厚生労働省による調査で、女性長寿3回連続日本一の市町村となった沖縄県北中城村(きたなかぐすくそん)。中城湾を見下ろす高台に本部を構えるのが、北中城村社会福祉協議会だ。県内の社会福祉協議会の中でも、いち早く新会計基準に移行し、高齢者の権利擁護支援に乗り出すなど、先駆的な取り組みが際立つ。財務状況の把握には『FX4クラウド』を活用。経理担当者の働き方が大きく改善した。

被災地支援で得た知見を防災意識向上に役立てる

──組織の概要を教えてください。

北中城村社会福祉協議会

左から砂川晧平顧問税理士、棚原亮太さん、久高郁枝事務局長、
安慶名秋乃税理士

久高 村の総合社会福祉センター内に本部があり、高齢者福祉事業をはじめ、さまざまな障害者、児童ボランティア活動を行っています。北中城村障害者地域活動支援センター「あざみ」と、老人デイサービスセンター「しおさい」の運営も担っています。
 2017年10月には沖縄県内の町村初となる、権利擁護支援センター「ひまわり」を開設しました。ひまわりでは高齢者、精神障害者に対する日常的金銭管理のお手伝いや、各種書類の預かりサービスを提供しています。

──「ひまわり」を開設したいきさつは?

久高 14年に実施された行政によるニーズ調査で、日常的な金銭管理に支援が必要な方が村内に300名ほどいらっしゃることがわかりました。従来、私たちは日常的金銭管理に関わる独自事業を行っていて、調査結果を受け事業を本格的に開始するにあたり、専門家を交えて協議を重ねてきました。すでに契約を結ばれた方が複数名おり、きめ細かい支援を実施していきたいと考えています。

ボランティア団体パネル(上)、外観(下)

──ボランティア活動が盛んとお聞きしました。

久高 ボランティアの養成講座も随時開催中で、ニーズが特に高まっているのは傾聴ボランティアですね。傾聴とは受容的、共感的態度で相手の話に耳を傾けること。高齢のご家族がいる方たちからの関心が高まっています。
 また、「ふれあいクリーンアップ大作戦」と銘打った地域清掃、美化活動も29回目をむかえた恒例のイベントです。地元の北中城しおさい公苑(こうえん)や熱田漁港周辺で開催していますが、ことし2月の活動には300名以上の方々が参加されました。

──被災地でも活動を実施されているとか。

久高 東北地方の震災を機に、有志職員が沖縄県の社会福祉協議会による被災地災害ボランティアセンター運営支援に加わったのがはじまりです。福島県新地町で、がれきの除去作業や沖縄そばの炊き出しを行ったりしました。「北中城村よりそい隊」として活動を継続中で、先日は熊本県大津町でもボランティア活動を行ってきたばかりです。
 被災地支援を通して防災、減災意識が高まりました。わが村の民生委員児童委員協議会は社会福祉協議会と連携、共同でティッシュやマスクなど身近な物を非常用持ち出し袋に入れ、高齢者や障害者を対象に配布したり、平時から災害に備えるようになりました。ユニークなグッズとして、避難したことを周囲に知らせるための、自宅の玄関先に結ぶ黄色の布も入れてあります。

──4月に労働契約法が改正されましたが、対応はいかがでしょうか。

久高 有期雇用契約を結んでいる職員が7名いますが、契約期限を迎える職員のうち希望者と無期雇用契約を順次結ぶことになります。そのため就業規則を改定し、嘱託職員、臨時職員向けに手当てや、特別休暇に関する規定を設けたところです。社会福祉士などの受験資格を得るために、県外で所定の講義を受ける必要がある場合、職務専念義務免除の休暇を与えています。

独自資料が自動で作成されヒューマンエラーを抑止

──税理士法人砂川会計と顧問契約を結ばれたいきさつをお聞かせください。

(上)紙粘土細工づくりなどサークル活動も活発(下)敷地内に災害備蓄品倉庫を設置

(上)紙粘土細工づくりなどサークル活動も活発
(下)敷地内に災害備蓄品倉庫を設置

久高 県内中部地区の社会福祉協議会では定期的に勉強会を開催していて、03年にTKCシステムのデモンストレーションを行ってもらいました。かねて、県内のシステム会社の会計ソフトに一本化して利用していましたが、会計処理の複雑化に対応できるか不安を感じていたんです。砂川会計さんの指導を受けていた他の社会福祉協議会からの情報も聞き、サポート体制への安心感から翌年に顧問契約を結びました。

──顧問契約後、TKCシステムに移行したわけですね。

久高 はい。巡回監査では砂川会計の安慶名(あげな)先生の指導のもと、記帳方法や税務に関する相談に親身に対応していただいています。13年12月には『FX4クラウド(社会福祉法人会計用)』に移行。県内の社会福祉協議会の中では、いち早く新会計基準に移行することができました。

──『FX4クラウド』導入で変わったことは?

棚原 各拠点から伺書を入力できるようになったほか、「マネジメントレポート(MR)設計ツール」を用いて、理事会に提出する資料を効率的に作成できるようになりました。
 以前はシステムから出力した決算書や予算書を元に独自資料を手入力して作成していましたが、スプレッドシートに数字が自動連携するのでとても重宝しています。転記ミスなどのヒューマンエラーを防止できるのは大きいですね。
 また、システム操作について会計事務所に電話で問い合わせるとき、先方のパソコンでも『FX4クラウド』を起動することができ、その場でフォローしてもらえるので、大変助かっています。

安慶名 日々の仕訳入力に関しては棚原さんが万全に行われているため、巡回監査時は組織運営で困っていることや、今後のことについて相談いただく場合が多いですね。

──作業時間が減り、働き方に変化はありましたか。

棚原 残業時間がほぼなくなりました。年初に予算づくり、そして続けて決算業務をこなさなければなりません。例年4月から5月にかけてが、一番慌ただしい時期でした。退社時間が遅くなる日も多々あり、ゴールデンウイーク前になると、連休中は休みたいよねと、久高からよく言われていましたから。
 『FX4クラウド』に移行後、インターネットバンキングも導入しました。日ごろ社会福祉協議会間で交流する機会があり、インターネットバンキングで効率化できるという話を耳にしていたんです。金融機関の口座残高とシステムの残高が一致しているかが瞬時に分かるので、スムーズに《預金口座残高一覧表》を出力できます。以前は、残高を照合する作業に丸1日かかっていたのが、今は5分ぐらいで終わります。本年度の決算処理も順調に進んでいるので、ゴールデンウイークは働かずに済みそうです。

──劇的な変化ですね。

棚原 システムには「高齢者外出支援サービス受託事業」や「権利擁護支援受託事業」など、さまざまなサービス区分が登録されています。以前は振込用紙に記入する際、サービス区分や、口座番号を誤ってしまうことがありましたが、伺書を入力する時点で画面確認できるため、振り込みや支払いミスがなくなりました。残業時間が減ったぶん資格取得のための学習時間ができ、ことし社会福祉士の資格を取得することができました。

安慶名 システムをフル活用していただいており、「MR設計ツール」で独自に作成されたフォーマットが、近隣の社会福祉協議会でも利用されているほどです。

──会計事務所からほかにどんなサポートを受けていますか。

久高 8年前に税務調査があり、同席してもらえたのは心強かったですね。調査に3時間ほどかかりましたが、やはり餅は餅屋で、税の専門家である先生方の力を借りなければ、乗り切れなかったと感じています。

砂川 北中城村では区画整理が進み、マンション建設も相次いでいます。県内でも人口の増加が特に見込まれる地域ですから、北中城村社会福祉協議会さまが果たされる役割は一層重要になってくると思います。

──抱負をお聞かせください。

久高 社会福祉協議会でも財務規律をはじめとした、ガバナンスの強化が求められています。そうした時代の要請に柔軟に対応しつつ、北中城村や関係機関、団体と連携しながら、誰もが安心して暮らせる村づくりをこれからも推進していきたいですね。

(西日本統括センター・小山育伸/本誌・小林淳一)

会社概要
名称 社会福祉法人 北中城村社会福祉協議会
設立 1980年9月
所在地 沖縄県中頭郡北中城村字仲順451番地
職員数 38名
URL http://kitanakasyakyo.org/
顧問税理士 税理士法人砂川会計パートナーズ
公認会計士・税理士 砂川皓平
沖縄県嘉手納町字嘉手納463 新町1号館東棟301
URL:http://sunagawa-office.tkcnf.com/

掲載:『戦略経営者』2018年6月号