マスクを着用しての接客になかなか慣れません。顧客に好印象を与えるには、どんな点を心がければよいでしょうか。(服飾雑貨小売り)
ほんの数年前まで、接客シーンでマスクを着用することは考えられませんでしたが、マスクはもはや必須アイテムとなっています。新型コロナウイルスの完全な終息には数年かかるという予測もあり、「マスク接客」はしばらく続くことになるでしょう。もっとも、衛生意識の高まりから、すし店やラーメン店等の客との距離が近い飲食店では、マスク接客がコロナ後も当たり前になる可能性があります。
接客の基本は「顧客に安心感を与える」こと。マスク接客では口元が隠れて表情を読み取れなくなるため、不安を感じやすくなります。たとえ歯が見えるような大きな笑顔をつくっても、口角が上がっているかどうか分かりません。そこをカバーするために意識したいのが、「眉毛」。髪の毛をしっかりあげて額を出し、眉毛を見せて表情の一部に取り入れましょう。
口元に加え、前髪をおろして眉毛まで隠してしまうと、表情の要素として残るのは目だけになり、こわい印象を与えてしまいます。もちろん、マスクで隠れているからといって、口元の笑顔をおろそかにしてはいけません。口角を上げて顔全体の筋肉をしっかり動かして笑顔をつくらなければ、目元は笑顔にはならないからです。
口以外の要素でカバー
マスクを着用していると声がこもりがちになりますが、飛沫(ひまつ)感染防止の観点から大きな声を出しにくいのが現状です。声の大きさよりも滑舌を意識して、「ゆっくり、はっきり、口を大きく開けて話す」ことで、大きな声でなくても伝わりやすくなります。
また、アイコンタクトやボディーランゲージも重要です。客とすれ違うときには目をしっかり見て会釈したり、商品の場所を聞かれたら口頭で説明するだけでなく、商品がある棚まで案内する。レジ待ちの客には、レジが空いたら手を挙げて誘導したり、動きでカバーしましょう。ジェスチャーは少し大きめにし、アイコンタクトをしながら伝わったかどうか、確認することも大切です。
どんなマスクを仕事中に着用すべきか、悩む方も多いのではないでしょうか。薬局や飲食店など、清潔感や安心感が求められる業態なら、ベーシックな白がおすすめです。逆にハイブランドを扱う店舗や、最先端の施術が売りの美容室なら、黒やグレー等のマスクでも、ブランドイメージの訴求につながるでしょう。
和服なら和柄のマスクを着用するなど、職種やTPOに合わせたデザインで、好印象をプラスすることもできます。ひと昔前は、ほぼ白一択でしたが、いまや素材や色柄等、多種多様な商品を入手できるようになりました。季節にあわせた色合いを選んだり、服を着替えるようにマスクを変えて楽しむ気持ちも、これからの接客には欠かせない要素といえます。
マスク接客だからこそ生まれたうれしい事例もあります。あるドラッグストアでは、話しかける代わりにアイコンタクトやすれ違う際の会釈を徹底したところ、来店客から質問される機会が大幅に増え、また、会話で指摘された陳列方法を改善したところ、売り上げが前年よりアップしたそうです。しばらく続きそうなマスク接客ですが、できないことを嘆くのではなく、できることを徹底するよう心がけてみてください。