2021年4月号Vol.122
【レポート】待ったなし! 行政デジタル化
窓口業務改革への関心が急速に高まっている。TASKクラウドフェア2019でも、関連製品の展示コーナーは終日多くの人でにぎわった。その様子をレポートする。
いま、社会全体で急速なデジタル化が進んでおり、これに伴い自治体を取り巻く環境も大きく変化しています。
2019年に「デジタル手続法」が制定され、行政手続きは〈オンライン化できる〉から〈オンライン化が原則〉へと転換しました。地方公共団体等は努力義務とされましたが、基本的にはデジタル化を進めることが求められています。また、オンライン化を原則としながらも適用除外が設けられていることに留意が必要です。
したがって、行政サービスのデジタル化を進める上では〈オンライン化対象の手続きか対象外か〉〈窓口での相談が必要かどうか〉──などに応じてシステム対応を考える必要があります。
まず〈オンライン化対象〉の手続きであれば、オンライン申請システムを導入して対応します。
一方、〈オンライン化対象外〉の手続きは相談の有無に応じてシステムを適用します。〈相談が不要な軽微な手続き〉は窓口事務をサポートするシステムを導入します。また、転入に伴う手続きなど〈オンライン化できない〉ものについても、窓口のデジタル化で対応することになります。さらに、オンライン化対象の手続きであってもスマートフォンやパソコンに不慣れな方は窓口対応となるため、そのデジタル化も重要です。
このように自治体におけるデジタル・ガバメントの実現は、〈オンライン申請〉と〈窓口のデジタル化〉の二つの側面から取り組むことが鍵といえます。
目指すのは「3ない窓口」の実現
各種申請手続きについて、利用者のニーズとそれへの対応策を整理すると以下のようになります。
1.必要な手続きをもれなく案内してほしい=手続きをお知らせする仕組みの導入
2.氏名や住所など何度も申請書に記入するのが面倒=申請書のデジタル化、書かない窓口の実現
3.窓口での待ち時間を減らしてほしい=オンラインによる事前入力や来庁予約の導入
4.窓口ごとに必要な本人確認を一度で済ませたい=本人確認情報を共有する仕組みの導入
これらをひと言で示すと、行政サービスのデジタル化で目指すのは「3ない(書かせない、待たせない、来させない)窓口」の実現といえます。
TKCでは、こうした取り組みを支援するため、「TASKクラウドかんたん窓口システム」と「TASKクラウド スマート申請システム」を提供しています。これらを活用して、行政サービスのデジタル化を進める市区町村も続々と登場しています。
栃木県真岡市様では、かんたん窓口システムを活用して簡単な質問への回答結果から自動判定した〈必要な手続きの案内〉と、それら手続きの申請書作成を支援し〈書かない窓口〉を展開しています。また基幹系システムとの連携により、住民サービス向上と業務効率化の双方を実現しています。
奈良県奈良市様では、書かない窓口に加えて〈事前申請〉による待ち時間の削減に取り組んでいます。まだ実証段階のサービスですが、スマートフォンで申請書の内容を事前入力し、来庁時にはスマホに表示されたQRコードを、かんたん窓口システムへかざすだけで、住民は申請書と手続案内票を受け取ることができます。
大阪府大阪市様は、スマート申請システムで行政手続きをオンラインで完結する仕組みを構築されています。具体的には、手続き検索に加え、申請・認証から決済、交付まで一連の行政手続きプロセスをオンラインで完結することができます。この仕組みを利用して、大阪市様では今年度中に200以上の手続きをオンライン化し、25年度末までには1500の手続きに対象を拡大する予定です。
なお、大阪市様では段階的にデジタル化を推進される計画です。ここでポイントとなるのは〈業務改革〉を前提としていることです。紙で運用している手続きをオンライン化するだけでは、事務の効率化や利用者の利便性向上にはつながりません。そのため行政サービスのデジタル化を進めるには、現在の業務を見直すことが大切です。
一歩先行く〟システム提供へ
TKCでは「スマート申請システム」と「かんたん窓口システム」により、〈オンラインで完結する手続き〉から〈来庁が必要な手続き〉まで行政サービスのデジタル化を計画的に推進できるようご支援しています。
この二つのシステムを継続して機能強化するとともに、住民サービス向上と行政効率の向上を目指して主に三つのテーマの研究・開発に取り組んでいます。
第一が、オンライン経由で受け付けた申請データを基幹系システム(TKC以外のシステムを含む)と連携することです。バックヤードの業務効率の向上には、この実現が不可欠なためです。
第二が、基幹系システムのデータを活用してワンスオンリー(一度提出した情報は再提出不要)を実現することです。行政機関が保有する情報(氏名、住所、生年月日、所属など)を活用して申請書記入の手間を軽減する、あるいは必要な手続きを案内する──などの実現を目指します。
第三が、手続きの対象者へのプッシュ通知です。基幹系システムの情報を活用すれば、特定の方にその時点で必要な手続きを判定することができます。その結果をお知らせすることで、住民の手続き忘れを防ぎ、必要な人に適切なサービスの提供を可能とします。
◇ ◇ ◇
TKCでは〝一歩先行くシステム〟の提供に向けて、この他にもさまざまな最新デジタル技術を活用したシステムの研究・開発を進めています。
ぜひ、今後の取り組みにご注目ください。
掲載:『新風』2021年4月号