初めて輸出に挑戦したいと考えています。「輸出者等遵守基準」を守らなければならないと聞きましたが、概要について教えてください。(製造業)
2009年の法改正により、外為法第55条の10に「輸出者等遵守基準(以下、遵守基準)」の規定が新設されました。その内容は「繰り返して輸出や技術提供する者が、テロ対策、大量破壊兵器拡散防止面で遵守すべき基準を国が定め、その基準に従い輸出者等が、輸出等(技術提供や貨物の輸出を含みます)を行う」というもので、この「遵守すべき基準」を経済産業省令では2段階に分けて規定しています。
まず輸出者等全てが守るべきコアの基準としては、「該非確認(該非判定)の責任者を選任すること」「組織内において輸出等業務に従事する者に対し、法令遵守のために必要な指導(指示)を行うこと」の2つが挙げられています。
更に、リスト規制貨物・技術(原則政府の許可が必要)を遵守すべき基準としては、以下の9項目が定められています。
- 組織の代表者を輸出管理の責任者とすること。
- 組織内の輸出管理体制(業務分担・責任関係)を定めること。
- 該非確認に係る責任者および手続きを定めること。
- リスト規制貨物・技術の輸出等に当たり、用途確認および需要者確認を行う手続きを定め、それに従って確認を行うこと。
- 出荷時に、該非を確認した貨物等と一致しているか確認すること。
- 輸出管理の監査手続きを定め、定期的に実施するよう努めること。
- 輸出管理の責任者および従事者に対し、輸出等の業務の適正な実施のために必要な知識および技能を習得させるための研修を行うよう努めること。
- 輸出等の業務に関する文書を適切な期間保存するよう努めること。
- 法令違反、または違反のおそれがあるときは、速やかに経済産業大臣に報告し、再発防止のために必要な措置を講ずること。
輸出者がこれらの項目について必要な社内手続きを規程化し、整備することを遵守基準自体は求めていませんが、規程として定めたものを関係部署に周知徹底し、その運用を管理しておくことが、法令違反の発生を未然に防ぐ手段として有効です。また、もし包括許可を取得する場合には、「外為法等遵守事項」を網羅した内容の社内規程を整備し、確実に実施することが許可の条件となっていますので、注意を要します。この外為法等遵守事項というのは、遵守基準と基本項目は同じですが、取引審査、出荷管理、資料管理の各項目でより細かく規定する他、「子会社・関連会社の指導」を追加し、6から8の監査、教育および資料管理を必ず実施することとするなどより厳格な管理を求めています。
昨今の日本の経済状況の下、輸出を増やす、海外へ製造・販売拠点を展開する、または製造を委託するといったグローバル化を経営戦略として考えていく必要がありますが、同時にコンプライアンス遵守も大事です。
時々刻々変わる環境の下、柔軟な事業戦略を考える上で、果たして実現可能性があるものなのか、誰がその戦略を実行するのか、そしてコンプライアンス上のチェックはどのように行うのか明確に見定める必要性があります。安全保障面で誰が会社としての方針を決め、誰が取引の最終判断を下し、誰がそれを実行するのか、責任プロセスを明確にし、それを従業員に浸透させることによってはじめて、グローバル化と変革に対応できる企業風土を構築することが可能となるのではないでしょうか。
遵守基準を骨格とし、会社の業務内容にも合致する社内規定化を積極的に検討することをおすすめします。