山梨県北杜市に拠点を置き、生花やドライフラワーの栽培から販売まで手掛けるFlowers for Lena(フラワーズ・フォー・レナ)。顧問税理士と金融機関との緊密な関係構築で事業を順調に成長させている。鈴木徹社長と経理担当の鈴木珠実さん夫妻、鈴木博之顧問税理士、池崎陽子巡回監査担当、山梨県信用農業協同組合連合会食農法人営業部の広瀬克弥氏に、TKCシステム活用の現状などを聞いた。

人気のドライフラワーを生花の栽培から一貫生産

鈴木徹社長

鈴木徹社長

──もともとは野菜農家だったとか。

鈴木徹社長(以下社長) 神奈川県横須賀市で雑貨店を営んでいましたが、農業を志し2001年に新規就農者としてここ山梨県北杜市に移住しました。最初はニンニクを中心とした野菜の有機栽培を手掛けていましたが、あるとき、連作障害を予防するために裏作で植えていたソルガムや麦を、ドライフラワーの材料として譲ってくれないかという人が現れたのです。その後、ドライフラワー需要の高まりを知り、ドライフラワー用の花き類や生花の栽培を始めました。

──落ち着きのあるナチュラルな雰囲気の店舗が印象的ですが、直営店を出した経緯は?

社長 土壌改良を目的として土にすき込んでいた麦を束にして買い取ってくれるので、当初は助かると考えていましたが、とにかく単価が安かったので、花き類とおしゃれに取り合わせて直販することにしたのです。作業場として借りていた荒れた土地をDIYで整備し、小さな屋台から販売を始めました。自動車の通行量の多い県道沿いの土地だったので、いかに乗車中の人たちの目を引くかを考えてディスプレーしています。

店舗外観

店舗外観

──販売している生花の種類を教えてください。

社長 生花のシーズンはだいたい6月から10月ですが、1.8ヘクタールの畑でダリアやセンニチコウ、ヒマワリ、ラベンダー、ベニバナなど約60種類の花、10種類の雑穀を栽培しています。基本的には季節に応じた花を露地で栽培しています。

──栽培方法にもこだわりがあるとお聞きしました。

社長 ニンニクの栽培は最初から有機栽培だったので、花の栽培でも化学肥料を使わず、一部は自分たちで作ったたい肥を使用しています。ただ花を虫に食べられてしまうと商品にならないので、害虫や病気予防で最小限の薬剤は散布しています。

──ドライフラワーの特徴を教えてください。

社長 通常花屋さんでは、ドライフラワーを作るのに生花を市場で仕入れて加工しますが、当社ではドライフラワーに使う草花を自前で栽培しています。発色の良いドライフラワーを作るためには収穫後できるだけ早く干したほうが良いのですが、市場で仕入れる生花は収穫してから3日は経過しています。しかし当社では花を収穫したその日のうちに干すので、仕上がりの発色の良さが特徴となっています。またこの地域は標高が高く、日中と夜の寒暖差が大きいため、他の産地の花とはまた異なった発色の仕方をするのも特徴だと思います。

──専用のドライ室も完備されているそうですね。

社長 材料となる花の鮮度の次に重要なのは乾燥スピードです。自然乾燥の場合、梅雨の6、7月など湿度が高い時期にはどうしても乾燥時間が長期化します。花は完全に乾燥するまで水分を吸ったり、吐いたりすることで、発色が悪くなってしまいます。天候に左右されることなく良質なドライフラワーを生産するため、専用のドライルームを整備しています。昨年1棟増設し計2棟となり、約1週間で乾燥させる体制を整えています。

──売り上げも好調とお聞きしています。

社長 現在ドライフラワーの人気が高まっていますが、都心にお住まいの方などは「高いもの」というイメージをもたれているようです。しかし当社は生花の生産から一貫して手掛けているので、よりお求めやすい価格で提供することができます。当社の店舗は観光地にあるので都心部から多くのお客さまが訪れていますが、安くて高品質のドライフラワーがあると思っていただけているのではないでしょうか。年間の売上高でみると販売期間が春から秋の6カ月に限定される生花の倍以上の売り上げに達しています。

雑貨コーナー(左)、収穫してすぐに専用ドライルームで乾燥(中)、ドライフラワー売り場(右)

雑貨コーナー(左)、収穫してすぐに専用ドライルームで乾燥(中)、ドライフラワー売り場(右)

慣れないパソコン入力もリモートディスプレイで支援

鈴木珠実さん

鈴木珠実さん

──鈴木先生と顧問契約を結んだ経緯について教えてください。

鈴木珠実さん 前の顧問税理士の方は甲府市内の事務所だったため、地元で地域密着型の新しい税理士の先生を探そうと、地元のフリーペーパーの広告を見て連絡をしたのが鈴木博之先生の事務所でした。それまでは、経費が月々どれくらいかかっているのか、人が足りない状況で臨時に雇用を増やしてよいのかなどの経営課題に対する明確な判断材料がない状況でした。そのような経緯もあり、新しく契約する税理士事務所には、とにかく経営のどんぶり勘定をあらため、頻繁にコミュニケーションをとれるところにしたいと思っていましたが、鈴木先生にはじめてお会いしたときに「とにかく予算を組んで、四半期ごとに実績を確認していきましょう」とはっきりとおっしゃったので、安心しました。

鈴木博之顧問税理士

鈴木博之顧問税理士

鈴木博之税理士 私からみると社長と珠実さんはまさに「ドリーマー」で、生花やドライフラワーにとどまらずカフェをオープンするなど新規事業にも積極的です。ときには金融機関から無茶だと思われこともあるようですが、その間を取り持って、周囲との調和も意識しながら、夢の実現に向けて企業に寄り添うのが私たちの仕事。税理士事務所は仕事柄、どうしても結果の数字だけで話しがちですが、レナさんとは目標を共有しながら予算や将来のことについてより多く話し合うことができているのがうれしいですね。夢をかなえるためには計画が絶対に必要だということも社長ご夫妻にはよく理解していただけていると思っています。

──TKCシステムを導入された理由について教えてください。

池崎陽子巡回監査担当

池崎陽子巡回監査担当

池崎陽子巡回監査担当 『FX農業会計』を導入した1つ目のポイントは、部門別管理機能です。現在農業、雑貨、カフェ部門の3つで管理しており、農業部門に生花とドライフラワーがぶらさがっている構造になっています。2つ目は経理業務の合理化です。以前は、奥さまがあらかじめ経営データをまとめ、それを会計事務所に渡していました。これを奥さま自らが『FX農業会計』に入力して財務管理を行う自計化のスタイルに改めました。

─入力作業には慣れましたか。

珠実さん パソコンがあまり得意ではなくはじめは心配でしたが、分からないことがあれば池崎さんに丁寧に教えていただけるので、とても心強く思っています。また会社のパソコン画面を共有しながら説明を受けることができる「リモートディスプレイサービス」もとても便利だと感じています。

──「TKCモニタリング情報サービス」(MIS)を利用して決算書データと月次試算表データを金融機関に提供しているのだとか。

鈴木税理士 MISでは電子申告したデータがそのまま送信されるので、金融機関の会社への信用度が高くなると考えています。また社長ご夫妻はお忙しいので、少しでも無駄な時間を減らす必要がありますが、決算が終わって金融機関に決算書を持っていく手間を省くことができるようになりました。

社長 MISの一番の利点は、金融機関との信頼関係を築けること。経営の実態が見えなければ資金を貸す方も慎重にならざるを得ないと思いますが、正確な財務状況と今後の展望について情報共有ができていれば、「レナさんだったら融資しましょう」とスムーズに事が運ぶかもしれません。土地の購入や店舗建設の際の資金調達では山梨県信連さんにお世話になってきましたが、MISを利用してから鈴木先生を交えた3者の信頼関係がより強固になったように感じます。

広瀬克弥氏

広瀬克弥氏

広瀬克弥氏 貸し付けのメインとなっているのは日本政策金融公庫さんですが、その窓口になっているのがわれわれ山梨県信用農業協同組合連合会(山梨県信連)です。鈴木先生が組んだ年度の予算を参照しながら、運営費や運転資金をサポートさせていただていますが、金融機関側からみてMISは非常にありがたいサービスだと感じています。レナさんの場合においても年度予算に対する進捗(しんちょく)状況、月次の数字がどんな動きの結果出てきたのかが非常にわかりやすく把握できます。われわれは一般の金融機関とは異なりJAの看板を背負っていますので、今後も農業者を第一に考え親身になって支援していきたいと考えています。

──今後の抱負は?

社長 現状の栽培面積を基本的に維持しながら、「畑」を担当してくれる従業員を育成していきたいと考えています。そして、より基盤がしっかりした段階で、野菜などの食材の生産、レストランの展開も検討していきたいですね。テーブルに座って話をしながら落ち着いてパーティーやイベントを楽しめる、そんな空間作りができればうれしいですね。

(本誌・植松啓介)

会社概要
名称 株式会社Flowers for Lena
設立 2019年6月
所在地 山梨県北杜市大泉町西井出8240-1069
社員数 7名
URL http://flowersforlena.com/index.htm
顧問税理士 鈴木博之税理士事務所
顧問税理士 鈴木博之
山梨県北杜市長坂町長坂上条2533-24
URL: https://machinozeirishisan.tkcnf.com

掲載:『戦略経営者』2021年9月号