初めて海外の顧客から受注しましたが、何に気を付けたらいいのか不安です。「輸出者等遵守基準」があると聞きましたが、具体的に何をすればよいのか教えてください。(製造業)

 輸出等(図面やソフトなど技術情報の提供を含む)を行う者(以下、「輸出者等」表記)が守るべき基準として「輸出者等遵守(じゅんしゅ)基準」があります。これは法律に基づき、輸出等を行う上で従わなければならない基準であり、すべての輸出者等が守るべき基準2項目と、原則として経済産業大臣の許可を必要とする場合に守るべき基準が10項目規定されています。

 すべての輸出者等が守るべき基準2項目は、①該非判定体制の整備と、②輸出等を行う者に対し、法令遵守に必要な指導を行うことです。そしてこの2項目を守るために必要なことは、「各役割と責任を明確にした管理体制を社内に周知し、法令遵守に必要な手続きを明確にし、関係部門に守らせる」ということに尽きると考えられます。

 この管理体制構築に役立つ社内ルールのモデルとして挙げられるのが、「モデルCP」です。モデルCPでは、いわゆるメーカーや商社、そして組織の大小を組み合わせた6つの基本規程が用意されているので、その中から、自分たちの組織や業務内容にふさわしいものを選んで、社内ルールの整備に使用することができます。もちろん統括責任者の選任、取引審査、出荷管理、監査、教育などの輸出者等遵守基準で定める10項目の要請も満たす内容となっているため、経済産業省のホームページでも紹介されています。

輸出管理の具体的手続き

 具体的に行うべき輸出管理手続きの3つの主要項目について説明します。

  1. 「該非判定」
     輸出等を行おうとする貨物等が輸出令別表第1または外為令別表の1から15の項、いわゆる「リスト規制」(『戦略経営者』2024年10月号P62 図表参照)に該当するか否かを判断する手続きです。リスト規制貨物等に該当することが判明した場合には、原則としてあらかじめ経済産業大臣の許可を取得しなければなりません。この該非判定を誤りなく行うためには、対象貨物等のスペックを把握し、そのスペックが果たして規制値を超えるのか正確に判断することが必要です。
  2. 「取引審査」
     この手続きは、該非判定の他に輸出等を行う貨物等の用途や需要者等の確認、そして取引の可否および許可申請の要否を判断することを言います。この手続きも非常に重要で、取引を進めるべきか、あるいはリスト規制該当、もしくは用途・需要者等の輸出管理上の懸念により、経済産業大臣への許可申請が必要になるかを適正に判断します。規程に基づく管理帳票の承認を得ることにより、法令に基づく適正な判断を行ったことを示す証跡とします。この取引審査を適正に実施することにより、違法な輸出等を行うリスクを大幅に軽減することができます。
  3. 「出荷管理」
     この手続きは、輸出を行う前にその貨物が船積書類や税関への輸出申告内容と一致しているか、前述の該非判定や取引審査の手続きが実施済みであるか、更に許可申請が必要な場合には許可証が取得済みであるかをチェックすることを言います。

掲載:『戦略経営者』2024年10月号