創業半世紀、造園業者としてひたすらその業務を研さんしてきた安芸グリーン企画は、信念の会社でもある。谷平英俊会長、英紀社長のリーダーシップのもと、小さな仕事への丁寧な対応を品質の高さへとつなげてきた。その経営戦略の本質について、TKCシステムの活用と併せて聞いた。
──創業の経緯は?
谷平英俊会長(以下会長) 地元の工業高校を卒業後、弱電業界で2年サラリーマン生活を送り、1965年に独立しました。父が苗木の生産を手掛けていたのと、3人の兄がすでに造園業を営んでいたことで、自然とこの道へと飛び込んだ感じですね。ただ、独立心旺盛だったので、兄たちの会社にはあえて入りませんでした。
小さな仕事を丁寧に
──当初はご苦労されたでしょう。
谷平英俊会長
会長 前職で知り合った方々からの紹介案件を丁寧にこなしつつ、近隣の団地を営業してまわったりしながら、一軒一軒、顧客を増やしていきました。休みは盆暮れだけ。日曜祭日もありません。とにかく必死でしたね。「儲(もう)かる」の「儲」という字を分解すると「信者」となります。一人ひとりお客さまに真心をこめて接し、信者を増やしていくことがビジネス成功の要諦だと、当時から考えていました。
──70年代に入って飛躍されます。
会長 71年に広島県知事登録業者となり、公園の植樹や街路樹の剪定(せんてい)など公共工事も請け負うようになりました。74年に兄たち2人と新会社「安芸緑化建設」を設立。従業員約20名を擁して、官公庁への営業活動を活発化。85年に分家する形で安芸グリーン企画を立ち上げました。当時、日本は高度経済成長の真っただ中。その後も、アジア競技大会が広島で開かれた94年くらいまでは右肩上がりが続きました。当然、当社の業容も公共工事の方へウエートが傾いていきました。しかし、私は常にそこが気がかりでしたね。
特別養護老人ホームの坪庭
──と言うと?
会長 個人のお客さまの扱いが粗末になっているのではないかとの思いです。私は、創業時の精神を忘れたくありませんでしたから、個人のお客さまからの注文も可能な限りしっかりとこなすよう心がけていました。公共事業ばかりに力を入れ、規模を追求した同業他社もありましたが、私はそれを潔しとしませんでした。
──しかし、その後、公共事業はシュリンクしていきます。
会長 当時の小さな仕事も丁寧にこなす姿勢が、現在の当社を支えているといっても過言ではありません。個人のお客さまとの信頼関係をつなぎとめていたおかげで、公共工事が減っていく市場変化に無理なく対応できたのです。今では、公共工事は全体の2割、あとの8割が個人を含めた民間の仕事となっています。
──会社としての強みは?
谷平英紀社長
会長 図面上だけの仕事をただこなすだけなら誰にでもできます。当社の従業員はお客さまの要望を聞き取りながら、プロとして「こうしたらもっと良くなります」などと提案する姿勢を大切にしています。売り上げや利益も大事ですが、優れた仕事でお客さまに「感動」してもらうことが、われわれの最終的な目的です。そのための技術的な研さんを日々行ってきました。
──技術研さんという意味でいえば、社員の方の資格取得状況がすごいですね。
谷平英紀社長(以下社長) 造園施工管理技士、土木施工管理技士、造園技能士、街路樹剪定士など、全員が何らかの資格を持っています。のべにすると34名(社員9名)が資格を所持している計算になります。職種は関係ありません。総務の責任者である天津(あまつ)も自らすすんで造園施工管理技士1級の資格を取得しました。
『PXまいポータル』でマイナンバーを万全管理
──天津さんは財務管理業務も担当されているとか。
天津史朗グループリーダー
天津 税理士法人安部事務所の指導のもと、TKCの建設業用会計データベース『DAIC2』と戦略給与情報システム『PX2』を使って管理しています。
──現場別に管理されているとお聞きしました。
天津 現在のような繁忙期には4、5カ所の現場を抱えるので、それぞれの損益管理は重要です。『DAIC2』では、現場別に実行予算と実際の経費を打ち込みながら、進捗(しんちょく)状況を把握。毎月、安部事務所の藤本さん(税理士法人安部事務所)に監査に来ていただいて問題点があれば、それをあぶりだします。
社長 以前、お願いしていた会計事務所では、リアルタイムの業績が分かりませんでした。それが、安部事務所になって様変わりし、常に業績を把握しながら経営できるようになりました。逆に、それまでは「なんて恐ろしいことをしていたのだろう」と……。
──『PX2』ではオプションの『PXまいポータル』を導入されているそうですが、狙いは?
天津 マイナンバーの管理に不安を覚えていた2015年の秋頃、藤本さんに相談すると「『PXまいポータル』というクラウド型のサービスがあるよ」と……。当時はとにかくマイナンバーの流出が怖かったのです。
藤本孝文監査担当
藤本 相談を受けて、説明にあがりました。TKCのデータセンター(TISC)の写真をお見せしながら、24時間365日正社員による監視の万全なデータセキュリティー環境でマイナンバーが管理されることをご説明しました。
天津 その年の暮れの年末調整の資料収集時に、マイナンバーを含む扶養控除申請書を『PXまいポータル』に直接入力してもらい、本人確認資料の画像データを添付してTISCに送付しました。これで肩の荷が下りました。当社のなかにマイナンバーが保存されることが一切ないので、流出の危険もゼロです。
安部知格顧問税理士 社内にマイナンバーを保管することで、紙で保管した場合は資料を入れたキャビネットの鍵は誰が管理するのか、あるいはパソコンのなかのマイナンバーのデータをどう管理するのかなど、詳細なチェックが必要になります。また、従業員や外部侵入者の盗用を防ぐような施策も求められます。
天津 そうです。そのような余計な神経を使わなくてすむのはとてもありがたいですね。
──『PXまいポータル』には、給与明細書や源泉徴収票をウェブで配信する機能もありますが。
屋上緑化
天津 存じ上げています。私個人としては、使いたい気持ちを抑えきれません(笑)。明細の袋詰めの手間が省けますし、源泉徴収票を各人が自由に閲覧できるのも便利です。しかし、当社には、トップから従業員に給与明細をねぎらいの言葉とともに手渡しするという家族的な文化があります。これは、社内コミュニケーションの一環でもあり、大事にしたいという思いも一方であります。
社長 私は典型的なアナログ人間で、IT関係は天津を信頼して全面的に任せています。また、システムは、安部事務所とタッグを組んで進めていることなので間違いはないと思っています。このウェブ配信サービスも、メリット・デメリットをきちんと分析して、導入するかどうかを検討していきたいですね。
安部知格税理士
──今後は?
会長 環境がますます重視される時代となり、「緑」への需要は多様化していくでしょう。そこに対応すべく屋上緑化や壁面緑化など、伝統的な造園以外の分野にも積極的に取り組んでいきます。繰り返すようですが、目的はお客さまの感動を呼び起こすことです。
安部税理士 会長の〝利他精神〟にはわれわれも学ぶところが大きいですね。過去にこのあたり一帯の開発案件をまとめるなど、地域のリーダー的存在として信頼されているし、従業員への姿勢もすばらしい。このような会長だからこそ、いまの社風があるし、その社風を社長がしっかりと受け継がれようとしています。
社長 13年前、30代で社長になり、以来、単年度赤字だけは絶対に出さないよう頑張ってきました。ようやく、最近、周囲から社長として認められるようになってきたかなと感じています。当面の目標は借金ゼロ。それと、安部先生のおっしゃる通り、会長の理想主義をしっかり受け継ぐことも大事だと考えています。そして、会長の掲げる「感動・奉仕」「夢・挑戦・歓喜」「真心と技術で大樹の年輪を育む」などの数々のスローガンを形にしていきたいですね。
(本誌・高根文隆)
名称 | 株式会社安芸グリーン企画 |
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創業 | 1965年4月 |
所在地 | 広島県広島市安佐南区大塚西4丁目8番31号 |
売上高 | 1億4,000万円 |
社員数 | 9名 |
URL | http://www.aki-green.com/ |
顧問税理士 | 代表社員税理士 安部知格 税理士法人安部事務所 広島県広島市西区大宮1-27-4 URL:https://www.tkcnf.com/zeirishi-abe |