で製造してどこの国で販売したいかによって取得すべきハラル認証は異なることに注意してください。場合によってはハラル認証がなくても販売が可能になる方法もあるので、取得を検討している場合は専門家に相談することをおすすめします。
魅力的な市場広がる
大げさだと思われるでしょうが、このハラルへの対応に日本の未来がかかっているといっても過言ではないでしょう。なぜならその先に広大な市場が控えているからです。イスラム教徒(ムスリム)は世界人口の約4分の1、18億人に達します。しかも人口や所得が増加する魅力的なマーケットを持つ国に多く、中東(サウジアラビアやUAEなど)はもとよりASEAN(インドネシアやマレーシアなど)、南西アジア(インド、バングラデシュ、パキスタンなど)、さらにはトルコ・アフリカなど世界中で暮らしています。しかもそれらの国は親日国が多いのも特徴。メード・イン・ジャパンへの憧れや日本人への尊敬、羨望のまなざしを抱いているムスリムは少なくありません。
したがって、今後は日本からは輸出や海外進出、逆に海外からは観光や就業などでの訪日が増加することが予想されています。「東京オリンピック決定」「和食の世界遺産登録」など海外に注目される一方で中国や韓国との関係が冷え込む中、イスラム教徒やイスラム国との関係強化はますます重要になってくるでしょう。宗教が根っこにあるため大企業の経営判断も遅れており、横一線でスタートできる珍しいビジネス領域です。ハラル認証やイスラム教の基礎を正しく理解して対応すれば、中小企業にとっては大きなチャンスとなるでしょう。