2020年1月号Vol.117

【インタビュー】安全・安心・便利なデジタル社会へ重要度を増す「マイナンバーカード」

総務省自治行政局住民制度課 課長 三橋一彦氏
インタビュアー 本誌編集委員 吉澤智

オリンピックイヤーの2020年
今年、デジタル・ガバメントの展開も新たな局面を迎える。
その重要なカギを握るのがマイナンバーカードだ。
安全・安心で利便性の高いデジタル社会の基盤としてマイナンバーカードが
果たす役割と、そのために市区町村に求められることは何か
総務省自治行政局住民制度課長の三橋一彦氏に聞く。

三橋一彦(みはし・かずひこ)

三橋一彦(みはし・かずひこ)
1992(平成4)年、総務省(旧自治省)入省。池田市政策推進部長、鹿児島県総務部長、内閣府地域主権戦略室参事官、総務省公務員部給与能率推進室長、内閣官房番号制度推進室 内閣参事官などを歴任。2019年7月から現職。

──ここ数年、地方公共団体には激流のごとくデジタル化という変化の波が押し寄せています。

三橋 そうですね。そこには二つの側面があると考えています。
 第一が「スマート自治体」の実現です。「自治体戦略2040構想研究会」(総務省)が報告書で示したとおり、地方公共団体には人口縮減の時代を前提に〈持続可能な形で行政サービスを提供し続け、住民福祉の水準を維持〉することが求められています。
 第二がSociety5・0における「技術進歩の加速化」です。特に昨今のICTの飛躍的な進化と、われわれの生活に浸透するスピードはこれまでとは比べようもないほど速くなっています。例えば、商業利用開始から世帯普及率10%達成までの期間を見比べると、固定電話が76年かかったのに対し、スマートフォンはわずか3年です。しかも、短期間のうちにさまざまな場面で利活用が広まっています。
 もはや、デジタル変革への対応は誰も避けて通ることができません。市区町村においても、デジタル化を積極的に推進し〈住民・企業等の利便性向上〉や〈自治体の人的・財政的負担の軽減〉を図ることが求められているわけです。

デジタル社会で最大効果を発揮する
マイナンバーカード

──そうした中、デジタル社会の基盤としてマイナンバーカードが改めて注目されています。

三橋 ご承知のとおり、マイナンバーカードは、マイナンバー制度の創設に伴い発行された身分証明書の一つです。単に身元を確認するのであれば運転免許証やパスポートでも可能です。しかし、社会保障や税の手続きはマイナンバーと本人確認が必要で、マイナンバーカードはこれを1枚でこなせる唯一の存在です。
 また、法律で利用事務が限られているマイナンバーとは違い、マイナンバーカードは対面時に〈顔写真付きの身分証明書〉として利用できるとともに、オンライン上で〈ICチップに搭載された電子証明書を用いた公的個人認証〉にも利用できるという特長があります。この券面による身元確認と、電子証明書を用いた公的個人認証は官民を問わず利用でき、さまざまな拡張性・可能性を秘めています。特に公的個人認証は、オンライン上でさまざまな行政サービスを利用する際に他人による〈なりすまし〉や〈データの改ざん〉を防ぎます。まさに、その利用効果を最大限に発揮するもので、マイナンバーカードはデジタル社会に必携のツールといえるでしょう。

──国もマイナンバーカードの普及・利活用の推進を強化しています。

三橋 デジタル・ガバメント閣僚会議は、19年6月に『マイナンバーカードの普及とマイナンバーの利活用の促進に関する方針』をまとめ、9月には〈22年度中にはほとんどの住民がカードを保有している〉ことを想定した工程表も示しました。
 その影響もあってか、マイナンバーカードの1日当たり平均申請受付件数は、10月が1万枚程度だったものに対して、11月上旬には1万8000枚とほぼ倍増しています。その結果、19年12月9日現在で、カードの申請受付数は約2139万枚、交付実施済数は約1863万枚(人口に対する交付率は約14・6%)となりました。
 安全・安心で利便性の高いデジタル社会をできる限り早期に実現するには、マイナンバーカードの普及を強力に進めるとともに、カードの利便性向上・利活用シーンをさらに拡大していかなければなりません。そこで現在、さまざまな取り組みが進められています。
 すでに実施したところでは、19年11月5日からスタートした旧氏併記があります。これは女性活躍推進策の一環として実施されたもので、生活上のさまざまな契約などで旧氏を証明する身分証としての活用を想定しています。
 また、今後予定されるものの代表例が、「マイナポイントの活用」と「マイナンバーカードの健康保険証利用」の二つです。
 前者のマイナポイントとは、消費税率引き上げに伴い消費活性化策として20年9月から実施が予定されているものです。具体的には、あらかじめマイナンバーカードを取得し、カードでマイキーID(※)を設定した方を対象に、選択した民間のキャッシュレス決済サービスを利用して一定額の前払い等を行った場合、買い物に使えるポイントをプレミアム分として25%(1人当たり上限5000円)を国費で付与する仕組みです。
 後者については、先の通常国会で健康保険法など関連法が改正され、マイナンバーカードを健康保険証として使うことが法定されました。これにより診療時の本人確認とともに、公的個人認証を活用してオンラインで保険資格の確認が可能となります。21年3月の本格運用を目指し、現在、厚生労働省を中心に医療機関等の対応準備が進められています。
 そのほかにも、①デジタル・ハローワーク・サービスによる教育訓練給付金の電子申請の推進、各種申請書類の簡素化②デジタル・キャンパスによる大学におけるデジタル化の推進、マイナンバーカードの教員免許管理等への活用──など、さまざまな分野でカードの利活用拡大が計画されています。

本誌編集委員 吉澤 智

本誌編集委員 吉澤 智

──行政サービスのデジタル化ということでは、マイナンバーカードを活用してさまざまな手続きを簡素化する動きも登場しています。

三橋 その点で、今後、活用の幅が広がるのがマイナポータルです。デジタル手続法で〈行政手続きのオンライン原則〉が規定され、今後はスマートフォンやパソコンを使ったオンライン申請・届出へと急速にシフトしていくことでしょう。その入り口として想定されるのがマイナポータルで、ログインするにはマイナンバーカードが必要となります。
 現在、マイナポータルでは「ぴったりサービス」として子育てに関する手続きをはじめ、さまざまなオンライン申請・届出が行えます。これまでも内閣府が中心となってサービス内容を拡充してきましたが、引き続きその利用促進に向けた検討を重ねていきたいと考えています。
 利用環境についても当初はパソコンとカードリーダを想定していましたが、今後はスマートフォンが主流になると考えています。これに伴い19年11月からはAndroid版スマートフォンに加え、iPhoneでもマイナンバーカードを読み取り、マイナポータルにログインできるようになりました。また年度内をめどに公的個人認証のアプリも公開予定です。これにより、マイナポータルの利用拡大にも一層弾みがつくのではないかと期待しています。

カードの申請受付や交付など
住民が困らないよう計画的な準備を

──マイナンバーカードなしに、さまざまな施策が成り立たない時代を迎えつつあるということですね。そのためにもカードの普及促進が重要です。

三橋 それについては政府広報を積極的に展開するほか、各保険者や業界団体などに対し、事業主・加入者等へさまざまな機会を通じてマイナンバーカードの取得と保険証登録を促進していただくようお願いしています。
 こうした取り組みにより、カードの新規発行を希望する方の急増も予想されます。国では20年7月末時点の交付枚数を3000~4000万枚と想定しており、さらに20年1月から順次、有効期限が切れる電子証明書の更新業務も加わります。これらによる窓口の混乱が起きないようにする必要があります。また、もしもマイナポイントの付与開始のタイミングにカード交付が間に合わない事態となれば、その不利益は住民が被ることになります。こうしたことは絶対に避けなければなりません。
 そこで、市区町村に対し「マイナンバーカード交付円滑化計画」の策定をお願いしています。具体的には、①交付枚数の想定②交付体制の整備③申請受付等の推進──などへの計画的な取り組みを要請するもので、それらにかかる費用については国費による必要な財政措置を講じます。
 また、計画策定やその実施においてはマイナンバーカードの交付担当部局だけでなく、消費活性化策の担当部局や国民健康保険等の関連部局、あるいは人員・設備、予算に関わる部局などとの緊密な連携が必要となります。そこで、計画策定と並行して組織横断型の推進体制なども検討すべきでしょう。

図1 マイナンバーカードの利活用シーンの拡大

──なるほど。まさに“ワンチーム”で進めるのが肝要ということですね。

三橋 住民や地域企業等への取得促進も欠かせません。そこで来庁者への申請勧奨のほか、さまざまなチャネルを活用した住民への周知広報をお願いします。
 加えて、窓口混雑を回避するためには多様な申請方式に対応することも必要です。例えば、税などの手続きに来庁したついでに本人確認と申請を済ませ、後日、自宅へカードを郵送する「申請時来庁方式」や、商業施設や公民館等に職員が出張して申請を受け付ける「出張申請受付方式」などですね。これによりカードの取得促進の効果が期待できるとともに、職員にとっても業務の平準化につながると考えられ、ぜひ積極的な取り組みをお願いします。

──〈住民・企業等の利便性向上〉や〈自治体の人的・財政的負担の軽減〉を図るためにも、しっかりと計画を立てて早々に動き出す必要がありますね。

三橋 計画策定後、月単位で実績のフォローアップを実施し、進捗状況を確認する予定です。カード交付の滞留や実施状況が計画と大きく乖離しているような場合は、都道府県による助言をいただきたいと考えています。
 ただ、重要なのは交付枚数想定の達成ではありません。われわれがゴールとして目指すのは、住民にも職員にも“もっと便利な”行政サービスの実現なのです。
 国と地方を挙げてマイナンバーカードの普及・利用拡大を強力に進めるのは、デジタル技術がもたらす劇的な変化の中で安全・安心で利便性の高い社会基盤をできるだけ早く構築することが重要だからです。市区町村の皆さんにも、ぜひ“受け身”ではなく“攻め”の姿勢で取り組んでいただくことを期待しています。

※:本人からの申請により付与されるIDで、マイナンバーとは別のID。
広く行政サービスや民間サービスで利用可能。

※掲載の内容、および当社製品の機能、サービス内容などは、取材当時のものです。

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