急激な円高の影響によって「為替デリバティブ」で損失を出しています。早期に解決できる方法があれば教えてください。(機械製造・卸売業者)

 円高傾向が続いている昨今、為替デリバティブ取引の損失によって、多くの中小企業が倒産の危機に陥っています。

 金融庁の調査(平成23年3月公表)によると、銀行から販売された為替デリバティブ商品を抱える中小企業数は約1万9000社、契約本数は4万本にのぼります。これらの契約の多くは、為替レートが1ドル110円~120円前後で推移していた平成16~19年度に販売されたものです。

 そのため、顧客である中小企業は、リーマン・ショック後の急激な円高の影響で、場合によっては数千万円から数億円の損失を抱えていると考えられます。その結果、為替デリバティブ取引による毎月の支払いが、堅調に推移している本業の収益を圧迫し、多くの顧客(中小)企業が倒産の危機にさらされているのです。

金融ADRの利用

 為替デリバティブとは、外国為替という現物の金融商品から派生した取引の一種。そのうち、現在、中小企業に甚大な被害をもたらしている代表的なものが「通貨オプション取引」です。

 銀行は「為替リスクをヘッジするため」と称して、為替デリバティブ商品を販売してきました。しかし、今日、そもそもその企業が為替リスクをヘッジする必要があったのか、あったとしてもオーバーヘッジではなかったのか。そして、そもそも当該商品が為替リスクをヘッジする商品ではなかったのではないかという問題点が指摘されています。また、中小企業が為替デリバティブ取引を中途解約しようとしても、銀行が一方的に算出する違約金が数千万円から数億円にのぼり、解約が事実上困難という問題点もあります。

 では、この問題にどう対処すればよいのか――。

 為替デリバティブ被害を解決するための有効手段は、(1)銀行への支払いの停止(2)金融ADRの利用(3)訴訟の提起などがあります。このなかで、いま注目されているのが(2)の金融ADRです。これは、金融機関と利用者との間で行われた金融取引をめぐる紛争につき、裁判以外の方法で解決をはかる手続きの略称です。金融ADRを利用すれば訴訟を提起した場合と比較して、迅速かつ柔軟な解決をはかることが可能です。

 具体的には、全国銀行協会やFINMAC(フィンマック)といった指定紛争解決機関にあっせんの申し立てを行います。その後、あっせん委員会による事情聴取を経て、あっせん案が提示され、銀行と中小企業の双方がその案を受諾すればあっせんが成立します。

 このあっせん案の主な内容は、中途解約金の減額や、未払い金の減額が一般的です。あっせん案が提示されるまでの期間は、長くても4カ月程度ですから、中小企業にとって、為替デリバティブ損失を早期に解決できる手段となり得ます。

 ただし、金融ADRでは既に支払ってしまった損害金を含めた解決は難しいので、既払い金の返還を求める場合には民事訴訟を提起することになります。

 現在、当アディーレ法律事務所では為替デリバティブ被害救済のため、豊富な知識と経験を持つ弁護士で専門チームを組み対応にあたっています。被害解決に向けて全力を尽くしますので、お気軽にご相談ください(http://derivative.adire.jp/)。

掲載:『戦略経営者』2012年8月号