障害のある人も快適に利用できる店舗づくりに取り組んでいます。不当な差別的取扱いの禁止をうたう法律の改正法が近々施行されるそうですが、どんな点を押さえておけばよいでしょうか。(パン小売業)

 障害者差別解消法は、障害を理由とする差別の解消を推進することを目的として2016年から施行されています。同法は、障害のある人への「不当な差別的取扱いの禁止」や「合理的配慮の提供」などについて定めており、21年に行われた改正を受け、改正法が24年4月1日から施行されます。

 対象となる事業者は、営利・非営利、個人・法人の別を問わず、同じサービスなどを反復継続する意思をもって行う者で、ボランティア活動をするグループなども当てはまります。また、障害者については、障害者手帳を所持している人だけにかぎらず、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害や高次脳機能障害も含む)、その他の障害がある人で、日常生活や社会生活に相当な制限を受けている人すべてが対象となり、障害のある子どもも含まれます。

 不当な差別的取扱いとは、障害のある人に対して、正当な理由もなく障害を理由としてサービスの提供を拒否したり、サービスの提供にあたって場所や時間帯を制限したり、障害のない人にはつけないような条件をつけるなどの行為を指します。例えば、障害を理由に窓口での対応を拒んだり、順番を後回しにしたり、保護者や介助者の付き添いがない場合には一律に入店を断るといった行為が該当します。

合理的配慮の提供が義務に

 今回の改正で注意すべき点は、事業者における合理的配慮の提供が従来の努力義務から「法的義務」に変更されたことです。合理的配慮の提供とは、①事業者が②事務や事業を行うにあたり③個々の場面で、障害者から社会的な障壁を取り除いてほしい旨の意思の表明があった場合に④その実施にともなう負担が過重でないときに⑤社会的な障壁を取り除くために必要かつ合理的な配慮を行うことです。

 つまり、障害のある人から、何らかの配慮を求める意思の表明があった場合には、事業者の負担になりすぎない範囲で、社会的障壁を取り除くための配慮を行わなければならないということです。社会的障壁とは、通行や利用しにくい施設や設備、利用しにくい制度、障害者を意識していない慣習や文化、障害者への偏見など、障害者にとって日常生活を送るうえで障壁となるものを指します。

 合理的配慮の内容は、個々の場面や状況に応じた検討が必要ですが、例えば車椅子を利用している障害のある人から「車椅子から降りることなく移動したい」「車椅子のまま着席したい」といった要望があった場合、移動の障壁となる段差への携帯スロープの設置や、テーブルに備え付けの椅子を片付けて、車椅子のまま着席できるスペースを用意するといった対応をとれるかもしれません。また、精神障害のある人から「業務上、注意力や集中力の持続が困難なので対応してほしい」との要望があった場合には、障害の特性に応じた休憩時間の調整やルールの柔軟な変更等の対応が考えられます。

 合理的配慮の提供にあたっては、障害者と事業者が建設的な対話によって理解を深め、一緒に解決策を検討していく姿勢が求められます。そのためにも、障害のある人から相談を受けた際の窓口や担当者などを、社内で決めておくことをお勧めします。心や身体に機能の障害を持つ人たちがどのような障壁に直面し、困っているのか想像することが肝要といえます。

掲載:『戦略経営者』2024年3月号