今回の税制改正による「特例事業承継税制」は現行とどこが違うのでしょうか。

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 大まかには図表1(『戦略経営者』 2018年5月号15頁・図表1参照)を見てもらえば分かると思いますが、なかでも重要なポイントは2つです。
 1つ目は、簡単に言うと自社株を承継する際に「贈与税と相続税が一切かからない」仕組みになったということです。現行の事業承継税制では、納税猶予の対象となる株式(発行済議決権株式総数)の上限が全体の3分の2で、しかも、相続の場合の猶予割合は80%でした。ようするに、3分の2×80%=53%の自社株は猶予されますが、残りの47%は納税が必要だったのです。ところが、「特例」では、上限と猶予割合の〝縛り〟が全廃され、自社株承継時の納税割合がなんとゼロになったというわけです。

 もう一つは?

 「雇用確保要件」の実質撤廃です。現行制度では、生前贈与以降の5年間平均で当初の80%の雇用者数の維持が義務づけられています。このハードルを超えることができなければ税金を「全額納付」しなければならず、元のもくあみになってしまうわけです。これでは経営者は怖くて手が出せません。経済は水ものです。いつまたリーマンショックのような景気変動が起こるか分かりませんからね。しかし、「特例」では、この雇用確保要件は「実質」撤廃されました。

 「実質」の意味は?

 雇用者確保の割合である80%を下回った場合でも、その理由を記載した書類を都道府県に提出すれば、猶予税額を支払わなくても良くなったのです。しかしひとつ条件があります。その書類には「認定経営革新等支援機関」(認定支援機関)の意見が記載されなければなりません。

 「特例」の適用を受けるには、具体的には何からはじめれば良いのでしょうか。

 この税制は時限立法なので、平成35年3月31日までに「特例承継計画」を都道府県に提出し、平成39年3月31日までに承継を行う必要があります。つまり、5年以内に計画を提出し、10年以内に承継を完了することが求められているのです。ということは、事情の許す限り早く計画を提出してしまった方が良い。猶予期間を長く使える分だけ、先代経営者は腰をすえて教育など後継者への承継施策を行うことができます。細かなプロセスについては、顧問税理士など認定支援機関の指示に従ってください。

 特例承継計画とはどんなものなのでしょう。

 会社名、先代経営者の氏名、後継者の氏名(最大3名)、事業内容、承継時までの経営の見通し、5年間に行う承継実施内容、認定支援機関等による所見などを記載したものです。A4用紙3枚程度の簡易なもので、これは「特例」の適用を受けるためだけのものだと考えてください。しかし、実際の「事業承継計画」は、会社の現状分析と将来展望、後継者教育のあり方、ステークホルダーの理解や協力、法務・税務・資金面での承継対策など、さまざまな懸案をクリアすべく、精緻に作り上げていくべきものです。できれば、この「事業承継計画」を作成した上で、「特例」の適用を受けるための計画づくりにとりかかるのが望ましいでしょう。

 認定支援機関(※)とは?

 中小企業・小規模事業者が安心して経営相談等が受けられるよう、専門知識や実務経験が一定レベル以上の者に対し、国が認定する公的な支援機関です。具体的には税理士・税理士法人をはじめ、商工会や商工会議所など中小企業支援者、金融機関、公認会計士、弁護士などが主な認定支援機関として認定されています。しかし、認定支援機関にもさまざまあり、承継計画策定のみを行い、後は関与しないコンサルタントなども存在します。そのため場合によっては、目先の税金対策だけに利用され、中小企業の健全な発展と後継者の育成につながらない可能性が出てくるのです。そうならないためにも、われわれTKC会員税理士のように、毎月の巡回監査を行いながら、月次決算や業績検討会、経営計画の策定などを恒常的に行っている認定支援機関を、経営者の方々は選択する必要があります。詳しくはP23(『戦略経営者』 2018年5月号23頁参照)を参照してください。

※認定支援機関は平成30年2月末現在、全体では2万7811機関を数え、そのなかで税理士・税理士法人は2万1143機関(76%)を占める。

Q&Aの続きは本誌(『戦略経営者』2018年5月号)をご参照ください。

 80%の雇用者確保率を下回った際の「理由」はどのようなものでもかまわないのですか。

 リスク回避という意味では、もうひとつ創設された制度があるのだとか。

 特例事業承継税制を受けられる経営者と後継者の要件とは?

 事業承継計画作成の際の具体的ヒントはありますか。

TKC全国会の特例事業承継税制への取り組みをご紹介しています。詳しくはこちら。

特例事業承継税制

掲載:『戦略経営者』2018年5月号