ECサイトで自社製品を販売しています。近年は中国からの発注が増加していますが、電子商取引のルールを定めた中国電子商取引法とはどのような法律なのでしょうか。(家具小売業)
中国電子商取引法は、2018年8月31日に公布され、19年1月1日に施行されます。中国において初めて制定された電子商取引に関する包括的な法律で、13年の立法開始以降、数回にわたるパブリックコメントによる修正等を経て、公布までに5年の歳月を要しました。同法の制定に携わった全国人民代表大会(日本の国会に相当)の責任者によると、電子商取引は範囲が広く規模も大きいため、立法過程で慎重を期したとのことです。
18年4月に公表された「電子商取引に関する市場調査報告」(経済産業省)によれば、17年のBtoC越境電子商取引金額は、中国が1兆1153億ドル(前年比35.1%増)で、2位の米国(4549億ドル同16.3%増)を大幅に上回っています。しかし、中国の電子商取引では、ニセモノや粗悪品の販売、脱税や知的財産権侵害が横行しており、同法は合法的な権益保障、取引の規範化、市場秩序の維持、電子商取引の健全な発展を目的として制定されました。
同法ではまず、「電子商取引」、「電子商取引経営者」、「電子商取引プラットフォーム経営者」(以下プラットフォーム経営者)等、用語の定義が明確にされました。電子商取引とは、インターネット等の情報ネットワークを通じた商品販売とサービス提供を指しますが、金融商品、ニュース、音声・映像ビデオ番組、出版等のコンテンツサービスは含まれません。
責任・罰則規定が明記
電子商取引経営者は法人・個人を問わず、登記と経営に関する行政許可を必要とするほか、納税義務も明記されています。また、各種義務違反に対して責任、罰則規定も設けられています。たとえば、消費者の嗜好(しこう)に基づき商品を宣伝する場合は、嗜好に含まれない商品の広告も表示しなければなりません。加えて、抱き合わせ販売を行ったり、消費者から預かった保証金の返還請求に、不合理な条件を付けたりすることもできません。これらに違反すると5~20万元(悪質な場合は20~50万元)の罰金が科されます。
ニセモノや粗悪品を販売するなど消費者の合法的権益を侵害した場合、プラットフォーム経営者は電子商取引経営者と共に連帯責任を負わされ、5~50万元(悪質な場合は50~200万元)の罰金が科されます。
電子商取引は、従来「微商」や「代購」と呼ばれる事業者や個人が担っている場合も少なくありませんでした。微商とは、「微信(ウェイシン)」(中国版SNS)を利用してコストを抑えつつ電子商取引を行う事業者を指します。また代購とは、代理購入のことですが、日本などの外国で買い付けた商品を転売する個人等が該当します。
微商や代購は、ニセモノや粗悪品の販売、脱税や知的財産権侵害等を引き起こすケースも多く、同法施行後は淘汰(とうた)が進むでしょう。とくに代購は、11月28日公布の関連通達で個人が購入した商品の転売禁止規定が明記されたことにより急減すると考えられます。
日本企業は同法の施行により、電子商取引市場の健全化が図られ、その恩恵を享受できる可能性があります。従来、中国の大手プラットフォーム経営者の中には、他のプラットフォーム経営者との取引を制限する場合もあったようですが、同法では、プラットフォーム経営者が不合理な制限や条件を加えたりするのを禁じているため、取引増が期待されます。