コロナ禍が長期化し、先行き不透明ですが、今夏も賞与を支給したいと考えています。中小企業における相場を教えてください。(自動車部品製造業)
新型コロナの賞与への影響は、すでに昨年末に現れており、1人当たり賞与額(厚生労働省集計の民間企業事業所規模5人以上の平均)は、2.6%のマイナスとなりました。リーマン・ショック後の▲9%台に比べると小幅な落ち込みでしたが、その理由として、①巣ごもり需要獲得などにより好業績の企業が一部にあること、②飲食サービスや生活関連サービス等で、支給が見送られた企業が増えたことが挙げられます。支給自体が見送られると、平均額算出に含まれないため、好業績で賞与水準の高い企業による平均額押し上げの影響度が増すことになります。
こうした傾向は今夏も続き、1人当たり賞与支給額は、3.2%のマイナスとなる見通しです。
今夏の賞与額を左右する2020年度下期の企業収益は低迷が続いています。財務省「法人企業統計調査」によると、全産業(資本金1,000万円以上、金融機関を除く)の経常利益は、20年10~12月に前年比▲0.7%と7四半期連続の減益となりました。製造業は、外需の持ち直しに支えられ、10四半期ぶりの増益となったものの、非製造業では、外出自粛に伴う国内消費の冷え込みが直撃しており、減益が長期化しています。
さらに今年の春闘賃上げ率は、13年度以来の2%割れとなった模様で、賞与額のベースとなる所定内給与(基本給)の伸びが鈍化したことも、賞与額下振れに作用する見込みです。とりわけ、大企業においては、新型コロナによる業績悪化の影響が今夏賞与から本格化するケースもあり、平均を超える減少率となる見込みです。
中小は支給人数が減少
中小企業では、1人当たりの賞与の減少幅は▲3%弱と、平均より小幅になると見込まれます。もっとも、支給人数は大幅に減っているので、実態は大企業以上に厳しいといえます。実際、従業員500人以上の大規模な事業所では、この間も支給対象者数は若干増加しており、大企業では1人当たり賞与額の削減、中小企業では支給人数の削減が賞与抑制の主な要因となっています。
また中小企業では、支給時期直前の収益状況が賞与に反映されやすい傾向があります。感染拡大が深刻な大都市を中心に、飲食店や商業施設への時短・休業要請が出されるなか、業績の低迷が続いています。このため、もともと賞与の支給対象ではない非正規雇用者が減っているにもかかわらず、今夏の中小企業の支給労働者割合は6割を下回る可能性があります。
こうした雇用所得環境の悪化の一方で、企業は根強い人手不足傾向にも注意する必要があります。就業者数は、3月時点でコロナ前より約40万人下回っていますが、従業員500人以上の大企業では、雇用の緩やかな増加傾向が続いています。コロナ終息後を見据え、雇用調整助成金なども活用しながら、雇用維持を図る企業や、巣ごもり需要の獲得、あるいは電気自動車をはじめとする成長分野への取り組みを強化するなかで、雇用を増やしている企業があるためです。就業形態別でみても、正規雇用者は増加傾向が続いています。
このため、中小企業においても業績が堅調な企業では、人材の確保とコロナ後の成長を見据え、賞与の増額を検討することが中長期の戦略として重要といえます。