最近部品類の金型の保管量が増加し、手間とコストがかかり負担が増大しています。親事業者にその削減の相談をしたいのですが、良い方法はありますか。(電気機械部品)

 日本の製造業では、親事業者の製品改廃に伴い、下請け事業者に多数の型(金型、木型等)が発生し、親事業者が型を無償で保管・管理させる、廃棄要請に応じない、などの「不適正」な取引慣行が存在しています。しかし現在、わが国の工業製品が海外で競争力を確保するために、型の管理について親事業者・下請け事業者双方の取引適正化を行い、付加価値の向上(管理コスト削減)を図ることが求められています。

 そこで政府は2016年9月、親事業者と下請け事業者双方の適正取引や付加価値向上、取引環境の改善などを目的に「未来志向型の取引慣行に向けて」と名付けた方針を発表しました。この方針に基づき政府は、型管理について業界団体に対し改善の指導を強化しています。

自動車・素形材業界で先行

 型管理適正化の取り組みについて、2017年7月に政府は「未来に向けた『型管理・三つの行動』」というアクションプランを示しました。このプランは、自動車・素形材業界を先行モデルとしてスタートさせ、その後産業界挙げて「自主行動計画」を策定し、型管理の適正化に取り組むというものです。

 それでは「型管理、三つの行動」について詳しく見ていきましょう。方針1は「管理対象の削減」で、具体的には不要な型を削減する行動を指します。方針2は「管理の適正化」で、今後保管する型について必要な管理費用の支払いや保管期間などを当事者間で取り決めをする行動を意味します。方針3は親事業者、下請け事業者双方が社内で型の取り扱いのルールを明文化し、マニュアル等を整備する行動です。

方針1 管理対象の削減
 親事業者は、廃番通知対象の部品範囲について一斉に点検を行い、今後調達が不要な部品の品番を抽出し下請け事業者に通知します。下請け事業者はこの通知に伴い型の廃棄を進めます。下請け事業者は、自社で管理・保管する型の一斉点検を行い、親事業者に対し廃番や引き上げなどの対象になるか確認します。親事業者はすみやかに検討し、回答を行います。

方針2 型管理の適正化
 親事業者、下請け事業者は協議・合意のもと、保管費用、保管期間、返却廃棄方法等について取り決めをし、ルール化します。この際、補給品について量産時単価が据え置かれている場合や、コストに見合っていない場合、単価見直し協議を行います。同時に、親事業者は型管理の問い合わせ窓口等の明示を徹底します。

方針3 型管理の自立化
 親事業者は、下請け事業者の要望・意見を踏まえ自社ルールを明文化するとともに、順次改善を進めていきます。この際、廃番や引き上げ等の基準について下請け事業者と情報共有を行います。下請け事業者は、型や補給品管理に必要なマニュアル等の作成に着手し事務フローを明確にします。

 当初は自動車・素形材業界からスタートした自主行動計画ですが、現在21の業界団体が自主行動計画を作成し、幅広い分野で積極的な活動が展開されるようになってきました。型の管理の見直しや未来志向の型管理は、産業界の大きなうねりになっているのです。ご質問の「良い方法」ですが、まずは親事業者との交渉を思い切ってスタートされることをお勧めします。

掲載:『戦略経営者』2019年4月号