育児・介護休業法が改正され、いわゆる男性版産休が盛り込まれたと聞きました。来年以降の施行が見込まれているそうですが、改正の要点とスケジュールを教えてください。(美容業)

「会社で育児休業制度が整備されていなかった」「収入を減らしたくなかった」「職場が育児休業制度を取得しづらい雰囲気だった」。これらは、出産や育児を目的とする休暇、休業を利用しなかった男性正社員が挙げた上位の理由です。また、回答数は少ないものの「育児休業は男性ではなく女性が取得するものだと思っていた」という理由も見受けられます。男性の育児休業を取得しやすくすることで、夫婦が協力して子育てに柔軟に取り組むことができるよう、2021年6月に育児・介護休業法の改正が行われました。5つの要点を以下に記します。

 1つ目は、男性版産休と言われる〈出生時育児休業の創設〉です。男性が、産後8週間以内に4週間(28日間)まで育児休業を取得できるようになり、さらに取得する休業を2回まで分割することができます。仕事の都合で長期間のまとまった休みを取得しづらい場合でも、配偶者の退院時に1回、里帰りから戻ってくる時に1回というように、分割して取得できるようになります。

 休業の申し出時期については、「原則休業の1カ月前」から「原則休業の2週間前」に短縮され、さらに労使協定の締結と労働者との個別の合意をした場合には、労働者が同意した範囲で「休業中に就業することも可能」となります。分割取得や休業中の就業を可能とすることで、育児休業が一層取得しやすくなります。出生時育児休業が創設されることにともない、雇用保険法も改正され出生時育児休業給付金が創設されます。

 2つ目は、〈育児休業の分割取得〉です。従来、育児休業の分割取得はできませんでしたが、前述した出生時育児休業とは別に、育児休業を分割して2回まで取得できるようになります。つまり、子が1歳までの間に、男性は最大で4回、女性は2回までの育児休業を取得できるようになります。また、保育所に入所できないなどの理由で育児休業を延長する必要がある場合、従来は休業の開始日が1歳と1歳半の時点に限定されていました。しかし、今後は1歳以降の育児休業については、休業の開始時点を柔軟に決めることができるため、夫婦間で育児休業の途中交代もできるようになります。以上2つの改正は、22年秋ごろの施行が見込まれます。

意向確認が必須に

 3つ目は、〈個別の周知と意向確認の義務づけ〉です。妊娠・出産した本人だけではなく、配偶者の妊娠・出産の申し出があった場合に、個別面談等を通して、本人や配偶者がどのような制度を利用できるかなどを説明し、育児休業取得の意向を確認することが義務づけられます。ハラスメントを防止する観点からも、正直な気持ちを伝え合える職場風土を大切にしながら、休業するメンバーの精神的負担を減らす工夫などがますます大切になります。

 4つ目は、〈有期雇用労働者の要件緩和〉です。有期雇用労働者が育児休業をする場合、1年以上の勤務と1歳6カ月までの間に契約満了が明らかでないことが要件となっていましたが、勤務期間の要件がなくなりました。ただし、雇用期間が1年未満の労働者については、労使協定の締結によって除外することも可能です。これら2点は22年4月1日に施行されます。

 最後は、〈育児休業取得状況の公表が義務化〉されます。従業員数1,000人超の企業については、男性の育児休業等の取得率などを公表することが23年4月1日以降、義務付けられます。

 就業規則の見直しや社内ルールの整備に加え、休業するメンバーの仕事をチームでサポートし合える仕組みづくりなど、施行に備え準備しておきましょう。

掲載:『戦略経営者』2021年9月号