特許料の減免など、改正特許法には中小企業にとってメリットが少なからずあると聞きました。その詳細を教えてください。(デザイン業)

 特許取得に際して特許庁に支払う費用は、最初の申請時だけでなく、審査を請求したり、特許権を維持する際にも発生します。2018年の特許法改正により、中小企業は知財活用をより安価かつ手軽に行うことができるようになりました。

 まず費用面です。これまで特許費用の減免制度を活用できるのは実質赤字であったり、研究開発を行っている企業に限られました。ところが今回の改正でこれらの制限が撤廃され、いずれの中小企業も特許費用の減免を受けられるようになります。

 この減免制度により、10年間で40万円程度要していた特許庁への納付費用が、特許庁に審査を請求する際の費用や、権利維持費用も含め20万円程度に軽減されます。さらに中小企業が国際特許出願制度を利用して、各国に特許出願する際の納付費用も、現行の20万円程度から10万円程度に軽減されます。

 使い勝手の面では、発表例外措置が延長されます。発明やデザインの内容を発表してしまうと、特許権や意匠権は得られないことになっています。「発明等の内容を国民に広く公開する代わりに、特許権や意匠権を一定期間与えて発明等を保護する」というのが特許法や意匠法の基本的な考え方です。

 とはいえ、特許庁への権利申請前に発明等の内容を発表したいニーズもあることから、発明等の発表から半年以内に特許庁に権利申請の手続きをすれば、発表の行為により審査で不利に扱わない救済措置がありました。改正により、この救済措置の期間が半年から1年に延長されます。発明やデザインの内容を発表した場合でも、1年以内であれば特許権や意匠権を取得することができるようになりました。

 ただしこの救済措置は、自分の発明等が公開されることに対する措置です。他人が独立して発明、出願した場合は、先に特許庁に手続きをした人が権利を取得します。そのため、救済措置に頼ることなく、いち早く特許庁に出願手続きを完了することが重要です。

悪意ある出願を排除

 また、商標の継続出願への制限が課されます。出願内容の一部に登録が認められない理由があった場合に、拒絶理由のない部分のみを新たに分割出願し、その部分のみを先に権利化する場合があります。ただ、この制度により、特定の商標について出願状態をいつまでも保つことができます。

 例えば、特許庁に対して出願料金を払わずに、商標登録出願をします。この出願が却下されそうになったら新たな分割出願を、出願料金を払わずに行います。分割出願が却下されそうになったら、また新たな分割出願を……という具合に、延々と最初の出願を継続することが実務上可能でした。

 これでは他人が無断でこちらの商標を出願しつづけると、その商標についての権利が得られない状態が続いてしまうことになります。他人の権利取得をブロックし、解決金を支払うなら権利を譲渡すると公言してはばからない業者も現れるようになりました。今回の改正により、出願料金を納付せずに出願状態を維持することはできなくなります。

 なお、商標権取得の条件として、登録が認められる商標は「自己の業務に使用するもの」との規定があります。他人の権利取得を妨害するだけの出願登録が認められない点は従来と変わりません。

 改正特許法の施行予定ですが、発表例外措置の期間延長、商標分割の条件制限については施行済みです。費用減免制度は、19年5月末までに施行される予定になっています。

掲載:『戦略経営者』2019年1月号