コロナ禍で業績が落ち込んでいます。雇用調整助成金を活用したいのですが、要件が緩和されるなど、内容が変わったと聞いています。詳細を教えてください。(機械部品製造業)

 新型コロナウイルス感染症を原因とする企業収益の悪化・事業縮小により一時的に休業・教育訓練・出向等を行い、休業者に休業手当等を支給する雇用保険適用事業主は、2020年4月1日から6月30日まで〝感染拡大防止〟のため緊急対応期間としてさまざまな特例によりさらに要件が緩和されている雇用調整助成金の活用を積極的に考えてみてください。

 雇用調整助成金の活用にあたりまず確認すべきことは、売り上げが計画届提出日の前月(単月)の対前年同月比5%(通常は前3カ月間で前年同月比10%)低下している(会社設立1年未満の場合は2019年12月と比較)かどうかです。その場合、休業させる対象被保険者がいる場合は早急に休業実施計画届を作成してください。あわせて休業計画についての労使協定(個別の委任状が不要)、売上高の減少を証明する書類(簡易な書類で可)、事業所の状況に関する書類(既存の労働者・役員名簿のみ)の提出が必要となります。

 通常は事前に休業等の計画届等を提出しますが、2020年1月24日以降に休業等を開始した場合6月30日までは事後の提出でも認められます。通常の事前提出では計画届提出・実績報告・申請そして受給までかなり時間を要しますが、今回はすでに行われた休業実績に基づいて計画届を作成しての申請可能となり、受給までの期間が短縮されます。

 休業の要件は、所定労働日の全1日にわたる休業または全員短時間一斉休業が原則ですが、売上が低下した店舗のみ、あるいは製造ラインごとなど、独立した部門ごとの短時間一斉休業においても認められます。

 助成率については、5分の4(大企業3分の2)、解雇等を行わない場合は10分の9(大企業4分の3)となります。さらに6カ月未満の雇用保険被保険者は対象外でしたが期間要件を撤廃、雇用保険被保険者以外のパート・学生アルバイトも対象になります。

 また休業開始1年目は100日、その後1年間のクーリングオフ期間を経て3年目から前回休業しなかった残日数とあわせて3年間で150日が受給可能限度日数と1なりますが、1年間のクーリングオフ期間要件を撤廃、緊急対応期間は別枠で受給日数にカウントできます。その他通常では最近3カ月の雇用保険被保険者数等が対前年比で増加している場合は対象外となりますが、その場合でも受給対象となり、支給対象休業等から時間外労働等の時間を相殺して支給する残業相殺制度も当面停止になります。

 雇用調整助成金の支給金額は対象労働者1人あたり1日8330円が上限となります。前年度の雇用保険料申告額を基礎として計算されるので休業手当と一致するものではありませんが、休業手当を補填する助成金となります。

 緊急事態宣言が発令され収束が見えない状況下で、記載事項5割削減、大幅な簡略化、添付書類削減、既存書類での申請手続の負担軽減化がなされました。これを、企業の存続・雇用の維持に向けて雇用調整助成金の積極的な活用をうながすメッセージと捉えてこの未曾有の危機的状況を乗り切っていただきたいと思います。

掲載:『戦略経営者』2020年5月号