欧米の飲食店でプラスチック製ストローを廃止する動きが広がっています。今後日本でも脱プラスチックの機運は高まっていくのでしょうか。(レストラン業)
ことし6月、米マクドナルドは、英国とアイルランドの計1361店舗でプラスチック製ストロー(プラ製ストロー)を廃止し、微生物の働きで自然分解される紙製に切り替えると発表しました。7月には米スターバックスも、世界中の約2万8000店舗すべてで、2020年までにプラ製ストローを廃止すると発表しました。米アメリカン航空、米ウォルトディズニー(日本を除くディズニーランド等)も追随する予定です。
海洋プラスチック汚染は以前から問題視されていましたが、なぜにわかにプラ製ストローに焦点が当たるようになったのでしょうか。それは欧州連合(EU)を中心としてプラスチック製品廃止の機運が盛り上がったからです。英国のメイ首相は1月、42年までにプラスチックごみをゼロにすると宣言しました。同月欧州委員会は、30年までにすべてのプラスチックごみをリサイクルするための政策大綱を発表。5月には、10品目の使い捨てプラスチック製品の使用禁止法案を提出しました。
プラスチックは、どんなに小さくなっても、紙のように分解されません。とりわけ5ミリ以下とされるマイクロプラスチックは回収が不可能とされ、海洋生物が餌と間違えて捕食しているのが実情です。動物だけでなく、人体への影響も懸念されています。有害物質が付着した海洋プラスチックは、プラスチックそのものが有害でなくても、付着した化学物質が人体に悪影響を与えるかもしれません。
日本企業への波及は確実
このマイクロプラスチックを生み出す象徴的なプラ製品がストローです。ストローはリサイクルしづらいため、プラ製ストローの廃止にまず取り組もうということになったわけです。6月の先進7カ国(G7)サミットでも「海洋プラスチック憲章」が首脳会談で採択されました。ただ、日本と米国は憲章への署名を拒否しています。日本政府は埋め立て処理を主とする外国と異なり、プラスチックのリサイクル率、焼却率が高いため、海洋汚染率は低いとの認識を持っています。とはいえ、リサイクル率、焼却率ともに100%ではないので、海洋汚染と無縁ではありません。
ごみを焼却する際に排出される温室効果ガスは、地球温暖化の最大の原因といわれています。プラスチック憲章は、ごみそのものを減らす循環経済とセットになっています。プラスチック憲章に署名するということは、循環経済(ごみを減らし、焼却しないこと)も促進しなければならないので、日本は署名しなかったのです。
翻って日本でも、プラ製ストローやプラスチック廃止の動きが見受けられるようになっています。すかいらーくグループでは、全業態で20年までにプラ製ストローを廃止すると発表。IKEA、ヒルトングループも脱プラスチックを表明しました。日清食品はカップ麺の容器を自然分解される生分解性プラスチックに、2~3年後をめどに順次変更するそうです。プラスチックには低コストというメリットがありますが、環境への負荷は看過できません。日本でも「脱プラスチック」が加速していくのは間違いないでしょう。