働き方改革の一環で、自転車通勤制度の導入を検討しています。どんな点に留意し、ルールを策定すべきでしょうか。(広告制作業)

 自転車通勤は環境にやさしく、生産性の向上、通勤時間の短縮、健康増進等のメリットがあり、導入を希望する企業が近年増えています。自転車通勤制度のルール策定にあたり、確認しておきたい項目を説明します。

〇対象者の決定
 自転車通勤による事故やトラブルを防ぐため、自転車通勤の対象者を定める際、従業員の健康状態等を考慮することが大切です。

〇自転車の安全基準
 安全装備が正しく装着されているかを確認し、点検・整備を定期的に行う旨を定める必要があります。例えば「TS(Traffic Safety)マーク」の取得を義務づけるのも有効です。このマークは、自転車安全整備士が点検確認した普通自転車に付与される証明書で、青色(第1種)と赤色(第2種)の2種類があります。
 傷害保険と賠償責任補償保険、被害者見舞金(赤色のみ)が付いており保険の有効期間は1年間ですが、年1回の点検・整備は行いたいものです。また、都道府県公安委員会が指定する団体での防犯登録も行うことが望ましいです。

〇通勤経路の確認
 災害発生時の対応や、通勤距離に応じた通勤手当の支給等に備えて、通勤経路と距離の合理性については会社に事前に承認を得るものとします。また、自転車通勤の場合、用務場所への直行直帰や私事目的での立ち寄り等も想定されますが、目的外使用については承認制とすることなどを検討します。

〇異なる交通手段の利用
 天候や通勤時の交通事情等、当日の状況によって、自転車以外の合理的な交通手段での通勤を認めることもお勧めします。なお、ふだん利用していない通勤経路であっても、合理的な交通手段であれば、通勤災害も認められます。

〇通勤手当の支給
 通勤手当の支給は義務ではありませんが、駐輪場代や自転車損害賠償責任保険、メンテナンス費等が発生することを鑑み、自転車通勤手当の支給を検討してもよいでしょう。駐輪場代は、月額1500~3000円が一般的です。

〇事故時の対応
 自転車通勤の途中で交通事故を起こした場合、人命第一を基本としながら、会社への報告を忘れずに行います。手順を定めたマニュアルを作成し従業員に周知します。

〇自転車損害賠償責任保険等への加入
 通勤時に従業員が他人を死傷させた場合や物損があった場合、対人・対物賠償責任は従業員が負いますが、業務中の事故と認められた場合は使用者責任が問われる可能性もあります。そのため、従業員、会社側ともに自転車損害賠償責任保険等へ加入することが求められます。賠償額は1億円以上が望ましいでしょう。

〇駐輪場の確保、マナーの順守
 自転車の交通および利用マナーを順守し、放置自転車を発生させないよう駐輪場を確保したうえ、正しく利用することを徹底します。

〇許可申請の明確化
 自転車通勤を希望する従業員に、申請方法と許可までの流れについて明確にしておく必要があります。申請に際しては、自転車保険の加入を確認できる証明書類もあわせて提出するものとします。

掲載:『戦略経営者』2019年11月号