今年6月の「働き方改革法案」で成立した「高度プロフェッショナル制度」は、中小企業にも関係してくるのでしょうか。(IT関連)

 平成30年6月、働き方改革法案が成立し、「高度プロフェッショナル制度」いわゆる「高プロ制度」が導入されることになりました。高プロ制度は、労働時間管理になじまない高度専門職の労働者に対して、労働時間管理による賃金ではなく、成果型報酬として支払う制度です。高収入を得ながら、自律的で創造的な働き方が可能になります。

 高プロ制度の対象になるのは、年収1075万円以上で、金融商品ディーラー、研究開発職、アナリスト、コンサルタント等の一定の高度な専門職に従事する労働者で、本人が希望する場合のみです。これらの条件に該当する社員がいるのであれば、高プロ制度は中小企業にも関係してきます。

年間104日以上の休日を

 高プロ制度の導入にあたっては、企業内の労使同数の委員会いわゆる労使委員会で、対象業務、対象労働者、健康確保措置等について5分の4以上の多数の決議が必要となります(加えて本人の同意も必要)。

 高プロ制度の対象となった労働者は、現行の三六協定による労働時間規制の対象から外れて、労働時間管理による時間外・深夜・休日労働の割増賃金の支払いの対象外となります。長時間労働による健康被害の温床となりかねないことから、その実態に合った新たな健康確保のための枠組みの設定が求められます。

 まず、年間104日以上かつ4週4日以上の休日確保を義務化したのに加え、①始業・終業時刻の間の一定時間を確保するインターバル規制と1カ月当たりの深夜業の回数制限②1カ月または3カ月当たりの在社時間等の上限設定③1年につき、2週間連続の休暇取得(希望者は1週間連続休暇を2回取得)④本人の申し出または在社時間が一定時間超えた場合の臨時健康診断の実施など、これらのいずれかの措置を労使委員会で決議するように義務付けられます。

 さらに1カ月以上の在社時間が一定時間を超えた者に対しては、医師による面接指導、それに応じない場合の罰則が設定されており、面接結果に基づいた職務内容の変更や特別休暇付与等の事後措置を講じることが必要となります。

裁量を奪う業務量設定はNG

 また、使用者は高プロ制度に該当する社員に対し、始業・終業時刻や時間外・深夜・休日労働など労働時間に関する指示・業務命令ができなくなり、裁量を奪うような業務量・成果、納期設定は禁止されます。これらは、労働基準監督署の立ち入り調査の対象となります。

 このほか、高プロ制度の適用対象者の対象業務を具体的かつ明確に限定列挙すべきとし、有期労働契約の対象者は契約更新ごとに、1年以上の契約期間または無期契約の対象者は1年ごとに合意内容の確認・更新が義務付けられるといったことも、使用者側に求められます。

 なお、労使委員会における対象業務決議を自動更新とせず、一定の有効期間を設定する方向でも、いま検討が進んでいます。平成31年4月から中小企業も含めて、高プロ制度の導入が可能になりますが、その導入に関しては慎重に検討すべきでしょう。

掲載:『戦略経営者』2018年9月号