Win cube株式会社

左端は野間恵美子専務

自動車業界に吹く風向きを正確に捉え、〝選択と集中〟で成長を続けるWin cube(ウィン キューブ)。緻密な計数管理のもと、「車検」と「販売」という両輪をうまくリンクさせ、さらなる拡大を目指している。野間英毅社長、野間恵美子専務、そして古川直樹顧問税理士に話を聞いた。

──創業の経緯は?

野間 叔父の営む自動車整備工場でのアルバイトを経て24歳で独立。30歳の時に、その叔父の工場の名前と従業員を引き継ぐ形で拡大しました。当初は板金塗装を主力にしていましたが、徐々に車検に特化。さらに販売(新車・中古車)にも進出し、いまでは車検と販売で業容の90%以上を占めています。

車検と販売に特化して右肩上がりの業績を堅持

──なぜ車検に特化されたのでしょうか?

野間英毅社長

野間英毅社長

野間 自動車の性能向上や道路の整備などで、間違いなく事故は減少しています。今後もこの傾向は変わらないでしょう。それを見越しての判断です。板金塗装はもともと利ざやの薄い業態でした。しかも、当社は20人程度の限られたスタッフで回しているので、利益の出る業態を選択し、そこに集中する必要がある。ちなみに、一時期手掛けていたロードサービスからも、数年前に手を引いています。

──業績は右肩上がりですね。

野間 2003年に集客力のある車検大手のフランチャイジーとなり、当時は年間300台程度だった車検台数が、いまでは2300台に跳ね上がりました。それと「販売」への進出もこのところの好業績を支えています。主力はリース販売で、しかも軽自動車に特化しています。なぜなら普通乗用車は経年で値段の下がり幅が大きくリスクが高いからです。リース販売では、ユーザーが購入する際、車検は当社で行う契約を結びます。つまり、年間約250台の販売分が、後で確実に車検の売り上げにつながるのです。通常の販売に比べて、いわゆる〝取りこぼし〟がない。このため、販売→車検という良いサイクルができあがりつつあり、売り上げ自体は、3年前の3倍近くに増加しています。

──全日本ロータス同友会(ロータスクラブ(※))との関係は?

野間 単純に、叔父が加盟していたのでそれを引き継いだだけです。とはいえ、ロータスに入ってなかったら当社はとっくになかったと思います。

──なぜでしょう。

野間 「経営者とは何たるか」をロータスで教わりました。理念・哲学のつくり方や計数管理、マーケティングなど、さまざまなセミナーが用意されていて、私もずいぶん利用してきました。

──いまでは九州ブロックの副ブロック長をつとめておられます。

野間 今春、就任しました。それまでは同じく九州ブロックの経営委員会委員長でした。
 ロータスは人間関係がフランクなので「ちょっと決算書を見せてくれ」などと頼める仲間もいますし、また「1週間そちらで勉強させてほしい」と言えば「いいよ」と返ってくる。そのような人間関係のなかで、少しずつ経営が分かってきたという気がします。ちなみに、当社は昨年、会社名を葛原自動車から、近江商人の〝三方良し〟を意味するWin cube(ウィン キューブ)に変えたのですが、その名付け親も「ロータスアカデミー経営者コース」の先輩です。

──ロータスメンバーとの競争意識は?

野間 全国一斉に行われるキャンペーンなどでは、やはり競争意識が芽生えますね。それが頑張るモチベーションになっています。とはいえ、ペナルティーもノルマもないんですよ。あくまでボランタリーな組織で、厳しい締め付けもありません。「勉強のロータス」といわれるように、メンバーが自ら勉強し、助け合いながら経営者として研鑽(けんさん)していくことが、ロータスの存在意義なのです。

Win cube株式会社

※全日本ロータス同友会
自動車整備業者の組織として1975年1月に設立。自動車整備業界の近代化、社会的地位の向上、さらには法定需要依存体質からの脱皮など、新しい業界づくりの理想を掲げてスタートし、1社ではできないことも全国の同友(約1600社)が結束することで成長してきた

業務と会計のシステムを連携して業務を効率化

──古川直樹(税理士)先生とのお付き合いはいつから?

野間 私がTKCを知ったのは、ロータスとTKCが提携した2017年の春でした。その後、TKCの担当者に、古川先生をご紹介いただき、まずは「早期経営改善計画(※)」の策定をご支援いただきました。

──顧問税理士は別におられたんですよね。

古川直樹顧問税理士

古川直樹顧問税理士

野間 はい。でも頻繁にアドバイスをいただくという関係性ではありませんでした。一方、古川先生は、早期経営改善計画を銀行に提出するとき一緒についてきてくれるなど懇切丁寧で、「そこまでしてくれるんだ」という感じでしたね。銀行の融資担当者も「あの先生は良いですよ」と太鼓判を押してくれたほどです。そんなこんなで、昨年の秋に顧問税理士への就任をお願いしました。

古川 野間社長は近い将来、もっと広いところに会社を移転するという展望を持っておられるので、今後まとまった資金が必要になります。そのため、銀行との付き合いを円滑にしておかなければなりません。早期経営改善計画の策定を通して、そこをしっかりお手伝いしたいという気持ちでした。

──システムも市販のものからTKC会計・給与パッケージ(『FX4クラウド』『PX2』など)に変えられました。

野間恵美子専務 これまでも、私が実績を部門別に集計し、月次決算を行っていましたが、業務システムの数字を拾ってきて打ち直すという面倒な作業が必要でした。しかし、『FX4クラウド』にすれば業務システムとのデータ連携ができ、その上、これまで自力で作成していた「予算表」(部門別に予算と実績が一覧できる帳表)も「マネジメントレポート設計ツール」という機能を使えば自動的にできあがるということを聞き、ぜひ導入してほしいと……。

──部門別管理はどのように?

恵美子専務 車検、販売(リース)、販売(一般)、保険、板金塗装の5部門で管理しています。

社長 部門別に業績を管理できていないと戦略的な経営はできません。どの部門にお金を投入すべきなのかが分からないからです。このことをロータスの会合などでも言ったりするのですが、多くの人があまりぴんときていないようですね。

古川 それと、自動車関連の会社は業種的にたくさんの勘定科目が絡み、複雑な仕訳作業が必要になります。税や保険関係もそうですが、部品の種類、工賃など、たくさんの要素で成り立っているので、業務システムから数字を拾ってきてそれを仕訳に落とし込むのは一苦労なんです。その意味でも、『FX4クラウド』を導入して業務と会計のシステムを連動させたことは、効率化という面でとても大きかったと思います。

野間 そもそも、年商規模が大きくなり、専務への負担が増加していたという背景がありました。そこで、新たに2人採用して「総務部」とし、専務はフロント業務に集中してもらう体制をつくりました。

──新人の育成は大変では?

恵美子専務 その点は、古川事務所に支援していただいているので助かっています。毎月、会社に来て経理処理の内容を確認してくれますし、分からないことがあれば電話やメールで頻繁に連絡を取り合えるので、とても心強いです。

──今後はいかがでしょう。

野間 先ほど話に出ましたが、もっと広いところに移転してお客さまの利便性を高めたいというのが一つ。それから、未曽有の人手不足への対応も課題です。そのため、海外に出かけて、人材の獲得方法を模索しています。いま、カンボジアに研修センターを建設する計画を進めていますが、これは研修所というフィルターを通すことで、ある程度知識と意欲のある〝良い人〟に来てもらいたいとの考えからです。
 それともう一つ。私は今年いっぱいで会長に退き、社長職を現在の部長に譲ります。自動車業界は変化のスピードが速いので、新しい発想のできる若い人が経営の舵(かじ)を取るべきだし、人は若いうちに重責を担わせなければ育ちません。社長交代は、当社が今後長く継続していくために必要不可欠の施策だと考えています。

※早期経営改善計画策定支援
資金繰り管理や採算管理など基本的な経営改善計画を作成し、早期の経営改善に取り組みたい中小企業・小規模事業者を税理士など経営革新等支援機関によって支援する国の事業

(本誌・高根文隆)

会社概要
名称 Wincube株式会社
創業 1998年4月
所在地 福岡県北九州市小倉南区中曽根新町1-5
売上高 約6億円
URL https://kobac-kokura-m01.com/
顧問税理士 古川直樹税理士事務所
所長 古川直樹
福岡県北九州市八幡西区筒井町12-21
URL:https://www.furukawa-tax.com/

掲載:『戦略経営者』2019年8月号