会議や打ち合わせをオンラインで行う機会が増えています。「リモートハラスメント」という言葉があるそうですが、実態と対策を教えてください。(広告業)
新型コロナウイルスの感染拡大防止を目的に、多くの企業がリモートワークを導入しています。そうしたなか、リモートワークにまつわるさまざまな相談が寄せられるようになりました。例えば「上司から監視されているように感じる」、「ウェブ会議の最中、画面ごしに部屋の中をまじまじと見られた」といった内容です。
リモートワークに由来するハラスメントは、「リモートハラスメント」と呼ばれます。リモートハラスメントは、パワハラとセクハラに分類でき、それぞれに異なる背景があります。まず前者について、パワハラ防止法(労働施策総合推進法)に照らして考えてみましょう。
同法ではパワハラを①同じ職場で働く者に対して②職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に③業務上、必要かつ相当な範囲を超えた言動により④労働者の就業環境を害すること、と定義しています。リモートワークは働いている場所が職場ではないため、①に該当しないと指摘する人もいますが、職場の定義は「労働者が働く場所」を指すので、自宅も職場と認められます。例を挙げると、「自宅で働くなら残業代はいらないだろう」とか「仕事が遅いから、自宅の通信回線速度を速くしろ」といった言葉は、リモートパワハラに当てはまります。
次に、リモートセクハラは、セクハラ指針に照らし合わせて考えます。すなわちセクハラとは①同じ職場で働くものに対して②相手の意に反する性的な言動を行ったり、性的な行為を強要することで③労働者の就業環境を害することを指します。例えば、ウェブでの打ち合わせの最中で「部屋の中、もっと見せてよ」とか「部屋着に着替えてみせて」とか、性的な事柄を連想させる発言が繰り返されるような状況です。
では、リモートハラスメントを防止するには、どのような対策が有効でしょうか。
何よりもまず、ハラスメントにまつわる法律の内容をしっかりと理解することが大切です。2020年6月にパワハラ防止法が施行され、パワハラだけでなく、セクハラやマタニティーハラスメント(マタハラ)についても指針が一部改正されました(中小企業への適用は22年4月1日)。聞きかじりの知識ではなく、要点を押さえておけば、無自覚なハラスメントを抑止できるはずです。
また、リモートワークの運用ルールを明確に定めておくことも大事です。管理職の社員から「打ち合わせ時、部下に『ウェブカメラをオンにして』と依頼するのはハラスメントになりますか」と質問されるケースが増えています。運用ルールが決められていれば、こうした疑問は湧かないはずです。ウェブカメラをオンにするのかも含めて、朝礼や会議時のルールを明文化しておくとよいでしょう。
そもそも、管理職側が不安になるのは、部下が仕事をしているかどうか分からないことに起因する場合が多いものです。ITツールなどを活用し、仕事の進捗(しんちょく)を把握できる体制に改めることも有効です。ハラスメントは職場環境を害し、社員のやる気を削ぐ行為にほかなりません。誰もが加害者になる可能性を自覚し、ハラスメント対策を周知徹底するようにしてください。