1年契約を長年更新してきたパート従業員から「無期契約にしてほしい」と要望がありました。どのように対応すればよいでしょうか。(印刷業)

 有期雇用する従業員(パート・アルバイトや契約社員などの名称を問わず、雇用期間が定められた従業員)との契約更新を重ねて通算5年を超えることになった場合、その有期従業員は会社に無期転換を申し込む権利が発生します。例えば、1年契約の更新を重ねて6年目になったパート従業員は、次の契約からは1年契約ではなく期間の定めのない契約とするように会社に申し込むことができるのです。会社はこれを拒むことができず、本人の申し込みのみで無期転換が成立します。

 これは2013年4月1日施行の改正労働契約法により新設されたルールで、施行日から5年経過した18年あたりから無期転換申し込み権への対応が必要になってきました。しかし実はこのルールは従来からあった判例法理を立法化したもので、法改正以前から、有期雇用契約を長期間にわたり反復更新すると、実質的に期間の定めのない契約とみなされていました。有期契約の形式だけで期間満了の契約終了が自由にできるわけではなかったのです。その意味で、この法改正は従来からあったルールを明確化したにすぎません。

 無期転換申し込み権によって無期転換が行われた場合、変更されるのは期間の定めだけです。労働時間や給与などの労働条件は従前のままで、無期転換イコール正社員化ではないことに注意が必要です。なお、通算5年のカウントについては、契約がない一定期間が空くとクーリングとなります。例えば、6カ月契約の後3カ月以上の無契約期間を経て出戻りを繰り返すようなケース(例えば季節労働者など)では、無期転換申し込み権は発生しません(『戦略経営者』2020年1月号P34図参照)。

転換後の身分は明確に

 さて、ご質問の当該パート従業員からの「無期契約にしてほしい」という要望は、契約期間が通算5年を超えていれば法律の定めに従って受け入れなければなりませんが、給与その他の労働条件を変更する義務はありませんので、会社として悩む要素は少ないでしょう。5年超も更新してきたのですから会社にとって恒常的に必要な戦力だと思います。一時的に必要であれば有期雇用で良いと思いますが、恒常的な戦力であれば無期雇用とするのが自然です。

 留意点としては、無期転換後の身分の明確化が挙げられます。パートのまま無期雇用か、条件によっては正社員化するのか、あるいは短時間正社員制度を設けるなどの工夫も考えられます。

 就業規則のチェックも必要です。有期雇用はそもそも定年の概念自体が成り立ちませんが、無期転換者には定年制度を新たに考える必要があるでしょう。ちなみに定年後再雇用者を有期雇用した場合に無期転換ルールを適用しないためには、労働局の認定(第二種計画認定)を受ける必要があります。

 有期従業員が恒常的な戦力であり優秀であれば、無期転換申し込み権が発生する前に給与を5%以上アップして正社員化などを図ると、助成金(キャリアアップ助成金)を受給できることもあります。

掲載:『戦略経営者』2020年1月号