今年末で景気拡大期間が戦後最長に並ぶなか、当社も年末賞与を支給したいと考えています。中小企業の相場を教えてください。(運輸業)

 今年末の賞与は夏季に続き、近年としては高めの伸びとなりそうです。賞与を押し上げる要因は三つあげられます。

 第1に、好調な企業収益です。

 財務省「法人企業統計調査」によると、2018年4~6月期の全産業(資本金1000万円以上、金融機関を除く)の経常利益は、前年比+17.9%の増益となりました。販売価格の引き上げが実現するなかで、売り上げが増加したほか、海外子会社からの配当なども大幅に増えました。損益分岐点比率の低下が続くなど、わが国企業の収益体質は改善し、売上高の拡大が収益に結びつきやすくなっています。

高まる賃金上昇圧力

 第2に、人手不足の深刻化です。

 人口の減少に伴い、労働供給に縮小圧力が強まるという構造要因と、景気回復に伴う労働需要の増加という循環要因の両面から労働需給がひっ迫しています。このため、人材囲い込みの誘因が働きやすい、専門性の高い労働者を中心に賃金上昇圧力が高まっています。

 第3に、正規雇用者の増加です。

 景気回復の初期には、賞与が支給されない非正規雇用者が増えたため、平均賞与額が押し下げられる動きがみられました。しかし、徐々に正規雇用者が増え始めました。とりわけ過去1年間には、平均の38.4万円(今夏季実績)よりも支給水準が高い製造業(同52.0万円)や情報通信業(同69.1万円)の正規雇用者が増えたため、平均賞与額を押し上げる効果が膨らむ見通しです。

 上記の三つは、いずれも賞与に限らない賃金全般の押し上げに作用する要因です。しかし企業には、固定費としての性格が強い所定内給与の引き上げを小幅にとどめ、雇用者への還元は専ら賞与で行う傾向が根強く残っています。このため、今年末の賞与の伸びは、所定内給与より高い前年比+3.3%となる見通しです。

中小企業はやや低め

 以上は、全体的な動きですが、中小企業では平均よりもやや低めとなるでしょう。これは、大企業と中小企業の賞与引き上げのタイミングがずれることが主因であり、基本的には上記の3要因を背景に堅調を維持する見込みです。

 中小企業の賞与は、支給時期直前の収益状況を反映しやすい傾向があります。このため、好業績を反映した2017年度末の賞与は、事業所規模5~100人に限ると、前年比+4%超という高い伸びとなりました。

 一方、大企業では、昨年末の賞与が抑えられる傾向がみられました。大企業では、全体の8割弱の企業が年間の賞与ファンドを夏前に決定する「夏冬方式」とっています。このため、賃金交渉の際に、一昨年のトランプ政権の誕生などで先行き不安が高まった影響が年末賞与にまで下押しに作用したのです。

 逆に今年末は、大企業が前年の低めの水準からの変化となるため、中小企業の伸び率が相対的に低くなる見通しです。

 以上から、今年末の中小企業の賞与の伸び率は、平均は下回るものの、前年比+2~2.5%程度と、近年としては高めの水準になると予想されます。

掲載:『戦略経営者』2018年12月号