起業して自社サイト立ち上げを検討していますが、知人から「ダークパターンにならないように気を付けて」と忠告されました。詳細について教えてください。(不動産販売業)

 先日、「ダークパターンを使ってユーザーをだまし、有料会員へ登録させている」として、米国連邦取引委員会がAmazonを提訴し話題になりました。このニュースを皮切りに、「ダークパターン」への注目が一層高まっています。

 ダークパターンとは、「ユーザーが無意識に不利な行動を取るように設計された、悪意のあるデザイン」を意味し、ディセプティブ(欺瞞的)デザインとも呼ばれています。この言葉は、ユーザーエクスペリエンス(UX)の専門家であるハリー・ブリヌルが2010年に名付けたもので、大きく12の種類に分類することができます(下図参照)。

12に分類されるダークパターン

  1. ① ひっかけ質問
    まぎらわしい質問でユーザーを特定の選択に誘導する
  2. ② こっそりカゴに入れる
    顧客の同意なしにユーザーのショッピングカートに商品を追加する
  3. ③ ゴキブリホイホイ
    登録は簡単だが、キャンセルや退会方法が複雑で難しい
  4. ④ プライバシー・ザッカーリング
    ユーザーの予想を超えて多くの個人情報が公開される
  5. ⑤ 価格比較の阻止
    商品価格の比較を意図的に難しくする
  6. ⑥ 視覚的干渉
    ユーザーが気付かないようにその情報から注意をそらせるよう仕向ける
  7. ⑦ 隠されたコスト
    購入プロセスの最後で配送料やサービス料など予期せぬ金額が発生する
  8. ⑧ おとり商法
    おとりの情報を利用してユーザーに意図しない行動を促す
  9. ⑨ コンファームシェイミング(羞恥心の植え付け)
    ユーザーがオファーを断ろうとする際、羞恥心や罪悪感を与えて断りにくくする
  10. ⑩ 偽装広告
    サイトのコンテンツに偽装してクリックを誘う広告
  11. ⑪ 強制的な継続性
    サービスの無料トライアル終了後、何の告知もなく請求する
  12. ⑫ 友達スパム
    ユーザーのアドレスやソーシャルメディアから勝手にスパムメールを送信する

9割該当という調査結果も

 22年に行われた東京工業大学の調査によると、国内で配信されている主要アプリの9割がダークパターンに該当すると判断されました。「気付くと大量のメールマガジンが届いていた」(こっそりカゴにいれる)「簡単にアカウント削除ができない」(ゴキブリホイホイ)などの事例がよく挙げられます。

 ご質問の不動産関連のダークパターンとしては、「おとり広告」(おとり商法)と呼ばれる手法がよく用いられます。この手法は、架空のお得な物件を宣伝し、引き寄せられた客に別の物件を勧めるというものですが、景品表示法に違反しています。

 確かにダークパターンは、簡単かつ低コストで大きな利益を生み出すことが可能なため、安易に手を出したくなる手法です。しかし短期的な効果の後に待っているのは大きな損失です。

 実際に、人気ゲーム『フォートナイト』を運営するEpic Gamesは、子どもを標的にしたダークパターンの使用により、710億円もの制裁金を科されました。客をだまし続けた企業の末路は、信頼の喪失だけにとどまらず、口コミサイトで酷評されるなど評判にも大きなダメージを受けることになります。

 ダークパターンを回避するためには、閲覧した人が「思わず人に伝えたくなる」ような、ユーザビリティーを重視したサイト構築が第一歩となるでしょう。

掲載:『戦略経営者』2023年9月号