2020年1月号Vol.117

【講演要旨】地方自治情報化推進フェア プレゼンテーション市民目線に立った窓口業務改革

柔軟な発想で、市民サービスの向上と業務の効率化へ取り組む奈良市。
11月からは「スマート窓口」の実証実験もスタートした。
地方自治情報化推進フェアでの講演から、その取り組みを紹介する。

講師:奈良市市民課 課長 中川佳男氏

講演会場

講演会場は、多くの立ち見が出るほどの盛況ぶりで、受講者アンケートでも「奈良市の取り組みは参考になった」という意見が多数を占めた。

 奈良市(人口35万5976名/2019年12月1日現在)では、13年3月から窓口業務の民間委託に踏み切るなど、以前から窓口業務改革へ取り組んできました。また、市民のライフサイクルが多様化する中で一層の利便性向上を図るため、本庁のほか市内に6カ所の出張所・行政センターを設置。災害等で本庁舎の業務が停止してもサービスを継続できるよう、行政機能を多重化するなど、「便利でコンパクトな市役所」の実現に努めています。
 しかし利用状況を見ると、依然として本庁市民課に手続き業務が集中しており、その分、市民の待ち時間も圧倒的に長くなっています。この解消のため、西部・北部出張所、市民サービスセンターの取り扱い業務を拡充しましたが、目立った分散効果は得られていません。
 そこで19年3月に証明書コンビニ交付サービスを開始したのに合わせて、本庁と西部出張所へキオスク端末を置き、本庁とすべての出張所・行政センターにタブレット端末(かんたん窓口システム)を設置。これらを利用して証明書等の交付サービスを始めた結果、一定の効果が上がっています。そして19年11月からは、この仕組みを利用して「窓口に来庁した市民の異動手続きの効率化」と「将来の行政手続きのオンライン化の実現」の実証実験をスタートしました。

実証実験の狙いは
手続きの効率化とオンライン申請

 今回の実証実験には市民課を中心に子ども育成課など6課が参加し、1年間かけて、引っ越し関連手続き(住民異動、就学手続き、児童手当の届出等)における〈効率化〉と、〈オンライン申請〉の効果的な仕組みや運用方法を検証します。具体的には三つの視点で実証を行います(図)。

実証実験の全体像

 第一が、マイナンバーカードとタブレット端末を活用した〈書かせない窓口〉です。ここでは市民・世帯に必要な手続き案内一覧表と、その申請書を自動作成します。これにより市民の利便性向上はもちろん、職員にとっても①必要な手続き案内がスムーズにできる②手続き案内業務の標準化ができる──と期待しています。特に、奈良市では窓口業務の多くを委託スタッフに任せていることから、タブレット端末を活用することで誰でも必要な手続きを的確に案内できるのは、大きなメリットになると考えています。
 第二が、〈来庁者によるスマートフォンの活用〉です。市民がスマートフォンで庁内に掲示されたQRコードを読み取ると「手続きナビ」に誘導され、そこで質問に答えるだけで手続き案内一覧表と住民異動届等の申請書を作成できます。これは、スマートフォンの活用や利点を認識してもらう絶好の機会になると考えています。
 第三が、〈自宅からのスマートフォンによる事前申請〉です。事前申請により市民・職員の手間や時間の削減につながります。手続き案内もオンライン上で行います。ここで「出張所等でも手続きできる」と案内することで、業務分散の効果も期待できるでしょう。
 実証実験に伴い、市民課へ新たに「スマート申請・特例転入出届」専用窓口を設置しました。なお、来庁者が混乱しないよう、案内係としてフロアマネージャーが対応しています。

次なる課題は
バックヤードも含む一気通貫

 もう一つが「おくやみコーナー」の新設です。奈良市では、かんたん窓口システムを利用した死亡関連手続きもスタートします。これにより遺族の方がタブレット端末で質問に答えるだけで、手続き案内一覧表に加え、葬祭費の支給申請書や介護被保険者証の返還、保険料の返還請求などが作成され、ほとんどの手続きをワンストップで完結できます。
 これらの「スマート窓口」は20年10月から本格運用を開始する計画で、実証実験では他の手続きへの横展開に向けた手法も検討します。
 とはいえ、申請受付のデジタル化が進んでも、基幹系システムまで〈一気通貫〉でデータが連携されなければ業務効率化の効果は限定的です。特に奈良市では住基、税、福祉とそれぞれ異なるベンダーのシステムを利用しており、これらとのデータ連携についても今後検討していきたいと考えています。
 人口減少時代を迎え、マンパワー頼みのやり方はもはや限界です。ICTを有効活用しなければ、行政サービスを維持し続けることは困難でしょう。
 日本始まりの地といわれる、奈良。スマート自治体も「ここから始まった」といえるよう、これからもデジタル化による市民の利便性と職員の負担軽減の実現へ取り組んでまいります。

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