全国会活動

会計指導力を強化し、企業の存続発展を支援

中小企業の「財務経営力」と「資金調達力」の強化を実現するためには、「中小企業経営者自らが経営状態を把握し説明する能力の向上」と「期中管理体制の定着」が欠かせません。
私たちは、地域の金融機関や中小企業支援団体と協力しその実現を支援します。

社会から高まる税理士への期待

 1999年に抜本的に改正された中小企業基本法で示された「中小企業は、日本経済のダイナミズムの源泉である」との根本精神の下に、中小企業新事業活動促進法をはじめとする新たな法律や国の助成制度、金融支援など、多くの中小企業政策が実施されてきました。

 特にここ数年、国の中小企業政策は「会計の活用を通じて経営力の向上を図る」方向へ大きく舵が切られており、これに伴い税務と会計の専門家である私たち税理士が担うべき役割が重要となってきています。

「中小企業経営力強化支援法」への対応

 2012年8月30日に「中小企業経営力強化支援法」が施行されました。この法律の目的は、①中小企業の経営力強化を図るため、中小企業に対する経営支援の担い手として、別途認定した金融機関、税理士・税理士法人等を「経営革新等支援機関」(認定支援機関)として公的な支援機関に位置付け、その活動を後押しする②中小企業の海外展開を促進するため、中小企業の海外子会社の資金調達を円滑化するための施策を講ずる──とされ、認定支援機関の役割の一つとして、中小企業の経営改善計画の策定支援が期待されています。

 国は、こうした認定支援機関の活動を通して、中小企業の経営改善を促進するため、各種の政策ツールを整備しています。

 また、2013年12月に公表された「経営者保証に関するガイドライン」では、経営者に対して事業計画やその進捗状況等の財務情報の正確な把握と、その適時適切な情報開示等による経営の透明性の確保を求め、その信頼性の向上の観点から、「外部専門家(税理士・公認会計士等)による情報の検証を行い、検証結果と併せた開示が望ましい」としています。

 TKC全国会は、こうした税理士に対する社会からの期待に応えるため、TKC会員に対して認定支援機関への申請・登録と認定支援機関としての積極的な活動を推奨するとともに、TKC会員が経営者保証に関するガイドラインに沿った会計指導を行えるよう、その推進と活用に向けた取り組みを行っています。

中小会計要領への対応

 この認定支援機関がその業務を遂行するにあたって準拠すべき会計基準とされるものが「中小企業の会計に関する基本要領(中小会計要領)」(2012年2月公表)です。中小会計要領は、以下の考えに沿って作成されています。

  • ●中小企業の経営者が活用しようと思えるよう、理解しやすく、自社の経営状況の把握に役立つ会計
  • ●中小企業の利害関係者(金融機関、取引先、株主等)への情報提供に資する会計
  • ●中小企業の実務における会計慣行を十分考慮し、会計と税制の調和を図った上で、会社計算規則に準拠した会計
  • ●計算書類等の作成負担は最小限に留め、中小企業に過重な負担を課さない会計

 2014年3月に開催された「中小企業の会計に関する検討会ワーキンググループ」では、中小企業が中小会計要領に従った会計処理を行うことは、①自社の経営状況を的確に把握し、適切な経営判断を行うために必要である②金融機関等の利害関係者に対して正確に自社の財務情報や経営状況を説明するために有益である──ことが確認され、「中小会計要領の普及・活用を促進するためには、中小企業の支援に関わる全ての関係者による個々の中小企業の実態に講じた指導・助言が特に重要である」として、私たち税理士に対してその定着と普及・活用へ取り組むことを求めています。

 TKC全国会では、こうした社会からの要請に応えるため、「中小会計要領」の普及・活用に向けた諸環境の整備を行うとともに他の中小企業支援団体との連携をとった運動を展開しています。

経営革新等支援機関として

 認定支援機関の登録数は、2017年8月31日現在で2万6,857機関(税理士・税理士法人等は2万2,563機関)となっています。そのうち、TKC会員の登録数は7,392機関で、税理士・税理士法人等の約33%を占めています。

 この税理士・税理士法人等の認定支援機関の大きな役割の一つが、中小企業の経営改善計画の策定支援です。国はこの認定支援機関の積極的な活動を促進するため、2013年3月に経営改善計画を自ら策定することが難しい中小企業・小規模事業者を対象として、認定支援機関に策定支援を依頼し、その費用の一部を国が負担する「認定支援機関による経営改善計画策定支援事業」を創設するなど、中小企業の経営改善を促進するための重点的な取り組みを行っています。

 一方、TKC全国会は、「中小企業の存続・発展の支援」を事業目的に掲げ、中小企業の経営改善に向けた積極的な運動を展開しています。また、全国で20のTKC地域会や支部が覚書を締結した地域金融機関と協働し、関与先企業の経営改善やモニタリング支援等も実践してきました。こうしたこれまでの運動を考えると、私たちTKC会員が経営改善計画の策定支援に取り組むことは必然であるといえます。

 そこで、2014年から2016年にかけ、「経営改善計画策定支援7000プロジェクト」を設置し、積極的な活動を展開してきました。

 その結果、2016年9月に中小企業基盤整備機構が発表した、「平成27年度に認定支援機関が実施した中小企業再生支援業務に関する事業評価報告書」において、事業の成果の一因として「TKCの活動(7000プロジェクト)が起爆剤となり」と特筆されるなどの高い評価を得ています。

「早期経営改善計画策定支援」への対応

 中小企業庁は、2017年5月に新たな事業となる「早期経営改善計画策定支援」を開始しました。これは、資金繰り管理や採算管理などの基本的な内容の経営改善の取り組みを必要とする中小企業や小規模事業者を支援することを目的としています。中小企業等は、認定支援機関の支援を受けて「ビジネスモデル俯瞰図」や「資金実績・計画表」等の早期の経営改善計画を策定し、金融機関(メイン行または準メイン行)へ提出することにより、今後の自己の経営を見直す機会とすることが期待されています。

 当事業は、従来の経営改善計画策定支援事業より一部条件を緩和したもので、多くの中小企業等による利用が期待されています。TKC全国会では、その支援をTKC会員の標準業務とし、次の目的の達成に向けて積極的に取り組んでまいります。

  • ●税理士が「4つの分野(税務・会計・保証・経営助言)の専門家」として、地域・社会に貢献する。
  • ●認定支援機関(税理士)に対する国(中小企業庁)や社会からの期待に応える。
  • ●関与先企業と金融機関との間の信頼関係強化を支援する。

 私たちは、これらの運動により中小企業の経営の健全化、金融機関との信頼関係向上を果たし、中小企業の存続発展を支援してまいります。

中小企業の円滑な資金調達に向けて会計を活用


出典:坂本孝司・加藤恵一郎
『中小企業金融における会計の役割』(中央経済社)

 右図は中小企業金融の相互関係をまとめたものです。この図にある“情報の非対称性”とは、融資の現場における貸し手(金融機関)と借り手(企業)との間の情報の格差を示しています。多くの金融機関では、企業の状況に関する情報が不足しており、金融機関は適切な融資判断がでていません。また、企業においてもこの格差は円滑な資金調達を妨げる要因の一つとなっています。

 これを解消する手段として会計の活用があります。TKC全国会第三代会長であった武田隆二博士は、会計が果たす役割について「財務諸表とは、企業の実像を数値で表現した一覧表であって、現にある企業の実像を『数と数との関係』として描き出したものである」*と指摘しています。つまり、会計の役割は「企業の実態把握」といえます。

*武田隆二『最新財務諸表論(第11版)』(中央経済社)

 私たちは、企業と金融機関の情報の非対称性を縮小し、相互の信頼を強固な物とするため、企業の実態を正確に示す強化のため、これらの会計情報を利用して金融機関へ積極的に提示することを経営者にお勧めしています。


(『TKC全国会のすべて 2017年版』より転載)